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なぜ規制委は大飯の活断層を認定しないのか

 関西電力大飯原発の重要施設の下に活断層が存在する疑いが指摘されている問題で、現地調査を行った原子力規制委員会の調査団が今週4日と7日の二度にわたり調査結果を議論したが、委員間で意見が分かれ結論を得られなかった。議論は継続することが報じられている。

 調査にあたった委員の一人である東洋大学の渡辺満久教授は、委員の間に「活断層」と「地滑り」の意見対立があり、その対立が解けなかったために継続審議となったとする報道を否定する。調査に当たった委員の間で「地滑りの可能性」について意見の相違があったことは事実だが、「活断層であることが否定できない」ことについては、明確な合意があったと言うのだ。

 これも報道されているように、渡辺氏らが活断層であると主張したのに対し、岡田篤正・立命館大教授が「地滑りである可能性が否定できない」と主張したのは事実だ。しかし、渡辺氏は、岡田氏は活断層である可能性を否定したわけではなく、地滑りの可能性もあることを主張しているだけで、「活断層の疑いがある場合は活断層を想定する」と定めている「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」(2010年12月16日策定)が求めている「活断層の疑いが否定できない」という点では、委員全員が一致していると主張する。

 その上で渡辺氏は、原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理が、「今の段階で活断層か地滑りか、絞ることはできなかった」との理由から調査を継続するとしたことに対し、深い不信感を募らせる。そもそも今回調査団に求められていることは、大飯原発の非常電源用給水路の下を通る「ずれ」が、活断層なのか地滑りなのかを、学術的に「断定」と言い切れるレベルまで究明することではない、と考えているからだ。

 渡辺氏は「活断層か地滑りかを断定したければ、もっと原子炉に近いところを掘るしかない。そのためには、原発を一度止める必要がある。なぜ、それをせずに調査の継続という話になるのか」と、島崎委員長代理の決定を訝る。

 確かに学術調査であれば、何年をかけてでも、結論が出るまで調べ尽くしたらいいだろう。しかし、事は原発の安全性に関わる問題だ。地震が起きてから「ああ、やっぱり活断層だったのね」では遅いのだ。だからこそ、「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」は、「活断層であることが否定できない場合は、活断層であることを想定する」と明確に定められているのではないか。今回の調査団の5人の中で、地滑りの可能性が残っていることを指摘した委員はいたが、「活断層の疑いを否定した委員は一人もいなかった」(渡辺氏)ことが重要なのだ。

 同手引きが、活断層の上にSクラス(最重要施設)を建ててはいけないことを定めていることから、もし活断層が想定されれば即原発を停止し、廃炉にするか、もしくはSクラス施設を活断層の上を通らないような形に仕様変更をすることを余儀なくされる。渡辺氏は原子炉に近いところを掘れば、更に新しい活断層が見つかる可能性もあることを指摘している。

 今回の委員会の不可解な「調査継続」の決定は、何としてもそのような事態を避けたい原子力村の意向を受けた方便だったとの疑いを拭えない。そもそも大飯原発は今夏、猛暑となった場合、関西地方で電力需要が逼迫する可能性があるとの理由から、暫定的な安全審査のみで見切り発車したままの状態にある。活断層か地滑りかなどいくら議論を続けても、明確な結論など出るはずがない。子供だましの目くらましはほどほどにして、電力需給に不安がない今、手引きに沿って大飯原発を止め、後顧に憂いを残さないようなしっかりとした調査を実施すべきではないだろうか。

 渡辺氏とジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、原子力規制委員会の不可解な決定を議論した。

プロフィール
渡辺 満久(わたなべ みつひさ)

東洋大学社会学部教授
1956年新潟県生まれ。80年東京大学理学部卒業。90年東京大学大学院理学系研究科地理学専攻博士課程修了。理学博士。東洋大学社会学部助教授などを経て2002年より現職。共著に『活断層地形判読』、『活断層詳細デジタルマップ』など。

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