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政策懇談会(地方分権について)

私的に主宰する勉強会「政策懇談会」を開催。

今回は、「統治機構改革としての地方分権(あるいは「地域主権改革」)」とのタイトルで、総務省の中井氏(静岡市出向中)よりプレゼンをいただき、ディスカッションいたしました。

プレゼン概要(文責・高田)

・日本の地方自治制度は、「大統領制」的な、議会と首長の二元代表制をとっている。この仕組みは戦後、アメリカから輸入する形で導入した。戦前までは県が国の総合出先機関の役割を果たす半自治体であったところに、接木するようにして現在の地方自治制度は構築されている。

1.我が国の地方制度の歴史

・かつては「オオキミ」を戴く豪族連合。

・律令体制の形成と崩壊、中世の混乱から幕藩体制の確立を経て、明治維新以降の近代的地方自治制度へ。

・幕藩体制は「分権国家」であり、明治維新後、初めて近代的な中央集権国家が形成される。

・当初、県のトップは中央政府から派遣される官選知事。市町村ではそうではなく、首長を民主的に選出。

・大正デモクラシーと地方分権論。この時期から、地方分権が議論されていたのは興味深い。

・戦時下にかけて、総動員体制が敷かれる。敗色が濃くなると、中央政府の統制が機能しなくなることも想定して、道州制のような議論もなされていた。

・戦後改革と地方自治制度の再構築。都道府県知事も公選制となる。憲法に、地方自治を明記。

・戦後復興から高度成長に至るインフラ整備の要請と福祉国家の発展による「新中央集権」。その後、大平首相による田園都市構想などを経て「地方の時代」へ。

・冷戦の終結と統治機構の見直し。バブルが終息に向かった90年代初め頃から「地方分権」が言われ出した。その後は失われた10年(あるいは20年)と言われるが、この時期は実際には「改革の時代」でもあり、制度的には地方分権(地域主権)は大きく進展した。

2.地方行財政制度の現状と課題

○国と地方の役割分担と地方財政の基本的枠組み
・日本の国と地方の関係は、国・県・市町村の役割が融合した、「集権融合型システム」。これを、維新の会が主張しているような「分権分離型」へ移行させるのかどうか。

・公共投資、教育、福祉等、ほとんどの行政分野において、国と地方が役割分担している。

・最終支出ベースの金額では国と地方の比率は4対6程度となっており、連邦制の国に匹敵するほど、地方の役割が大きい。

・地方の税収は都道府県間で大きく偏在しており、市町村間ではさらに格差が大きい。

・国は、地方財政計画を策定し、地方交付税を交付することによって、地方団体の財源を保障するとともに、格差の是正を図っている。

○ 「構造改革」と地方財政
・小泉政権下、公共事業の縮減や、「三位一体改革」により、地方交付税は減少。しかし、財源不足の拡大により、近年はまた交付税が増加している。

・平成の市町村合併により、平成11年に3000を超えていた市町村数は、平成22年には1700強に減少。以前にも明治の大合併、昭和の大合併があり、その前は数万に及ぶ村落共同体が存在していた。

・自治体破綻法制について、竹中総務大臣時代に検討が進められた。これは、自治体が民間企業のように破綻処理(債務整理)を行うことを想定するものであったが、それは現実的でないため、破綻に至る前に早期に健全化を促す仕組みが導入された。

○ 社会保障と税の一体改革における地方の位置づけ
・地方単独事業においても、全国的な普遍性のある社会保障サービスを多く提供しており、一体改革においても、この点をどう評価するかが論点となった。

・社会保障をどこまで地方に任せるかについては、「ナショナル・ミニマム」と「地域の自主性」と「財政力格差」の観点から検討が必要。

<ディスカッションの概要>

・地方分権の究極とは、総務省(自治省)が無くなることであるともいえるが、総務省はどのような姿を目指しているのか。

・地方分権が進むと、事業官庁の業務は減るが、地域間の財政調整制度や地方自治の基本的な枠組みの設計等は、国の業務として残ると考えられ、総務省が無くなるということにはならないのではないか。地方分権は、より住民のニーズに近いところで行政サービスを提供することにより、行政の効率性が高まる面がある。地方自治は民主主義の重要な要素であり、「住民自治」の姿をどのように作れるかが課題。

