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2012年9月が日本の転機となった可能性も

 財務省は11月8日に9月の国際収支(速報)を発表した。これによると経常収支は前年比68.7%減の5036億円の黒字となった。貿易収支は4713億円の赤字。サービス収支も2801億円の赤字。所得収支は1兆3095億円の黒字となった。

 そして、9月の季節調整済み経常収支は1420億円の赤字となった。季節調整値が赤字となるのは1996年1月の現行統計開始以来初めてとなる。この赤字転落の主因は貿易赤字の拡大による。9月の季節調整済みの貿易赤字は9774億円となっていた。

 これには領土問題による日中貿易への影響もあるであろうが、大手電機メーカーの決算状況などを見ると、この貿易赤字が大きく縮小することも考えづらい。原発事故により原油等の輸入増なども影響している思われるが、日本の貿易構造そのものの変化もあり、今後は経常収支の赤字が定着してくる可能性がある。

 経常収支の赤字が定着すると外為市場では円安要因となる。もちろん為替は相手国があり、米国の財政の崖問題や、ユーロ圏でのギリシャやスペインの財政問題では、一時的にドルやユーロが売られ円が買われる場面もあろう。しかし、これまでのように円高傾向が定着するような環境には徐々になくなりつつあると考えられる。

 7月末あたりから円はユーロに対して下落傾向となり、ドル円については9月あたりから円安ドル高傾向となっている。

 円安の流れが定着すれば、日本の輸出企業にとり恩恵を被ろうが、電気メーカーの業績悪化は円高ばかりが原因ではない。その背景には海外メーカーとの競争力の低下などが要因とみられ、円安により業績が急回復することは考えづらい。また輸入についても原油などの輸入増は続くものと予想される。

 財政赤字が今後定着するとなれば、これは円安要因になるとともに金利に対しても上昇要因になりうる。さらに円高トレンドが反転したとなれば、今後はこれまで大量に購入していた中短期債主体の日本国債を売却に転じてくる可能性がある。この売却も円安要因となる。

 11月8日に発表された10月の対外及び対内証券売買契約等の状況(月次・指定報告機関ベース)によると、対内証券投資については中長期債が6081億円(9月が4522億円)、そして短期債が3兆5745億円の処分超となっていた(9月が6957億円取得超)。3兆円を超える規模の短期債の処分超は2010年3月の3兆4380億円の流出以来となる。

 年内にも解散総選挙の可能性も出てきたが、新たな政権も日本のデフレ脱却を目標に掲げてくることが予想され、日銀への追加緩和圧力もさらに強まることも予想される。これも円安要因となる。今後の日本の景気悪化への懸念もあるなど、国内で見る限り、円高となる要因はあまり見当たらず、円安要因が強まりつつあるように思われる。2012年9月あたりがひとつの日本の転機となった可能性もあるため、今後の日本の経常収支などの状況には注意しておく必要がある。

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