- 2020年11月30日 15:14
「生きやすいところへ逃げよう」 たんぽぽ白鳥久美子さんが長年のいじめから逃げ続けることでたどり着いた境地とは?
1/2小学生のころから長年いじめられてきたというたんぽぽの白鳥久美子さん。「アゴドリル」というあだ名でいじられ、教室で孤立。ビルから飛び降りたいと思ったことも。本の世界に逃げ込んだり、悲劇の少女を妄想してトランペットを1人で吹いたりする中で、「生きやすいところへ逃げる」技を身につけてきたそうです。そんな白鳥さんにいじめを乗り越える方法や、いじめの被害者・加害者へのメッセージを笑下村塾たかまつななが伺いました。
「白鳥なのにブス」入学式から始まったいじめ
ーたんぽぽの白鳥久美子さんです。相方の川村エミコさんにもお話を伺いましたが、白鳥さんもいじめにあわれていたんですか?
白鳥:小学校から大学生ぐらいまでいじめられていました。いじめられていると自覚したのは中学生のときです。「アゴドリル」というあだ名で呼ばれていました。ましてや名前が白鳥久美子じゃないですか。名前がきれいなのにブスじゃねえかみたいなギャップで余計にいじめられました。入学式のときに、白鳥久美子って名前のやつがいるって話題になったみたいでクラスに男子が見に来たんです。私を見るなり「すげえブスじゃねえか」ってダーって逃げていきました。
ー残酷ですね。
白鳥:だから入学式の日からいじっていい空気になったんだと思うんです。それでまた変なあだ名を付けられたり、誰もやりたくない応援団員を女子で唯一多数決でやらされたりしました。帰り道に泣いてましたね。3年間我慢すればいつか終わると思って耐えていました。
妄想することで現実から逃げていた
ー何か心の支えはありましたか?
白鳥:1人で図書館に行って本を読むことですね。主人公に感情移入して別の世界に行けるのが楽しかった。あとは吹奏楽部に入っていたのでトランペットを吹いてるときは楽しかったです。キャラを演じるんですよ。自分はトランペットに憧れている孤児で、ある日ショーケースに張り付いていたらおじさんが古いトランペットをくれて、それをずっと練習しているうちに路上でスカウトされてプロになったという設定で。一人でいるほうが楽でした。
ー 妄想がすごく豊かなんですね。
白鳥:妄想力があってよかったと思いました。ひどいことを言われたときでも「待てよ、もしかして私のこと好きなんじゃないか」って妄想すると心が楽になるというか。誰にも相談できなかったので。
ーいじめていた同級生の子はどういう認識だったんですかね。
白鳥:いじっていた感覚でしょうね。笑っていましたしね。芸人になってから行った同窓会で、当時私をいじめていた子に「そんなことやってない、嘘ついて笑いを取っているよね」って言われて、本当に全然違う感覚でお互いに過ごしていたんだなと思いました。
変わろうと思っていた高校生活でもいじめに
ー高校ではどんないじめにあったんですか?
白鳥:高校では変わなきゃと思ったんですよ。中学の同級生がほとんどいない高校だったから、ここで自分のキャラを変えようと思って。入学式の自己紹介の時に笑いを取ろうとして「白鳥久美子です。安室奈美恵に似てるって言われています。テヘ」みたいなことをやったらスベりました。やっちまいました。
ーいいボケですけどね。
白鳥:クスクスぐらいは来るかと思ったんだけど、シーンみたいな。「やべえやつだ」みたいな感じでまたクラスの中で浮いちゃってそこから露骨な無視が始まったんです。遠足のときに、バスの中でクラスメイトがボケて笑いを取っていて、私もそれを聞いて笑ったら「てめえが笑ってんじゃねえよ」って言われて。私は笑うことも許されないのかと思うとつらくてそれから笑うことをやめちゃいました。
演劇部で別人格になることで発散
ー当時、逃げ場はあったんですか?
白鳥:演劇部に入っていたから、舞台上で別人格を演じることが逃げ場でした。舞台に立ったときだけ、みんなが違う目で見てくれたのが気持ちよかったんですよね。最初は演劇やってたんですけど、そこからうまくいかなくて今度は芸人にみたいな。どうにか本音を言える場所を探していたような気はしますね。
川村さんとのお笑いは「リハビリ」
ーネタもそういう感情で作ることが多いんですか?
白鳥:よく相方の川村エミコさんとは、私たちリハビリとしてネタをやってるよねと言っています。お互いに言われていたあだ名とかをネタで出していくとそれがウケて、あんなあだ名を付けてもらってよかったねみたいな。長いこといじめられているから、いじめる人の対処法も分かってきました。乗せていればいいんです。すごいですねって。例えば、いじめてくる人が一生懸命頑張っていることがありますよね。そこを「すごいですね、まじすごいです」って褒めるんです。要するに「太鼓持ち」をやっているといじめられないことが分かりました。
- たかまつなな
- お笑いジャーナリスト・株式会社 笑下村塾 取締役
1993年神奈川県横浜市生まれ。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科、東京大学大学院情報学環教育部修了。フェリス女学院出身のお嬢様芸人としてデビューし、日本テレビ「ワラチャン!」優勝。また「朝まで生テレビ」「NHKスペシャル」などに出演し、若者へ政治意識の喚起を促す。
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