・消費税が地方税にむくかは疑問。税収の安定性等は、消費税の一般的な特長であり、地方財源固有のものではない。消費税も、清算前は地域間の税収格差は大きく、仮に維新のいうように消費税を地方税化して交付税を廃止すれば、地域間格差は拡大する。また、地域で独自に税率を設定することが困難である点からも、むしろ地方税には馴染みにくい税目ではないか。

・米国では小売売上税について州ごとに税率を設定している。これは小売段階で一度だけ課される税であり、多段階型の消費税とは異なるものだが、やってやれないことはない。もっとも、米国のように社会保障について自助努力を重視するのではなく、ヨーロッパ型の福祉国家をイメージするとすれば、維新が言うように消費税を完全に地方税化するのは難しいのではないか。

・地方分権とは地域間の格差を広げていくことを意味するが、それを許容するのか。

・行政サービスを地域にあったやり方で、といっても、財源がなければできないことは確か。地域間の財政調整は何らかの形で必要だが、地方自治体間で財源をやりとりする水平的調整は現実には難しく、いったん国が吸い上げて再配分する垂直的調整の方がやりやすい。

・自治省はかつて、官選知事の復活を議論していたことがあったが、そうした志向はあるのか。

・そうした議論が行われていた1970年代には、革新自治体が台頭していたという背景もあったのではないか。今日ではそうした議論はない。

・住民自治はどうすれば実現できるか。市町村合併により基礎自治体の単位が大きくなることは、住民自治には逆行する面がないか。

・田舎では都会に比べて、地方議会の議員のなじみが深く、存在感が大きい。そのように、地方議会を住民に身近なものとしていくことが求められる。合併後の自治体でも、合併前の町村単位で議論する仕組みを残すなどの工夫もみられる。

・ヨーロッパでは地域の分離独立の動きなどがあるが、その背景に財政問題があり、裕福な地域が財源を他の地域にまわしたくないという意識がある。これは日本の大阪や名古屋の動きにも通じるところがあるのではないか。

・その通り。名古屋市が減税をできるのは富裕な団体だからという面もある。名古屋市であがる税収は、国税を含め自分達のものとなるべきとの意識が伺われるが、そういう発想をつきつめると、市町村間の財政力の格差はすごいものになってしまう。

・地方分権のメリットが、生活感として実感できないのではないか。

・30代ぐらいの勤労者は、比較的地方の行政サービスを実感しにくい環境にあるといえるが、子育てや、高齢者の医療・介護などの行政サービスを受ける場合、きめ細やかなサービスが行われるメリットはある。

・地方分権を進めると、トータルとしてはかえってお金がかかるのではないか。

・神野教授が言っているように、地方分権は、短期的な費用削減ではなく、住民に近い自治体が住民のニーズをより的確にとらえてお金を配分することによる、トータルとしての効率化に資するものと考えられる。

・基地問題や原発問題など、国の安全保障にかかわる案件について、地方自治体が決めるべきかどうかという問題がある。

・補助金を用途の自由度の高い交付金に移行させても、相変わらず総務省が要綱等で縛っており、権限が各省から総務省に移っているに過ぎないとの不満が各省から見ればあるのではないか。

・交付金については、どうしても全国統一的にやらなければいけないルールのみが課せられており、全体として自由度は増している。

・地方の財源の多くが国税で賄われているなかで、お金の使い方は地方が独自に決めるとすると、お金の入りと出の関係が不明確になるのではないか。

・そうしたモラルハザードの問題は確かにある。他方、より住民に身近な地方団体が使途を決めることで、お金の使い方が効率化できる面もある。

・市の当局としての観点から、国と地方の制度について特に感じられる問題はあるか。

・静岡市については、財政は比較的豊かで、それほど困っていないが、例えば農地転用などについての国の規制が課題。

・地方議会については、議員がボランティアの延長で無給でやっているような国もあるが、日本でもそのようなことはできないのか。

・ボランティアなど、草の根の活動をやっている人達が議会に関わってくれば、議会も変わってくると思われるが、今日行政が複雑化する中で、無給を前提にできるかどうかは疑問。

・地方公務員には分権の準備はあるか。

・この10年~20年でかなり進んできており、一般的に言えば、意欲も能力も十分にあると思われる。

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