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国民の社会保障を支える制度に持続性を。本質的な議論と早期の決断が必須 - 「賢人論。」126回(中編)石破茂氏

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「政治家は嫌われても本当のことを国民に言わなければならない」と語る自由民主党 衆議院議員・石破茂氏。超高齢社会である日本の国家予算の中で、医療・介護・年金に関する費用「社会保障給付費」が占める割合は年々肥大し、今後もさらに財政を圧迫していくことが見込まれている。社会保障制度がどう設計・運用されるべきなのか。2006年に導入された「後期高齢者医療制度」を皮切りに、持続可能な日本社会に向けて政治が果たすべき役割についてお話いただいた。

取材・文/木村光一 撮影/荻山拓也

制度のサステナビリティを保つために必要な決断もある

みんなの介護 2006年に福田康夫内閣が導入した「後期高齢者医療制度」は、高齢化社会がすぐ間近に迫っているという現実を明らかにしたものでしたが、猛反発を招いたできごととしても記憶されています。当時のことを振り返ってどのように考えていますか。 

石破 当時、舛添要一氏が厚生労働大臣で私は防衛大臣を拝命していました。福田康夫先生は世間では“冷たい”“官僚的”といったイメージで捉えられがちですが、私個人としては、人柄も立派で、大臣としてお仕え甲斐のある総理だったと、今でも尊敬しています。

国民にそれ以前の負担よりも多くをお願いした「後期高齢者医療制度」の導入も、急速に進行する高齢化によって膨らむ医療制度を維持するためには避けて通れないもの。たとえ非難を浴びても、誰かが長期的視野に立って勇気を持ってくださなければならない決断でした。

ただ「後期高齢者医療制度」がなぜ批判を受けたかを考えると、まずは“後期高齢者”というストレートな表現をそのまま用いたネーミングが良くなかったですね。いかにも人生の終末をイメージさせる「後期」という2文字が感情的反発を招いて、制度の意義や必要性を説明しようにも聞く耳を持ってもらえなくなってしまったんです。

みんなの介護 なるほど。本質的な議論から外れた意見が飛び交うことは残念に思います。「くださなければならない決断」とのことですが、具体的に説明いただけますか。

石破 後期高齢者と定義される75歳以上の方が病気にかかったり、体になんらかの不具合が出たりする確率は、ほかの年代と比べて急激に高くなります。私の両親も70歳を過ぎてから急に体調の不良を訴えるようになり、父は40年前、母は30年前、同じ73歳で亡くなりました。

もちろん健康状態には個人差がありますので一括りにはできませんが、70代が境目であることはほぼ間違いないと言っても差し支えないでしょう。ならば、それをあらかじめ考慮して保険料も設定しなければ、制度全体のサステナビリティ(持続可能性)が失われてしまう。実際にそうなりかけてしまっていたわけです。

新型コロナの爆発的感染拡大の抑制に貢献した国民皆保険制度

みんなの介護 新型コロナの感染拡大に伴って、日本では福祉サービスの提供をどうするのか、飲食・観光業などが受けた経済的打撃に対する政策についてなど、解決すべき課題が多くあります。石破さんは日本の現状をどのように見ていますか。

石破 コロナ禍によってさまざまな“日本の弱み”が顕在化したのは確かです。一方、ここまでのところ感染者や重症者の爆発的増加が抑えられてきたのには、いくつかの理由があると考えています。その中で、誰でも医療にアクセスできる国民皆保険制度が大きく関係していたことは疑いようのない事実であり、絶対にこの制度を守らなければならないと私も思っています。しかし、このまま急激な高齢化と人口減少、そして今のままの制度を続けていけば、いつかは破綻してしまいます。

みんなの介護 2025年には団塊の世代にあたる約2,180万人全員が後期高齢者となり、ますます福祉財政が逼迫(ひっぱく)するのが目に見えていますね。

石破 はい。さらに2040年には高齢者の数がピークを迎え、今のままでは介護にかかる費用が現在の2.4倍、医療費が1.7倍、年金は1.3倍になる。医療費に関しては実際のところどこまで膨らんでいくのか皆目見当もつきません。

にもかかわらず、これらのお金をどうやってまかなえばいいのかについて、実はまだほとんど答えを出せていない。この国の仕組みの多くは、バブル前の社会状況や国際状況を念頭に置いてつくられ、以降30年以上も放置されてきました。「景気さえよくなれば何とかなる」という楽観論では、もう済まされない瀬戸際まできていると思うべきです。

医療・年金・介護を「保険」本来の機能へ戻す

石破 医療も年金も介護も、その本質はあくまで「保険」。リスクを回避できなかったときのためにあるのが本来の保険の機能であるはずなのに、今は十分生活ができる収入も資産もある人が病気になったり、体が不自由になったり、高齢になったりしてもすべて公的保険の受益者になっているのが実状です。

健康保険も、保険料だけでまかなわれているのではなく、そこに税金も投入されている。そもそもそういうあり方は“保険”と呼べるものなのかと、私はずっと疑問に思っているんです。

みんなの介護 本当に助けが必要な人に十分な国のケアが届かない仕組みになってしまっているということですか。

石破 はい。まずは社会保障を、原点である「保険」に戻さなければいけない。そして、収入や資産のある人とそうでない人を一律には扱わず、本当に困っている方から重点的に配分したうえで若い世代の負担もできる限り軽減させる。そうするためには公的な保険でカバーすべき対象や範囲はどこまでが適切なのかをもっと精査し、場合によっては民間の保険を活用するという選択肢も含めて議論すべきだと思います。

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