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あっさりと終幕を迎えた録画補償金訴訟。

一昨年、昨年、と、年末に大きなセンセーションを巻き起こしてきたSARVH対東芝の録画補償金請求訴訟。

第一審、控訴審と訴えられた東芝側が勝訴していたものの、各争点について、控訴審が第一審の判断を180度ひっくり返すような判断を示していたこともあって、最高裁がどのような判断を示すのか、というのが注目されていたところであった。

だが、今朝の朝刊に掲載された記事を見て、あらびっくり・・・。

「デジタル放送専用のDVDレコーダーなどの録画機器を巡り、著作権団体の『私的録画補償金管理協会』が東芝に、機器の売り上げに応じた著作権料(私的録画補償金)約1億4千万円の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は9日までに、協会側の上告を退ける決定をした。東芝側勝訴の一、二審判決が確定した。決定は8日付。」(日本経済新聞2012年11月10日付け朝刊・第38面)


おそらくは、いわゆる「三行決定」での上告棄却だと思われ、当然ながら最高裁のHPに飛んでも、何も出て来ない・・・という何ともあっさりとした決着になってしまった。

冷静に考えると、この事件の争点のうち、上告審の判断に馴染むような法解釈の問題になっているのは、著作権法104条の5の解釈をめぐる争い(単なる訓示規定か、それとも製造事業者に法律上の義務を負わせる規定か)の部分くらいで、両当事者が“主戦場”と捉えていた節がある「特定機器該当性」の争点は、一応「施行令の条文解釈」ということにはなっているものの、形式的な文言解釈+立法経緯に照らした事実認定の問題、という様相が強い。

そして、法104条の5を「訓示規定」と断定して、原告の請求をぶった切った第一審とは異なり、控訴審は、法104条の5の解釈については、原告の主張に一定の理解を示して、被告が法律上の補償金支払義務を負うことに含みを持たせており、著作権法施行令1条2項の解釈、という「事実認定」のレベルで原告を負かせたに過ぎない。

となれば、原告がいかに頑張って上告理由、上告受理申立理由を書いたところで、「これは最高裁レベルで判断する問題ではないね」と、“三行”で退ける余地は十分にあった、ということになるわけで*1、そもそも、最高裁の判断から何かの示唆を得ようと期待していたわれわれの方が愚かだった、ということにもなりそうだ。

個人的には、訴訟法の理屈はともかく、我が国で初めての「補償金の支払義務」をめぐるエポックメイキングな訴訟だったのだから、最高裁に何らかの判断を示してほしかったような気もするのだけれど、本件が係属していたのが、「ロクラク2」事件で、射程が不分明な判例規範を打ち立て、さらに若干不可解な補足意見まで付して、未だに批判を浴び続けている第一小法廷だったことを考えると、これでよかった、というべきなのかもしれない。


なお、SARVHと東芝(というか、JEITA)のガチンコの喧嘩が世の中に知られるようになったのは、ちょうど3年くらい前のことで、それ以来、巨額の賠償請求を突き付けられた東芝の関係者の多くが、本件の帰趨をあれこれ考えて、気の休まらない日々を過ごしていたことだろうから、弁論期日も、判決期日も指定されることなく、あっさりと今回カタが付いたことにより、胸をなでおろした人も決して少なくなかったことだろう。

もちろん、裁判所が高裁までの判決で示したのは、あくまで「過去」の分に係る問題への判断に過ぎないわけで、これからどうやってメーカー・権利者間で折り合いをつけていくか、という難問が目の前に待ち構えているのは明らかであるだけに、勝訴したメーカーの側としても、安穏とするわけにはいかないのだと思うのだけれど、せめて年内一杯くらいは、勝利の余韻に浸っていただきたいなぁ・・・と老婆心ながら思った次第である。

*1:原告としても、法104条の5の解釈をこれ以上ゴネゴネと掘り下げて「訓示規定に過ぎない」という最悪の判断を導くくらいなら、ひっくり返すことにメリットがある「特定機器該当性」の問題に絞って、一か八か、職権判断にかけよう、という誘惑にかられたとしても不思議ではない。実際の書面を見たわけではないので、あくまで憶測に過ぎないのだが・・・。

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