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「競馬史上最高のドリームレース」ジャパンカップ、栄冠に輝く馬はこれだ

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二度と実現しないであろうレースがあす始まる

「人は馬券を買うとき、自分自身によく似た境遇の馬の馬券に一票を投じる。競馬ファンが握りしめているのは、実は馬券なんかじゃない。自分自身の過去と未来だ」

作家で詩人の寺山修司はこうもいっている。

社会が安定している時は逃げ馬が評価される。ところが、世の中がざわざわしているときは追い込み馬が評価される。それは「形勢逆転」という感じがあるからだと。

2019年のジャパンカップを制したスワーヴリチャード(栗・庄野、牡6、父ハーツクライ)(右)=2019年11月24日、東京競馬場 - 写真=時事通信フォト

阪神淡路大震災の年、神戸を本拠地とするオリックス・ブルーウェーブが優勝した。東日本大震災の夏の甲子園大会で、青森の光星学院が準優勝して盛り上がった。

今年は戦後初といってもいい国難の年である。新型コロナウイルス感染拡大は世界中に広がり、日本も例外ではない。

こういう年は、競馬ファンならずとも、一気に形勢逆転できる追い込み馬に期待を寄せるのだろうか。

11月29日(日曜日)に行われる「ジャパンカップ」の栄冠はどの馬に輝くのだろう。

誇張ではない。このレースは競馬史上最高のドリームレースであり、これからも二度と実現しないであろう“奇跡”の一戦である。

「三冠馬」の3頭が激突する

三冠馬が出ること自体が滅多にない。ご存じだろうが三冠というのは、3歳馬しか出走できないレース、牡馬であれば皐月賞、ダービー、菊花賞、牝馬であれば桜花賞、オークス、秋華賞を勝った馬のことだ。

現在、最強馬といわれるアーモンドアイは牝馬の三冠馬だが、初戦の新馬戦で負けている。今年の牡馬・コントレイルと牝馬・デアリングタクトはともに無敗で三冠馬になっているのだ。

さらに、コントレイルの父はディープインパクトだから、史上初の父子そろって無敗の三冠馬が誕生した。デアリングタクトは牝馬史上初である。

この最強3歳馬と、先日の天皇賞・秋で史上初のGⅠ8勝目をあげた5歳牝馬のアーモンドアイが激突するのだから、競馬ファンなら、この一瞬を目に焼き付けておきたいと思うのは当然であろう。

趣味が高じて競馬連載を担当した編集者時代

ここで私事で恐縮だが、私の競馬歴を書いてみたい。

最初に競馬場で見たレースは東京オリンピックの1964年、シンザンが勝った日本ダービーだったから、かれこれ56年になる。

馬券を買ったのは大学生になってからだったが、毎週末は府中や中山競馬場に朝から出かけていた。

バーテンダー稼業をしていたから、普通の学生よりカネは持っていたが、毎週のようにオケラ街道をとぼとぼと戻り、悪友たちからカネを借りては、また競馬場にカネを捨ててくるという日々の繰り返しだった。

完全な競馬依存症だったが、よくしたもので、芸は身を助けるのことわざ通り、出版社に潜り込み週刊誌編集者になったら、文士やライターたちと競馬を通して親しくなり、競馬人脈が広がっていったのである。

山口瞳、虫明亜呂無、常盤新平、大橋巨泉、寺山修司、米長邦雄、本田靖春など数え上げればきりがない。

入社3年目、ボーナス全額を突っ込んだら…

山口さんには週刊現代で「競馬真剣勝負」という連載をしてもらった。毎週土曜日曜、ゲストを招いて一日3万円、二日で6万円を渡して馬券を買ってもらって、勝敗を決めるという企画である。

当時、私の月給が6~7万だった。

1年間、府中、中山はもちろん、京都、阪神、福島、新潟まで回った。山口さんやゲストは6万円で遊べるからいいが、こちらは身銭だから、朝から馬券を買っていてはカネがもたない。

おかげで、大儲けはできないが、負けない買い方は身についた。人間がセコイということだが。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

そんな私でも、これまで何回か大勝負(私にとってだが)したことがある。

1973年、ナスノチグサが勝ったオークスだった。ナスノチグサ、レデースポート、ニットウチドリの3強で固いといわれていた。

入社3年目、ボーナス全額30万円をナスノチグサとレデースポートの一点で勝負した。結果はナスノチグサが勝って、2着はニットウチドリ、レデースポートは僅差の3着だった。

その後も、絶対固いといわれていた1番人気の単勝に20万円ぶち込んだが、スタートと同時に落馬した。

競馬は一寸先は闇。当て事と越中ふんどしは向こうから外れるということを嫌というほど味わってきた。

予想の神様でさえ「今年は2000万円の損です」

以前、大川慶次郎という競馬の神様がいた。面白い人だった。あるときこんなことがあった。

7頭立ての競馬で、あまり荒れそうにない。パドックを見ていて休養明けで30キロ以上も太って出てきた馬がいた。

当然だがまったく人気がない。大川さんに聞くと「来るわけない」とにべもない。遊びだからと、その馬から何点か流してみた。大川さんは頼まれた馬券もあるのだろう、特券(1000円馬券)を束にして持っていた。

レースが始まり、最後方をトコトコ走っていたデブ馬が、四コーナーを回ったあたりから猛然と追い込んできて、2着に入った。

横を見たら大川さんがいない。しばらく経って戻ってきた大川さんに、「あの太った馬来ましたね」というと、悔しそうに「あれは走っているうちに痩せたんだ」といいなすった。

大川さんの家に何度か遊びに行ったことがある。豪邸ではなく、まあまあの一軒家だった。

奥さんが、「この人も予想だけやってりゃ、もっと広い家に住めたのに。馬券さえ買わなけりゃね」とこぼした。

年末、大川さんに「今年はどれぐらい馬券で儲けましたか」と聞いた。

大川さん、「今年は2000万円ぐらいの損ですかね」と、悠然とおっしゃる。

「2000万も」と驚くと、「去年は3000万でしたから、今年はいい方ですよ」。予想は神様だったが馬券はただの人だった。競馬というのはそれほど難しく、深遠なものなのである。

外国産馬も招待して行われるジャパンカップ

ジャパンカップというのは1981年に創設された国際招待競走だ。国際競馬統括機関連盟(IFHA)が公表している「世界のトップ100GⅠレース」によると、格付けランキングでは世界7位、日本のレースでは一番格上のレースである。

東京競馬場で行われ、優勝賞金は3億円。世界で通用する馬の育成を目的として創設されたが、1990年までの10年間で外国招待馬が8勝に対して、日本馬はカツラギエース(1984年)とシンボリルドルフ(1985年)の2頭しか勝てなかった。

当初こそ日本馬と外国産馬の力の違いを見せつけられたが、90年代に入り、トウカイテイオー、エルコンドルパサー、スペシャルウィークなど日本馬の優勝が続き、現在は、外国産馬の参戦はあまり見られなくなってきている。

ちなみにジャパンカップのコースレコードは2018年に優勝したアーモンドアイ(3歳牝馬)の持つ2分20秒6である。

このレースは数々の記憶に残るレースを生み出してきたが、私が一番印象に残っているのは、3歳牝馬のジェンティルドンナと4歳牡馬オルフェーブルのゴール前の死闘である。

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