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焦点:中国で相次ぐ社債デフォルト、政府が再び企業債務圧縮か


[上海/シンガポール 24日 ロイター] - 中国の有名国有企業(SOE)3社が立て続けにデフォルトを引き起こし、同国の社債市場を大きく揺るがした。新型コロナウイルスのパンデミックで一時後退していた企業債務圧縮に向けた政府の取り組みが、復活してきたとの観測も高まっている。

一連のデフォルトに社債投資家は怒り心頭の様子だ。格付けは最上級だし、財務は健全そうで暗黙の政府支援もあるだろうと信頼していたのに、全て裏切られた。

苦境の国有企業を政府が明らかに支えなかったことは、もはや中国経済が個別の破綻を吸収できるぐらいに強くなったと当局が自信を深めている表れだ。しかし、多くの投資家にとっては寝耳に水だった。

10月終盤に独BMWの合弁相手の親会社である華晨汽車集団の社債がデフォルト。発展途上にある価格決定メカニズム、投資家のリテラシーの甘さといった、さまざまな漠然としたリスクが中国の社債市場に内在するという事実を奇しくも証明した。

上海に拠点を置くヘッジファンドマネジャーのビンセント・ジン氏は、今年序盤に華晨汽車の社債を購入したが「同社が投資家に大きな問題を抱えているときちんと伝えていたなら、買わなかったし持ち続けなかっただろう」と話す。

華晨は2017年10月に私募形式で10億元の3年債をローンチした時点で、トリプルA格付けを売り文句にした。また、中国でも比較的貧しい地域の遼寧省を基盤としているものの、今年4月時点でも社債保有者に対して、手元に十分な現金があり、所有する土地も多く、公的部門が後ろ盾になっていると説明していた。

このため債権者らは、社債がデフォルトになっただけなく同社が一部債権者によって裁判所での破産手続きに引きずり込まれたことに呆然としてしまった。

さらに同社はデフォルトの1カ月前、香港に上場している傘下の華晨中国(ブリリアンス・チャイナ)の株式30%を別の子会社に移管し、社債保有者が手を出せない資産にしていた。

一方でヘッジファンドのジン氏は、華晨のバランスシートにあった警戒すべきサインを見逃していた。昨年末時点で同社の債務は1448億元と株主持ち分の3倍に達し、しかもそのほとんどが短期債務だった。BMW以外の全てのブランドでは、キャッシュフローが赤字を続けていた。

ただ、華晨の経営悪化がうわさになっても、ジン氏は政府がこれほど大きな国有企業を見捨てるはずはないと考え、損切りに動かなかった。

  <資本配分のゆがみ>

一部の市場関係者に言わせれば、結局、中国の社債市場はパンデミック前の、野放図な借金と非生産的な投資を共産党指導部が取り締まっていた時代に戻ったに過ぎないという事実が、今回のデフォルト騒動から読み取れるという。

オリエント・キャピタル・リサーチのマネジングディレクター、アンドリュー・コリアー氏は「デフォルトの容認には、これ以上ないほどのメッセージが込められている。中国の金融および経済の安定に相当な脅威とならない限り、中央政府は企業が破綻するのを苦にしないということだ。中央政府が介入を望んでいないのは明らかで、基本的には地方政府に自分たちの責任で対応しろと伝えている」と指摘した。

そうなると投資家の視点では、国有企業のリスク性や国との関係性が変わりつつあるのではないか、との大きな疑問が残る。

河南省では今月10日、トリプルA格付けだった国有石炭会社の永城煤電控股集団がデフォルトとなったが、3週間前に新規の社債を発行したばかりだった。デフォルトの1週間前には、保有していた中原銀行の株式を別の政府系子会社2社に移している。

シーランド・セキュリティーズのエコノミスト、ロッキー・ファン氏は、国有企業のデフォルトは目新しくないが、社債保有者に流動性資産を渡さないようにする措置が講じられるようになったのは初めてだと説明。「投資家に対し、あなた方の資金を返したくありませんと言っているようなもので、これではファンダメンタルズに基づいて企業のリスクを評価し、社債価格を決める意味がなくなる」と嘆く。

永城煤電の270日物コマーシャルペーパー(CP)の表面利率は4.39%と、同期間でリスクフリーの政府短期債の1.84%よりずっと高い。しかし、ある国内証券の幹部は、付随するリスクを勘案すれば、まだ低過ぎると言い切った。

このほか名門・清華大学の支援を受けた国有半導体メーカー、清華紫光集団の3年物社債13億元も、15日にデフォルトとなった。格付け会社が債務リスクを警告して間もなくだった。

永城煤電、華晨汽車、清華紫集団各社の既発債も、今回のデフォルトを受けそれぞれ価格が急落している。

独立系アナリスト、フレーザー・ホウィー氏は「あまりに長い間、(リスクが)間違って価格設定されてきた。資本配分がゆがんでいる様相を呈し、投資家が資金をつぎ込むのにふさわしくない企業にお金をつぎ込んでいる」と警鐘を鳴らす。

<玉石混淆>

中国企業で格付けを付与された発行体の実に9割以上は、ダブルAないしそれ以上なので、個々の違いを見分け、リスクを評価するのは難しい。

それでもディストレスト債や高利回り債投資を手掛けるSCローウィーのマイケル・ローウィー創業者兼最高経営責任者(CEO)は「最も洗練された投資家であれば、国有企業に金を貸すことと国にお金を貸すことには、大きな差があると分かっている」と主張。中国政府は、判断を誤った国有企業を一切救済するつもりはないことに直ちに気づくべきだと述べた。

ロベコ(香港)のシニア・クレジットアナリスト、Tiansi Wang氏は、中国社債市場について、ファンダメンタルズに依拠する投資家が取引する場所ではないと突き放しつつ、デフォルトの発生は良い兆候だと認める。「誰も痛みを引き受けないならば、健全さがなくなる。リスクに見合う適切な価格が設定される環境ではない」という。

(Samuel Shen記者、Andrew Galbraith記者、Tom Westbrook記者)

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