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いじめた側を学校から排除? 本当にできるのか -斎藤剛史-

いじめによる子どもの自殺事件が大きな社会問題となるなかで、小・中学校でいじめの加害者側に積極的に出席停止を命じたり、学校とは別な場所で特別な指導を行うことを検討したりする動きが出てきました。教育関係者などの間では賛否が分かれていますが、これまでのいじめ問題をめぐる新たな動向として注目されます。

いじめでは従来、問題が発覚したあとも加害側の子どもが学校にいるため、いじめを受けた子どもが転校したりするなど、被害者側のほうが不利な立場に置かれることが多いと指摘されてきました。原因の一つとして、小・中学校には停学や退学などの懲戒制度がないことが挙げられます。義務教育段階でも「出席停止」と呼ばれる措置がありますが、本来は感染症などにかかった子どもを登校させないための制度で、懲戒的な意味合いはありません。文部科学省は、ほかの子どもの学習権を守るという立場から問題行動を起こす子どもを出席停止にできると通知していますが、手続きが煩雑なうえ、効果を疑問視する声が学校現場で多く、文科省の調査によると2011(平成23)年度に「いじめ」を理由とした出席停止は全国で1件もありません。

これに対して、全国的にいじめ自殺事件が相次いでいることを受け、東京都品川区教育委員会など、いじめの加害者側の子どもに出席停止措置を積極的に適用する方針を示す自治体が出てきました。また、大阪市教育委員会では橋下徹市長の発案により、いじめなどの問題行動を起こす子どもを出席停止にしたうえで、学校外で矯正指導をする特別指導教室の設置を検討しています。米国の一部の地域には、問題行動を繰り返す子どもに対して、特別な学校や学校外教室で矯正指導を受けさせてから元の学校に戻すという仕組みがあり、橋下市長はこれをモデルにしているようです。日本で性行不良な子どもを対象とする施設は、児童自立支援施設(旧教護院)や少年院など厚生労働省や法務省管轄のものがありますが、学校教育の中ではそのような仕組みはありません。

品川区教委や大阪市教委などの取り組みは、いじめなどの加害者側を在籍校から一時的に切り離すという意味で、これまでにない動きと言えるでしょう。ただし、教育関係者の間では、このような取り組みに批判的な意見も少なくないようです。たとえば、小・中学校の出席停止に当たって文科省は、出席停止期間中も教員が個別指導などをするよう求めていますが、どうしても教員の目が行き届かないのが実情です。このため、出席停止にせずに学校内で指導を続けたほうが効果的だという意見は教育関係者に根強くあります。大阪市教委が構想している特別指導教室についても、送られた子どもに対して周囲の偏見を生み、逆効果にしかならないという指摘もあります。

いずれにしろ、加害者側の子どもを積極的に学校から隔離するという新たな動きは、現在の学校の在り方や教員の意識に大きな一石を投じることになるのは間違いないでしょう。

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