記事
  • mkubo1

誰でも分かる「財政の崖」の解説

今日は、財政の崖について、分かりやすく解説してみましょう。

「財政の崖」とは、このまま、何も政策変更しないと、2013年1月から「いきなり」実質大増税になることを言います。この「いきなり」実質大増税の要因は2つあります。1つは、歳入サイドの問題で、各減税の終了で、税率が上がりますので、実質増税になることです。もう1つは、昨年8月の予算管理法で決められた強制的な歳出一律削減策です。

つまり、減税の終了(歳入側の増加)と強制歳出削減(歳出側の減少)で財政収支は約5000億ドル改善する(米国議会予算局発表)といわれています。財政が、5000億ドルも改善するなんて、「なんと素晴らしい!」と思うかもしれませんが、こんなことがいきなり起きてしまいますと、景気への影響がとんでもなく大きくなるのです。

ある試算ですは、このまま、何の政策も無く、財政の崖を迎えますと、米国の成長率を3%くらいのマイナスにしてしまうのではと言われています。これって、相当な景気後退を意味しますから、万が一、3%のマイナス成長になれば、景気浮揚のために、さらなる財政刺激策が必要となり、いったい、何のために、財政削減したのか分からなくなりますね。ですから、このような状態は、避けなければいけないということで、「財政の崖」問題として、注目されています。

最初に、歳入サイドの方ですが、2つの大きな減税措置が終了します。1つは、皆様がよくご存知のブッシュ減税で、もう1つ給与減税です。

まずは、ブッシュ減税を見てみます。ブッシュ減税は2001年と2003年にITバブル崩壊の後遺症から経済を活性化するという名目で、行われた減税です。所得税減税で最高税率が39.6%から35%へと下がりました。。しかし、ブッシュ減税の真髄はそこではありません。キャピタルゲイン税が20%から15%…これも大したことありません。問題は、配当課税が39.6%から15%、遺産税が55%から0%となったのです。まさに、金持ち優遇策で、経済活性化という当初の目的からは、どんどん、遠ざかっていきました。

その結果、金持ちは欲に目がくらみ、ウォール街は暴走し、貧富の格差はどうしようもないくらい拡大し、結果、金融危機が起きたのです。米国の複数の友人がいっていましたが、お金がないと、子供にまともな教育を受けさせられないそうです。これでは、米国の自慢である機会平等やアメリカンドリームは、まさに、過去の産物となっているのです。

私の個人的な意見ですが、この異常な格差問題が米国の根底にあるから、ロムニーは勝てなかったのだと思います。オバマ大統領には、このブッシュ失政を改善しなければならないという役割を期待されているのだと思います。ですから、その格差の象徴である銀行業界は、当分、目の敵にされるのは仕方ないのでしょう。

2つ目は、給与減税です。これは、2010年12月に成立した第2次景気対策法のひとつです。給与税を2%削減するのもので、これが、2012年の12月で失効してしまうのです。一世帯あたり約1000ドルと言われていますので、これは、一律、富裕層も貧困層も影響を受けます。

次に、歳出サイドの方ですが、こちらも大きく2つあります。1つは、予算管理法による強制的な歳出削減です。もう1つは、先ほどの給与減税と同じく第2次景気対策の中で行われた失業保険の給付延長です。最大99週まで、失業保険が受け取れるという、失業者には、なんとも、ありがたい措置ですね。これが、年末で終わるので、来年以降、歳出が減るということです。

これがどの程度の金額になるか予算局などが予測を出しています(単位:億ドル)。まとめて見ますと、下記のようになります。

歳入サイド

ブッシュ減税の終了 2500

給与税減税の終了  1100

その他        650 

歳出サイド

強制削減       540

失業保険延長の終了  340

その他        100

合計        5000

つまり、何も政策が無ければ5000億ドルの財政収支の改善となるということです。繰り返しになりますが、これじゃ、景気が持たない(失速する)ということなのです。これが「財政の崖」なのですね。

これが、現状です。

では投資家は、どのように考えているのでしょうか?投資家は、そんな成長率3%減なんてことになれば、株式市場は暴落するかもしれないし、景気はボロボロ、税収は大きく減少、財政は改善するどころか悪化の可能性もあるということをわかっています。ですから、そんな状況にならないように政府も議会の最善の政策を考えるに違いないと、そういうとんでもない状況は回避されるはずだと、たとえ、当初、議論が紛糾しても、最後は、合意するに違いないと高をくくっているのです。

合意するというのは、現状をいきなり変えるのではなく、景気に配慮して、でも、少しずつ財政改善も行うというものです。

では、オバマ大統領の政策はどの様なものでしょうか。オバマ大統領が再選して、さっそく、公約通り、富裕層への実質増税を行う方針のようです。世帯年収が25万ドル以上の場合、所得税(現行35%)と配当課税(現行15%)は39.6%に、キャピタルゲイン課税(現行15%)は20%にするのです。

これは、貧富の格差を縮小方向の政策となります。誤解のないように言えば、拡大しすぎた分を縮小するということですね。何事も、行き過ぎは良くないのです。ですから、理にかなった政策だと思います。バフェットさんも、配当課税が15%というのはおかしいと、以前から主張していますね。

ただ、当然、下院(共和党)は、すでに、反対を表明しています。となると、師走の忙しい12月下旬までもめにもめるでしょうね。 大統領は、2期目ですし、最初の最重要政策ですから、公約を曲げるとも思えませんし、間違いなく、理想を追い求めますね。

となりますと、マーケットの動きとしては、とりあえず、株を売っておこうという動きが、今後、増える可能性があります。政策に関わる株式の需給は良くないということです。また、経済成長も、これまた政策次第ですが、思うように、成長率が上がらない可能性が出てきますね。さらに、欧州も、何だか雲行きが怪しいですよね。

株式市場がもっとも下がるときというのは、環境が不透明なときに下がります。財政の崖については、皆が分かっているのですが、どうなるのか、誰も分かっていない、不透明な状況なのです。不透明であれば、株式市場は、最悪を想定して、下げる可能性があるということです。今から、年末にかけて、警戒が必要だということです。

あわせて読みたい

「財政の崖」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏 任命拒否の教授らに苦言

    橋下徹

  2. 2

    田原氏 野党は安易な反対やめよ

    たかまつなな

  3. 3

    iPhone12かProか...売り場で苦悩

    常見陽平

  4. 4

    コロナ巡るデマ報道を医師が指摘

    名月論

  5. 5

    コロナ禍も国内工場は異常な強さ

    PRESIDENT Online

  6. 6

    学術会議に深入りしない河野大臣

    早川忠孝

  7. 7

    感染リスク高い5つの場面に注意

    赤池 まさあき

  8. 8

    数字を捏造 都構想反対派の欺瞞

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    トランプ氏 逆転攻撃はほぼ不発

    WEDGE Infinity

  10. 10

    学生転落 巻き添えの女性が死亡

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。