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これが旧試組の意地だ。

今年の新司法試験で、高い合格率で実力を証明した上に、低迷する法科大学院人気をあざ笑うかのように受験者数はうなぎ上り。

論文試験が終わった時点でかなりの人数の合格が予想されていた、ということもあって、去年以上に注目を集めた第2回「予備試験」の最終合格者が発表された*1

最高齢合格者は66歳、そして、最年少合格者はなんと19歳*2

口述試験で結構な数の不合格者を出しつつも、最終的には219名合格、と対前年比で100名以上合格者を増やすことになっただけに、来年以降、ますます人気に拍車がかかりそうな気配がする。


・・・で、気になるのは、今回の最終合格者の属性である。

法務省が開示したデータ(http://www.moj.go.jp/content/000103364.pdf)を見ながら、昨年のデータ(http://www.moj.go.jp/content/000080863.pdf)と比べてみると、概ね以下のような傾向が分かる。

・24歳以下の受験者数(1175名→1755名)、合格者数(40名→87名)がともに急増。

・25歳以上、特に30歳~49歳以下の層の受験者数は、思いのほか伸びていないが、50歳以上の受験者数は増加しており(1212名→1302名)、合格者も5名→10名、と倍に。

・公務員、教職員、会社員、というカテゴリーの受験者数が伸びていない(1959名→1925名)*3

・一方で、大学生が受験者数(1218名→1636名)、合格者数(40名→69名)ともに大幅に増加しており、さらに、法科大学院生が受験者数(192名→526名)、合格者数(8名→61名)ともに、パーセンテージとしては絶大な増加率を誇っている。


ここから見えるのは、本来、法科大学院に行って勉強するなり、就職して世の中をしっかり見てから法曹を目指してほしい世代が、“バイパス”としての予備試験に殺到し、合格実績を上げる一方で、法科大学院という本来ルートを使いにくい働き盛りの社会人世代がむしろ引き気味になっている*4、という実態で、これが「予備試験」制度導入の趣旨に沿った結果といえるのか、といえば、やや疑問も残るところであろう。

ただ、「司法試験受験歴」という切り口から描き出される以下のような結果を見たら、まだまだこの試験も捨てたものではない、と思える。

受験したことがない 受験者2517名 → 最終合格者74名

旧試験のみ受験したことがある 受験者4159名 → 最終合格者119名

新試験のみ受験したことがある 受験者152名 → 最終合格者5名

両方とも受験したことがある  受験者355名 → 最終合格者21名


上記のような属性変化の影響はここにも表れていて、全くの初挑戦組の受験者(1629名→2517名)、合格者(17名→74名)大幅増加に比べると、「旧試験only」組は受験者数を減らしているし(4512名→4159名)、合格率も決して芳しくはない。

だが、この中には、かつて仕事をしながら、限られた時間をフル活用して旧試験の合格を目指していた人々が少なからず混じっているはずで、最終合格者のカテゴリーの中でも、そういった「旧試験組」の存在感がなお大きい、ということは、“制度変更による犠牲者を救済する”という予備試験創設の意義を象徴するものとして、大きな意味があると自分は思っている*5

「旧試験」というものの存在がこの世から消えた日から、一年一年、歳月を経るたびに、予備試験においても「旧試験経験者」の存在感は薄まり、やがて、「高等文官試験」同様、歴史上の存在へと変わっていってしまうことは容易に推察されるところである*6

それでも、いつでも誰でも受けられた、そして、合格できる機会は乏しくとも門戸だけはすべての人に開かれていた・・・そんな旧試験の良き伝統を、予備試験が受け継ぎ、やがて「予備試験→新司法試験合格」というゴールデンルートが、大志を抱く社会人にとって更なるチャンスをつかむための架け橋となることを、自分としては願うばかりである。

*1:詳細は法務省のHP(http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji07_000101.html)参照。

*2:昨年は20歳~59歳、という幅だったが、それから更に幅広い人材が新試験への挑戦資格を掴み取ることになった。

*3:ただし、合格者数は全体の傾向に合わせて26名→34名と一応増加している。

*4:昨年の1回目の試験の合格率が合格率だっただけに、あきらめの境地に至った人や法科大学院に進路を切り替えた人も多かったのではないかと思われる。

*5:もちろん、「旧試験only」の人々の中には、学部の3年、4年次に旧試験に挑んだ現・法科大学院生なども交じっているだろうが、そういった人々にしても、今の制度にならなければ(せめて500人規模の合格者が出ていた時代であれば)、大学在学中に合格するチャンスはあったと思われるから、その意味で“制度変更の犠牲者”としてカウントしてもよいのかもしれない(個人的には、若いうちにそんなに生き急いでどうする、と思うし、先述したとおり、こういう人々にはじっくり勉強するか働いてからでも遅くない、と言いたくなるのだけれど)。

*6:このペースでいけば、来年にはもう受験歴がない受験者との間で逆転現象が起きるかもしれない。

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