新聞社を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、朝日新聞社の渡辺雅隆社長(61)が本年度末をもって退任する意向であることが30日、同社などへの取材で分かった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、本年度決算が約170億円の大幅な赤字を見込むことなどを受け、経営悪化の責任を取る考えといい、同日午後にあった同社社員への説明会で明らかにした。後任には、中村史郎副社長(57)が就任する見通し。

同社社員によると、説明会では発行部数が大きく落ち込んでいる現状や、本年度決算が約170億円の赤字の見通しであることが公表された。その中で、渡辺社長は本年度末で退任し、経営責任を取る意向を示したという。
さらに、現在約4400人いる社員については、300人の希望退職を実施するなどして、自然減と合わせて23年度までに約3900人まで削減する考えを示した。他にも、来年春から組織再編や部門間移動を活発化させ、収益を支える部署やグループ企業に人員を重点配置することなどが説明されたという。
朝日新聞の2020年上半期の部数は516万部(ABC部数)とされ、2014年にいわゆる「吉田調書」誤報問題が発覚するなどした後、大幅な減少が続いている。一方、同社の有価証券報告書によると、同社社員の平均年収は1228万5千円(平均年齢45.4歳)と、同業他社と比較しても高止まりしている。
同社は社員らへの説明を終えると、30日午後5時、朝日新聞デジタルに「朝日新聞社、コロナ影響で9年ぶり赤字 9月中間決算」と題した記事を掲載。2020年9月中間連結決算は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け営業損益が92億9100万円の赤字だったことや、来年4月に渡辺社長が退任することを伝えた。
退任予定の渡辺社長は、1982年に同社入社。大阪本社編集局長などを経て、「吉田調書」誤報問題発覚後の木村伊量前社長の辞任を受け、14年12月に社長に就任。
後任に見込まれる中村副社長は86年に同社入社。東京本社編集局長を経て、20年6月から副社長。コンテンツ統括・デジタル政策統括・バーティカルメディア事業の担当とされている。