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勝ち組のJAL、負け組のANA…不振業界で明暗を分けた"財務戦略"の差

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11月に入って約13%も上昇した

11月10日の東京株式市場で日経平均株価が6日続伸し、一時2万5000円台を回復した。

日本株は10月半ばごろから強気が続いていた。そこに米ファイザーなどが開発を進める新型コロナウイルスワクチンの治験で、同社が予想以上の効果が得られたと発表。9日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が大幅反発し前日比834ドル57セント高の2万9157ドル97セントで引けたのを受け、日経平均も続伸、一時29年ぶりに大台を回復した。

羽田空港のJALの旅客機(東京都大田区=2020年11月22日)
羽田空港のJALの旅客機(東京都大田区=2020年11月22日) - 写真=時事通信フォト

急ピッチの上昇はなお続き、11月11日には終値も2万5000円台に乗せた。17日には2万6014円62銭と2万6000円台も回復している。10月30日の終値は2万2977円13銭だったから、11月に入って17日までに日経平均株価は約13%上昇したことになる。

11月10日の東京株式市場には特徴があった。今年3月以降、「コロナ・ショック」で株価が急落したが、その後の戻り相場を牽引したのは一部のグロース(成長)株である。しかし11月10日の日経平均一時2万5000円台回復の主役は経済の停滞が逆風になるバリュー(割安)株だった。

不振にあえぐ航空・鉄道の株価が上がっている

例えば三越伊勢丹ホールディングス株を見てみよう。同株の年初来高値は1月17日につけた1020円である。その後、コロナの感染拡大で営業自粛を余儀なくされ、緊急事態宣言解除後も客足の戻りが鈍いことなどから7月31日には上場来安値となる479円をつけていた。

11月9日の終値は508円。これが10日には574円まで上昇した。値上がり率は実に約13%。翌11日には604円まで上がった。

同日、2020年4~9月期の売上高が前年同期比41.8%減の3357億円、最終損益が367億円の赤字(前年同期は75億円の黒字)だったと発表したため、12日には反落したものの、終値は10日と同じ574円。500円前後でうろちょろしていた株価の水準訂正が起きている。これ一つをとってもバリュー株が物色されたことが分かるだろう。

コロナ禍の中でのバリュー株、すなわち出遅れ株の代表格は航空や鉄道である。このセクターの株は三越伊勢丹株同様、10日の東京株式市場で大幅に上昇した。日本航空株の10日の終値は1989円。前日に比べ21%強上昇した。ANAホールディングス(HD)株の終値は2660円で18%強上がっている。一方の鉄道では東日本旅客鉄道株が15%、西日本旅客鉄道株も15%値上がりした。

一方、グロース株の代表銘柄ともいえる任天堂株の10日の終値は5万4010円で、前日に比べ約4%下落。コロナ禍が追い風となった出前館株は10日に約16%下がり、2830円で引けている。これほど見事にバリュー株が買われ、グロース株が売られるという相場も珍しい。

上昇気流に乗れたJALの戦略

もっとも株式がバリュー株に位置付けられる企業を別角度から眺めると「勝ち組」と「負け組」に分けることができる。勝ち組の筆頭は日本航空(JAL)だろう。

11月6日、日航は公募増資などで最大1680億円を調達すると発表した。公募増資は2006年以来。調達資金のうち800億円は欧州エアバス製A350型機の購入代金に、150億円は全額を出資するLCC(格安航空会社)のジップエア・トーキョー、50%出資するジェットスター・ジャパン、少額出資する春秋航空日本の強化に充当するとした。このほか空港の設備更新に50億円を充て、残る680億円は有利子負債の削減に使う。

日航の発行済み株式総数は約3億3700万株。公募増資などで約1億株を新規に発行、2割以上希薄化されることになったため、週明け9日の東京株式市場で同社株は前週末比約11%下落した。

しかし日航はバリュー株が物色されているタイミングで公募増資を発表したため、希薄化に伴う下落を帳消しにした。6日に木藤祐一郎財務部長は「新たに1億株を発行するため、既存株主に相当迷惑をかける可能性がある」としたが、どうやら詫びる必要はなくなったようだ。

僥倖はそればかりではない。18日には公募による新株発行価格を発表しているが、これが1株1916円、調達総額は6日の増資発表時よりも146億円上乗せされ、最大1826億円となった。上乗せ分の使い道は明らかにしていないが、有利子負債の返済に充てれば、21年3月期に約300億円、22年3月期と23年3月期にそれぞれ500億円といわれている利払い負担を減らすことができる。

一方、過去最悪の決算を迎えるANAは…

この日航の公募増資は株式市場関係者にとって意外な出来事と受け止められている。同業で増資の必要性があったのは、むしろANAホールディングス(HD)だったからだ。

羽田空港から飛び立つANAのボーイング777-200ER機
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

10月下旬に開かれた記者会見で、同社は2021年3月期の連結最終損益が5100億円の赤字になる見通しだと発表した。赤字額の見通しは2400億~2700億円とした日航の約2倍だ。

過去最悪の決算が見えてきたことでANAHDは同日、構造改革策を発表している。大型機を中心に33機を退役させるほか、エアバス「A380」やボーイング「777」の受け取りを延期する。一般社員の月給を20年ぶりに減らし、管理職の賃金は最大15%カット、一時金も減額する。400人以上を家電量販店のノジマや高級スーパーの成城石井などに出向させ、2500人規模の採用を見送る。これにより今期は1500億円、来期は2500億円のコストを削減するとした。

公募増資ではなく劣後ローンを選択

もっともこうした構造改革策で将来の展望が開けているわけではない。国内線、国際線とも搭乗率は低迷したままで、上向く気配はない。資金繰りのための借り入れは増え、今年3月末に約8400億円だった有利子負債は9月末には1兆3000億円余りに膨らんだ。4割を超えていた自己資本比率も9月末には32%にまで低下した。

だからこそ公募増資に踏み切るものと株式市場関係者は見ていたが、ANAHDが出した結論は日本政策投資銀行(DBJ)や三井住友銀行などからの総額4000億円にのぼる劣後ローンの調達だった。

劣後ローンは返済順位が低いため、一部を自己資本に組み入れることができる。しかし当然ながら利息を払わなければならない。利率は平均7%前後。償却期限の5~7年後までに年平均800億円の元利返済が求められるという。

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