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クラスター発生のショーパブママ明かす 風評被害と感染対策

様々な対策を講じながら再スタートを踏み出す「NEWおだまLee男爵」

 新型コロナウイルスの第三波への懸念が全国的に高まる中、多くの飲食店は感染予防の徹底と、客足が遠のく経済的打撃に悩まされている。これまでに大規模な感染が発生した店舗ならなおさらだ。今年6月にクラスター(感染者集団)が発生し、9月16日から営業再開した「NEWおだまLee男爵」が、騒動以降初めてメディアの取材に応じた。

【写真11枚】白地に大きな花柄の襟広めジャケットを着た「NEWおだまLee男爵」の麗奈ママ。他、接客中はフェイスシールド着用、6台のサーキュレータと2台の工場扇を導入等…営業する店内の様子

客足は9割減

 鹿児島県の繁華街・天文館にある老舗のニューハーフクラブは閑古鳥が鳴いていた。それも致し方ないだろう。6月27日の土曜日に新型コロナのクラスターが起き、116人もの感染者を出してしまったのだ。そのニュースは「NEWおだまLee男爵」という一度覚えたら二度と忘れない、珍妙な店名のインパクトもあり、全国に伝播された。

「世間をお騒がせしたことに加え、天文館という街全体が大きなダメージを負うことになってしまったことは本当に申し訳なかったと思います。緊急事態宣言以降、営業中は手洗いやうがい、消毒の徹底はしていましたが、水商売の感覚として、マスクをして接客にあたるという考えがなかったのも事実です」

 1988年にオープンした同店で、22年前から2代目ママを務める若松麗奈さん(48)はそう懺悔した。計10人のスタッフのうち8人が感染。麗奈ママも中等症の症状で高熱が続き、2週間の入院を余儀なくされたという。もともと男性だった彼女は、2000年にタイで性別適合手術を受け、現在は戸籍上も女性で結婚もしている。

「クラスター後、私が東京のホストクラブに行って、コロナを持ち帰ってきたとか、根も葉もない噂が立ち、それを信じた方から脅迫文のようなお手紙をいただいたこともありました。私はあの日から取材を全てお断りし、地元紙で連載していた人生相談も休載して、自分から発信することは控えていたんです。だけど、ずっと殻にこもってばかりで足踏みしているのもどうかなと思って、今回の取材を受けることにしました」

 保健所の指導が入り、感染爆発が起きた要因として、マスクをしていなかったこと、換気が十分でなかったことが指摘された。あの日、鹿児島市内は大雨が降り、裏口の扉を閉め切っていたのだ。

 麗奈ママは退院後、入り口と裏口の扉に加え、通気口として新たな窓を設けた。店内に大小合わせて8台の扇風機を設置して換気を促し、飛沫を防ぐためにテーブルにはアクリル板の衝立を置いたほか、ボックス席とボックス席の間をポリプロピレンのカーテンで仕切るなど店内を改装した。

 感染爆発からおよそ2か月半後に、スタッフ全員がフェイスシールドを着用して営業を再開したが、最大60人が入る店内は、昨年の今頃と比べ客の入りが9割減。一日に10人の来客があれば良い方だという。

「経営的に苦しいのは当然ですが、鹿児島県のくらし保健福祉部が店内の撮影をして、コロナ対策のモデルケースとして紹介してくださっている。うちの取り組みが拡散されたら、お客様も安心して来やすくなるかもしれないし、他の店も感染対策を徹底することにつながるかもしれない」

ショー内容も変更

 クラスター発生からの日々を振り返り、「ママにも葛藤があった」と話したのは、勤続14年目のスタッフ・雅美さん(42)だ。

「ママが入院した日、熱にうなされながら保健所と店名を公表するかどうか話し合った。躊躇したとは思うんです。だけど、足を運んでくださったお客様の心配が第一にあったから、公表を受け入れたんです」

 同店を訪れた日は、スタッフ全員が出勤する一方、開店してからしばらくの間、来客は初老の男性と、若い男性の2人組だけ。彼らのためだけに行ったこの日一回目のショー(20分)は、お世辞抜きに圧巻の一言だった。

 早着替えしながら歌あり、お笑いありの演目が続き、羽のついた艶やかな衣装で大団円を迎える。沖縄出身のママが有名なタレント養成所出身ということもあってか、演出や振り付け、音響や照明のプロがショーの構成に携わり、決して色物の類ではない。

「営業再開後、ショーの内容も大きく変更しました。飛沫が飛ばないように、ステージの前にある3つのボックス席は使用せず、言葉を発する時はマスクかフェイスシールドをします。汗が引かない状態で接客にあたることもありません」

 第三波の襲来により、今後は再び、接客を伴う飲食店に対する風当たりは強くなるだろう。クラスターを引き起こした「おだまLee男爵」ならなおさらだ。それでも麗奈ママは言う。

「大変なこともあったけど、ずうっと凹んでいるわけにもいかない。やっぱり生活していかなきゃいけないし、(スタッフを)生活させなきゃいけないんだから」

◆取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)、撮影/本誌・藤岡雅樹

NEWおだまLee男爵

【住所】鹿児島市船津町1-2第一島津ビル4階

【営業時間】19時30分~25時

【定休日】日・祝

【料金】飲み放題90分5000円セットほか

※週刊ポスト2020年12月11日号

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