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マイナス成長になっても悲観する必要がない理由

7-9月期の実質GDPの伸び率が発表になりました。前期比マイナス0.9%で、年率に換算するとマイナス3.5%になるのだとか。

 さあ、この数字をみて政治家はどう反応すべきなのか? そして、我々国民はこの数字をどのように受け止めるべきなのか?

 先ず、野田総理の発言。  「厳しい数字だと思う。危機感を持って対応していきたい」  何でも月内に経済対策をまとめる方針なのだ、と。

 次は、藤村官房長官。  「世界経済が減速していることが背景で、我が国の景気が弱めの動きだったことを確認する内容になった」

 次は、前原経済財政相。  「デフレ脱却に向けて良い方向性が出ているということではない」「むしろマクロ的な需給ギャップはマイナス幅が拡大したとの見方をしている」「「政府も財政、規制緩和、成長力の強化など様々な施策を行っていかなければいけないし、日銀もデフレ脱却のための強力な金融緩和を推進して欲しい」

 確かに日本経済が、ここにきて成長がストップしたどころかマイナスになっているのですから、これは深刻に受け止めるべき問題であるのです。では、政府として或いは日銀としてどうすべきなのか?

 しかし、ここで大切なことは、先ず現実をしっかりと把握することなのです。

 では、現実とは何か?

 現実とは、日本経済が7-9月期に、前期と比べて0.9%のマイナス成長になったということ。  そこで貴方は、この際ありとあらゆる政策で経済を下支えする必要があると思っていませんか?  つまり、前原大臣のように少しばかり浮き足立っていませんか?

 喝!

 こんなときにこそ慌ててはいけない。慌てるから現実を見失う!  先ず、データをじっくりと確認しましょう。

<四半期のベースの実質GDPの推移>
                            (単位:兆円)
            GDP   個人消費 設備投資 輸出  輸入 
2010/10-12   515.2   301.5      64.7   83.8     67.2
2011/1-3   504.6  296.8     64.7   83.5     68.2
2011/4-6     502.0   297.9      63.8   78.5     68.1
2011/7-9     513.5   302.7      64.6   85.4     70.5
2011/10-12   512.0   304.1      67.9   81.7     71.2
2011/1-3     518.5   307.8      66.6   84.5     72.8
2011/4-6     518.9   307.5      67.2   85.6     74.1
2011/7-9     514.3   306.1      65.1   81.3     73.8

(参考:ピーク時)
2008/1-3     529.9   298.7      78.6   92.1     70.9

(資料:内閣府)

 さあ、如何でしょう?

 実質GDPが、前期の518.9兆円から514.3兆円のレベルまでダウンしており、確かにマイナス成長になってしまっているのですが、では、何が原因なのかとみれば、輸出が大きく減少していることに加え、設備投資も減少し、また個人消費も若干減少しているのです。

 では、この事態をどのように判断すべきか?  日本経済は本当に力強さを失っているのか?  答えは、ノー。  改めて言います。今回経済がマイナス成長となった最大の原因は、輸出が大きく落ち込んでいることなのです。何故ならば、実質GDPが518.9兆円から514.3兆円へと4.6兆円減少しているのに対し、輸出の減少幅は、それに近い4.3兆円(85.6兆円-81.3兆円)になっているからなのです。

 では、輸出が減ったのは、日本経済の力が衰えているためなのか?  これが、ここに来て日本製品に対する海外の人気が落ちているというのならば、そうであるかもしれないのですが、こうして輸出が減少している最大の原因は、ユーロ危機を背景とした世界経済の減速にある訳ですから、日本の経済力とは関係がないと言うべきなのです。

 では次に、個人消費が若干と言えども落ちていることはどう評価すべきなのか?
 前原大臣が言うように、デフレから脱却できていないためなのか?

 馬鹿を言ってはいけない。そうではないのです。個人消費が減少している最大の理由は、ご承知のようにエコカー補助金が終了した効果が大きいと言われているのです。だって、そうでしょ? 補助金が出るとなれば、その分将来の需要を先食いする訳であり、従って、補助金制度が終了すれば、その反動減が現れるのは当然ではないですか?

 つまり、今回の個人消費の減少は、当初から想定されていたことであるのです。  それに、上に挙げたGDPのピーク時の2008年1-3月期の数値をご覧になって欲しいのです。

 その当時の実質GDPのレベルは約530兆円もあり、この7-9月期と比べて15兆円ほど上回っているのです。  では、個人消費については、どうなっているのか? やはり、その当時を未だに下回っているのか?

 決してそんなことはありません。2008年1-3月期の個人消費は約299兆円であるのに対し、この7-9月期は約306兆円と7兆円も上回っているのです。

 つまり、個人消費は、リーマンショック以前の水準をずっと前に回復しているどころか、このところ記録を更新していたのです。そして、それが、前期の4-6月期と今期の7-9月期に少しばかり足踏みしているだけの話なのです。

 そして、その足踏みの理由も、先ほど言ったように、エコカー補助金の終了が影響しているということですから、正味の需要が弱含んでいる訳ではないのです。

 どうです? ここまで分かれば、それほど騒ぎすぎるのも如何かという気がするでしょう?  いずれにしても慌てず動じず、よく事実を把握して対策を考えて行けばいいのです。

 輸出という海外の需要の減を日本の政策で穴埋めしようなんて、土台無理な話なのですから、そういうときには世界経済が回復するまでじっと我慢するしかないのです。

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