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さあ始まるぞ! 菅総理のイチゴ大革命で経済大回復だ

秋田県のイチゴ農家に生まれ、たたき上げの菅義偉新首相が誕生した。総裁選の最中、他候補者が抽象的な政策を述べる中、菅氏が言及した政策は極めて具体的だった――。

菅新首相しか解決できない日本国の真の課題

筆者は菅義偉新首相が総裁選で言及した政策群も含めて、同政権の在り方を「イチゴ革命」と名付けようと思う。

日本のパワー、東京のエネルギー・ビーム。照らされた都市および人口密度区域が付いている暗い地球儀。3dイラストレーション
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kasezo

日本でイチゴ生産が本格的にスタートしたのは、1900年前後に欧米から持ち帰った品種の生産が行われるようになってからだ。その後第二次世界大戦の影響で一時栽培が禁止されたが、55年前後からビニール栽培手法が確立したことで大規模な生産が開始されることに。菅氏の父が米だけでは食べていけないとして、戦後に家業をイチゴ栽培に転じたのもこの時期だ。そしてその後イチゴは日本人の食卓の特別なデザートとして徐々に普及してきた。

イチゴ栽培は非常に高利益率の事業として知られている。その収益率を稼ぎ出すのは、イチゴを利用したビジネスモデルの数々である。イチゴ本体はケーキ、ジャム、ドリンクなどの様々な形状で販売されるとともに、その栽培空間を利用したイチゴ狩りなどのレクリエーションも広く国民に親しまれている。つまり、イチゴ栽培とは単純な作物栽培ではなく、流通・加工・タイミングなども考慮した「仕組みづくり」で稼ぐ産業だ。

仕組みづくりに関して優れた能力

菅新首相の父は秋田の豪雪環境を生かしてイチゴの出荷時期を遅らせてブランド化するという「仕組みづくり」で成功した人物だ。菅新首相も父譲りの才能を引き継いだのかはわからないが、政治における仕組みづくりに関して優れた能力を持っている。

安倍晋三前首相が得意とした政治手法は政治ビジョンを掲げるタイプのもので、メディアは同首相が新しいキャッチフレーズを掲げるとその名称を挙(こぞ)って報道した。現時点で菅氏のやり方はお世辞にも得意とは言えず、人々の印象に残るようなビジョンを提示するのは不得意に見える。

菅氏の能力は既存の役所の「仕組み」を理解し、縦割り行政や既得権益の問題を打破し、それらを是正できる点にある。官房長官時代に取り組んだ最も印象的な仕事は、各省庁が縦割りで管理していたダム事業を見直し、約50年・5000億円以上かけて建設された八ッ場ダム50個分の治水管理能力を新たに災害対策として使用可能にしたことだ。

霞が関の各省庁はダム1つとっても無駄に自らの縄張りを守ろうとする。彼らは異常気象の多発により全国で水害が発生しても、自らのダム事業の縄張りを守り続け、治水対策のためにダム事業に関する省庁間の連携をまともに取ろうとしてこなかった。これらを是正するため、菅氏は官房長官の強力な権限を用いて霞が関の各省庁の縄張りを壊して相互連携させるという剛腕を振るったのだ。これは行政運営の大きな仕組みの変更であったと言えるだろう。

携帯電話料金の値下げ問題も同様だ。携帯電話料金の値下げには、携帯事業への新規参入を促す必要がある。しかし、総務省から特権を得ながら利益率20%を叩き出す既得権塗(まみ)れの大手携帯キャリアが牛耳る業界に新規参入の道を開くことは政治的に極めて困難だ。菅氏は総務相経験などで同分野への知見を有するが、それだけで仕組みを変更できるほど生易しい問題ではない。

そのため、菅氏が既得権益を打破するために活用したのが公正取引委員会だ。菅氏が最初に「携帯電話料金の4割削減」を打ち出したのは2018年8月。16年に公正取引委員会が端末・通信のセット販売を前提に「携帯市場は競争が十分に進んでいない」と発言したことを形式上受けたものだ。つまり公正取引委員会という外圧を利用し、総務省と業界の既得権にメスを入れる環境を整えたのだ。

その上で、菅氏は20年9月以降に公正取引委員会委員長として、側近の1人と見なされる古谷一之官房副長官補を配置し、官邸に新たに設置されたデジタル市場競争本部長に自ら就任、業界等の抵抗勢力が巻き返そうとしても梃でも動かない体制を構築した。これは既得権からの反撃を許さず、政策を前に進めるために押さえるべきポイントを熟知した行動だった。

役所のデジタル化を進める

今回、総裁選の中で一際耳目を集めた「デジタル庁創設」も現在の旧態依然とした役所の仕組みを根こそぎ叩きなおす改革となる。単純に役所のデジタル化を進めることを是とするだけなら誰でも言えるが、そのためには無数の政治的・行政的な障害が存在していることは言うまでもない。

真の課題は今までの政治家は誰もこの複雑な連立方程式を解くための「仕組み」を考えることができなかったことにある。デジタル化を阻害する既得権層は与野党および行政機構内に広がり、単純に与党政治家のデジタル面での後進性だけでは説明できない根深い問題である。その結果として、デジタル化についても既得権層の抵抗で進めることができず、PCも触ったことがないIT担当相がいる骨抜き状態の有り様となっている。

この問題を解決するためには、省庁間の連携、中央・地方の問題、公務員労組の問題、民間事業者側の問題などを熟知し、官房長官、総務相、地方議員としての政治・行政の現場の薫りがする重層的な知見が必要だ。そして、デジタル化を実現するためには実行力が必要であり、剛腕を振るうことも時として重要になる。

菅新政権が仕組みを整えて政策を断行していくうえでの最大の障害は何か。前述のダム管理、携帯電話料金、そして政府のデジタル化は一般の国民生活を改善するだろうが、その政策の恩恵はいかにも地味である。まして、政策を実行するための優れた仕組みを構築することの大切さを知る人などほとんどいない。

菅新政権による改革によって痛みを受けるのは「既得権に群がる一部の特権層」だ。自分たちの縄張りを守りたい役人達もこれに含まれる。現在、菅新政権が立ち上がる前から、菅氏による霞が関の官僚に対する政治主導の在り方が元官僚・大手メディアらから槍玉に挙げられている。今後も常に既得権層の代弁者である大手メディアから「冷たい」「傲慢だ」「やりたい放題」などの批判が寄せられることになるだろう。

菅新政権がもたらす規制改革は日本の政治・行政に関する不合理を解決し、日本経済復活に向けた道筋を整備するものになっていく。その意義と成果を非既得権層の国民にわかりやすく伝えることは新政権の大きな課題となる。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)

早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員

パシフィック・アライアンス総研所長。1981年東京都生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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(早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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