- 2020年11月30日 09:44
【読書感想】高校生ワーキングプア ――「見えない貧困」の真実
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- 作者:NHKスペシャル取材班
- 発売日: 2020/10/28
- メディア: 文庫
Kindle版もあります。

- 作者:NHKスペシャル取材班
- 発売日: 2020/10/28
- メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
「弟や妹には、普通の暮らしをさせたいんです」「もう嫌や。金、降ってこーい」スマホを持つ一見普通の高校生が、親に代わって毎日家事をこなす。家計を支えるためにダブルワークをする。進学費用として奨学金という借金を背負う。彼らのSOSはなぜ見過ごされてしまうのか?働かなければ学べない高校生の声を集め、この国の隠れた貧困層の実態を浮かび上がらせた切実なルポルタージュ。
お金って、あるところにはあるものだなあ、と、新型コロナ禍のなかでも上がり続ける日経平均株価をみていて痛感するのです。
その一方で、こういう本で、「日本の若者の現実」を突き付けられると、「こんなに格差が広がってしまって、世の中、大丈夫なんだろうか……持たざる者たちは、戦争とか革命を志向するのではないか」なんて、考えてしまうんですよね。
少なくとも、NHKが取材した「高校生ワーキングプア」たちは、そんな過激な方法ではなく、なんとか自分の力で、ささやかな将来の夢を実現しようとしているみたいなのですが。
著者たちは、2014年12月に放送されたNHKスペシャルの取材について、こう述べています。
この時、生活に困窮する人たちにお話を伺いながら、彼らは本当に貧困なのかどうか、一見して分かりにくいと思ったことがあった。
例えば、インターネットカフェに住み続けていた姉妹は、住居がネットカフェと聞かなければ、外見からはとても貧困とは思えなかった。来ているものは今どきの若者と何ら変わらず、メイクも、つけまつげもしていた。彼女たち曰く「百均(100円ショップ)に行けば、つけまセットも100円、リップも100円。服も古着をネットオークションで買えばいい」と話していた。
新宿の街でキャリーバッグをコロコロ転がしながら歩く漂流少女たちも同様だった。家を出てしまったために、風俗店で日銭を稼ぎ、その日に泊まる部屋を提供してくれる男を探す日常は、生活苦であるのは当然のことだ。しかし、彼女たちは、家はない代わりに、皆、唯一のライフラインとして、スマートフォンは持っていた。それをカフェで充電しながらお茶を飲んでいる姿は、時間潰しをしているOLさんか学生さんのようにしか見えない。
いずれのケースも、彼女たちの生活の実態を、それこそ根掘り葉掘り聞いてみてようやく、困窮しているんだと分かる。そのせいか、周囲からあらぬ誤解を受けて苦しんでいる人たちも数多くいた。
「何が貧困だ。スマホを持っているじゃないか」
「服だってきれいにしているじゃないか」
「もっと苦しい人たちもいるのに甘えている」
番組に対しても、「貧困っていうけれど、こんな贅沢品を持っているじゃないか」と取材されている高校生やNHKへの批判が少なからずあったそうです。
いまの世の中、たしかに、100円ショップにけっこういろんなものが売られているし、ディスカウントショップには安い服もある。「貧困」がひと目で伝わってくるような若者というのは、そんなにいないのかもしれません。
スマートフォンは、遊びに使われるだけではなく、アルバイトのシフトがLINEで送られてくる時代なので、生活必需品でもあるのです。
2017年2月、私たちが本書の基になったNHKスペシャル『見えない”貧困”~未来を奪われる子どもたち』(以下、『見えない”貧困”』)を放送した段階では、2014年に発表された子どもの貧困率16.3%が最新のデータだった。つまり、6人に1人が相対的貧困状態にあるということになる。その後、2017年に新たに発表された子どもの貧困率は13.9%となり、12年ぶりに改善したものの、依然として7人に1人が相対的貧困状態にある。
ちなみに「相対的貧困」というのは、「世の中の標準的な所得の半分未満で成果るしている状態」であり、子どもの生活に例えると、友達と遊んだり、学校に行ったり、家族と休日に出かけたりといった、ごく当たりまえ(のように思える)ことができていない状態のことだそうです。