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第451回(2020年11月24日)

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感染症再拡大によるコロナ禍が続いています。国会でのコロナ対策の検討にも腐心していますが、国際情勢、通商問題からも目が離せません。以下、本文に登場する略称の日本語標記です。EPA「経済連携協定」、TPP「環太平洋パートナーシップ協定」、RCEP「地域的な包括的経済連携協定(東アジア地域包括的経済連携)」、USMCA「米国・メキシコ・カナダ協定(新NAFTA<北米自由貿易協定>)」です。

1.TPP三原則

まもなく12月。今年の10大ニュースを考える時期が来ました。トップは間違いなくコロナ禍。その影響で少々影が薄くなっていますが、ブレグジットも大ニュースです。

1月末をもって英国はEUから離脱しました。激変緩和のための移行期間延長を求める期限は6月末でしたが、英国は申請せず。12月末をもって移行期間も終わります。

英国は新たな通商政策の第一歩として日本とのEPAにスピード交渉で9月に合意。日英EPAは現在国会で審議中ですが、来年1月1日から発効する予定です。

交渉前に英国政府が国民向けに公開した「戦略的アプローチ」と題する文書には、日英EPAはTPP 参加へのステップと明記されています。

日英EPA発効後はTPPへの参加を目指し、アジアとの貿易拡大を企図しているということです。

一方、今月15日にRCEPが合意に至りました。日本にとって中国との初の自由貿易協定。その中国の習近平国家主席は、20日に開かれたAPEC首脳会議で「TPPに加入することを積極的に検討する」と発言。俄かにTPP人気が高まっています。

中国の意図は容易に想像がつきます。米国抜きのRCEPに合意したので、次は米国抜きのTPPに参加し、アジアにおける主導権を握り、米国を孤立させる狙いです。

しかし、日米同盟を基軸とする日本が米国抜きで中国を含むTPPを是認することは様々な問題を惹起します。

TPP加盟国を拡大するならば、英米両国が中国に先んじること、及び中国が加入する段階までにTPPの内容を拡充することが肝要です。

拡充すべき内容は多岐に亘りますが、最も重要なのはデジタル分野の規制。つまり、中国が他国に強要している中国国内へのコンピュータ関連設備の設置や技術移転を抑止する内容が含まれていることが必須です。

デジタル分野はWTOに統一ルールがなく、TPPや日EUEPA、USMCA、日米デジタル貿易協定が先行。中でも、下記のTPP三原則はひとつの基準となりました。

すなわち「国境を超える情報移転」「コンピュータ設備の自国内設置」「ソースコードの開示・移転」の強要禁止です。

さて、そういう状況下での日英EPA。英国がTPP加盟を求める際には、最低限日英EPA並みのデジタル分野規制をTPPに反映させる見直しが必要です。

中国がそれを飲めればTPP加盟というシナリオが見えてきますので、日英EPAのデジタル分野規制の内容が適切であるかどうかが重要なポイントとなります。

RCEPにも第10章6条に技術移転等の強要禁止の条文が入りました。大きな前進ですが、まだ第一歩。日英EPAに比べれば全く不十分です。

しかし、その日英EPAの条文もよく読むと気になる点が少なからずあります。主な点のみ指摘しておきます。

協定第8章にデジタル分野の規定があります。71条の用語定義において、コンピュータ関連設備としてサーバー及び記憶装置を限定列挙しています。

しかし、加速する技術進歩やインフラの実態を鑑みると、サーバー及び記憶装置「等」として幅広く規定するのが適切と考えます。限定列挙は将来の懸念につながります。

73条では、ソフトウェア関係の貿易の条件として、当該ソフトウェアのソースコード、及びそのアルゴリズムの移転、アクセスを要求してはならないとしています。

しかし73条の規定は、相手国の規制機関や司法当局の要求は認めており、しかも執行活動のみならず「調査」「検査」名目も可としています。

さらに同条1項aで、自由に交渉された契約や政府調達においては、移転、アクセスを自主的に付与することを認め、しかも1項bで政府権限としての活動を除外しています。

日英EPAのこのような規定がTPPに反映され、これをもって中国の参加の前提とする場合、潜在的な問題が多いと言えます。

84条の情報の越境移転、85条のコンピュータ関連設備設置、86条の暗号装置規定でも同様の懸念があります。

ちなみに、71条の用語定義、及び73条の該当条文においても、ソースコードの定義が定められていません。

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