12月18日公開の映画「日本独立」の製作総指揮を、新型コロナウイルスのワクチンを開発中のバイオ製薬企業「アンジェス」(大阪府)の創業者である森下竜一氏が務めていることが、「週刊文春」の取材で分かった。
「日本独立」は敗戦直後に憲法改正を進めようとするGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)と交渉した実業家の白洲次郎らを描いた作品だ。主人公の白洲夫妻を浅野忠信と宮沢りえ、首相の吉田茂を小林薫、国務大臣の松本烝治を柄本明が演じている。
白洲の妻、白洲正子を演じた宮沢りえ ©文藝春秋
「映画のクレジットにはゼネラルプロデューサーとして『森千里』なる人物の名前があります。これが、実は森下氏なのです。映画の企画がスタートしたのは、安倍政権が憲法改正を目指していた頃で、森下氏は出資者を募っていました。日本国憲法はGHQによる押し付け憲法だという内容で、憲法改正を後押しする“改憲映画”。世論を喚起して憲法改正の機運を醸成しようと森下氏は考えたのでしょう。昨年2月にクランクインし、大阪府庁舎や神戸市などで撮影しました」(映画関係者)
大阪大学大学院寄附講座教授の森下氏は、アンジェスを1999年に創業。同社は日本医療研究開発機構(AMED)の公募に採択され、研究開発費として20億円を受け取っている。
「森下氏は第二次安倍政権発足後、規制改革推進会議委員、健康・医療戦略推進本部参与に抜擢された。安倍氏とはゴルフ仲間でもあり、専門誌で2ショット写真を披露したこともある」(官邸担当記者)
本作で脚本を手掛け、監督を務めた伊藤俊也氏に聞いた。
「森下さんは現場にもお見えになった。制作費は4億円ぐらいですが、このスケールの作品では最低ラインの予算で、外国人俳優は、ハリウッドから呼ぶわけにもいかず、質のいい無名の人を選ぶようにしました。企画が実現したのは安倍政権の時で、出資者は憲法が話題になると期待してくれたのではないでしょうか」
森下氏は映画については「ご回答は控えます」と言うのみだったが、ワクチン開発についてはこうコメントした。
「安倍前首相・菅首相とこの件でお話ししたことは一切ありません」
11月26日(木)発売の「週刊文春」では、
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年12月3日号)