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十年後、海外旅行はどうなっているだろうか?(前編)〜40代以上の憧憬が牽引した海外旅行

海外旅行離れ?

近年、海外旅行、とりわけツアー客の数は停滞から減少傾向にある。
これはもちろん経済的要因が影響してもいるだろうが、実はそれだけで語りつくせるものではない。
そのことは年代別を旅行者数の変化を見てみると見えてくる。

たとえば法務省の2001年と直近の2011年のデータを比較してみると面白い。
旅行者数は1611→1699万人と微増だが、問題はその中身だ。
とりわけ年齢階層別・性別階層比率の変化に特徴が見られるのは注目に値する。
(ちなみに、この統計が示す「旅行者数」とは、厳密には「渡航者数」と考えることが出来る。
つまり、パックツアー、バックパッキング、留学、研修、ビジネスでの赴任といったものを全て合計した数だ。
ということは国際化が進んで海外出張などのビジネスで海外へ出かける層が増加している現状を踏まえれば、ツアー客は減少していると見ていい。)

若者の海外旅行離れが進んでいる一方で中年世代の海外旅行熱は続く

先ず年齢別について。
20代が21.9→16.5と25%減少、30代が20.8→19.6と微減。
代わって40代が15.9→19.6と23%増加している。
つまり若者の海外旅行離れが進んでいることがわかる。

そしてこのことを裏付けるのがコーホート効果、つまり出生年代の違いによる影響だ。
現在30代と言うことは十年前は20代。
だから十年前の20代と現在の30代を比較するとその変化がよく見える。

2001年20代の海外渡航比率は21.9%、彼/彼女たちが十年後の30代になって占める比率は19.9%。
ちなみにその性別の内訳を見ると男性増、女性減となる。
これは加齢効果と考えられる。
つまり男性は働き盛りとなり海外出張などをするようになったため比率が増えた。
一方、女性はジェンダー的側面が強化された。
つまり結婚し、専業主婦として子育てを担うものが増え、それが海外旅行を減らすことになった。
それでもあまり変化はないということは男増、女減で相殺しているということになる。
コーホートを見ると変化があまりないことついては現行の40代(20.8→19.6)、50代(15.9→16.7)も同様だ。
これら世代の海外旅行熱は、依然として熱いのだ。

海外旅行バブルの時代を引っ張った現在の30代、40代

こういったデータは、結局のところ海外旅行が、十年前までがバブルであったことを意味していると言うことになるだろう。
30代、40代の人間たちにとって海外旅行には何らかの付加価値、つまり特別な意味があり、それを求めて若い頃、旅に出たのである。

これは、日本における海外旅行者の変化を遡ってみるとよくわかる。
75年~85年の十年間での海外渡航者数の増加は250万人(250万→500万)。
ところが85年、プラザ合意によって大幅に円高が進むことで渡航者数は急増。
95年には1500万人突破と、十年で一挙に1000万人(500万→1500万)の増加となった。

この時期、つまり80年代後半から90年代にかけて20代、30代だった世代は、ここで一気に海外旅行に目覚めたというわけだ。
だが、この「目覚め」には「仕込み」がある。
そしてその仕込みはメディアだった。

子どもの頃、海外を喧伝するメディアに洗脳された

80年代末、当時20~30代だった層(現在40代~50代)は、生まれたときからテレビがあった第一世代。
その中で放映されていたコンテンツとしてあったのが海外に関するプログラムだった。
海外のテレビドラマや海外の映像。
こんなものが頻繁に放映されていたのだ。
理由は簡単。
テレビドラマについては、当時テレビ局はコンテンツを作る経済的、技術的、そして金銭的な力量がまだ低く、ドラマコンテンツの多くをアメリカのテレビドラマに依存していたためだ(「パパはなんでも知っている」「コンバット」「名犬ラッシー」「奥様は魔女」「アイラブ・ルーシー」「宇宙家族ロビンソン」「サンダーバード」(これはイギリス)などなど)。
それ以外にテレビが海外を映すのは報道、そして海外旅行をテーマとした番組だった(その典型は「兼高かおる世界の旅」)。
当時は今のパックツアーが行くところのような映像を映すだけで、結構視聴率がとれたのだ。
また映画も海外へのあこがれを助長していた。
ハリウッド映画、そしてヨーロッパ映画(最近は少なくなったなぁ)だ。

ただし、現在の40台、50台がこういったメディアに親しんでいた時代、つまり60~70年代、海外はブラウン管やスクリーンの向こうに存在するもの。
決して到達出来る場所ではなかった(ドルショックが起こる70年まではⅠドル=360ドルの固定相場)。
いいかえれば「いつか行けたら、いいね!」というところだったのだ。
だからこそ日テレが制作した「大陸横断ウルトラクイズ」みたいなものが大流行したのだけれど。

そして80年代後半、このウラミを晴らすときが来た!

この「海外への想い」はルサンチマン化する。
つまり「いつか、必ず、行ってやる!」そしてこのパンドラの箱が開いたのがプラザ合意だったのだ。
当時の20代、30代は堰を切ったように海外へ出かけていった。
それは、もちろんテレビや映画で見ていたものを確認するためにだったのだけれど(ショボい)。

ただし、海外のことはよくわからない。
「ちょっと渋谷へブラッと」というには敷居が高すぎる。
そこでこの世代がチョイスしたのがパッケージツアー、通称パックツアーと呼ばれるものだった(反面、バックパッキングをチョイスする若者も多かった。これは「蛮行」とみなされ、就職面接の時にアドバンテージになったりしたので、学生たちが無理して出かけていた)。
こうやって海外旅行ブームが訪れたのだ。

しかし、統計で見たように2000年代に入って若者の海外旅行離れが進んでいる。
それは要するに上の世代の描いた「海外への熱い想い」が彼/彼女たちにはないから。
言い換えれば「海外ルサンチマン」など一切彼/彼女たちには存在しない。
だから、海外なんてどうでもいいということになるのだけれど……。

旅行者数が頭打ちの現在。
それじゃあ、これから海外旅行はどうなるんだろう?(続く)

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