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ネット上に軋轢を生んだ「不滅の言葉」 ——Twitterにフリートが導入された本当の理由

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BLOGOS編集部

24時間で消える「時間とともに去る言葉」をTwitterが導入

発信後24時間で削除される新機能「フリート」をツイッターが導入するという報せは、大きな話題となった。

Twitter Japanは11月11日、投稿が24時間で消える新機能“Fleet(フリート)”の導入をモバイルアプリ上で開始しました。ユーザーは本日以降、順次利用可能になります。(中略)

Twitterがユーザーに聞き取り調査をしたところ、発信者としてフォロワーが読みたい内容を意識してしまい、「渋谷なう」のように気軽にツイートできなくなっている、という意見があったとのこと。Twitter初心者が気軽に投稿できるだけでなく、日ごろは趣味に関する投稿をしているところに、別の話題や日常に関するツイートは「TL(タイムライン)を汚してしまう」と避けがちになるヘビーユーザーが投稿しやすくなる効果もありそうです。

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ガジェット通信『「TLを汚さない」「“渋谷なう”と気軽に言える」 Twitter Japanが24時間で投稿が消える新機能“Fleet”を導入開始』(2020年11月11日)より引用
https://getnews.jp/archives/2804645

一見すれば、さながらインスタグラムの「ストーリー」機能に酷似した機能であるように見える。

時限式で消える言葉を綴るのは「いま感じていることをつぶやこう」という、いまとなってはすっかり形骸化したツイッターの「ツイート」の本来のコンセプトにより近いようにも見える。当初は突然の新機能導入に戸惑いの声が多かったものの、次第に多くの人が「フリート」することに慣れはじめ、新しいコミュニケーション方法としておおむね好評のようだ。

しかしながら「フリート機能」の導入の本当の狙いを理解している人はほとんどいない。もちろん「TLを汚さない」とか「~~なう」と気軽につぶやけるようにするため――などというのは、建前上の理由にすぎない。本当の導入背景は別にある。

時計の針を戻し、「言葉」をかつての姿に

じつは「フリート」機能は、急に導入が決定された機能ではなかった。少なくとも2020年3月にはツイッターCEOであるジャック・ドーシーによって導入が発表されていた。その導入の経緯についても、以前に筆者はBLOGOSで記事にしたことがある。

24時間で消滅する投稿機能「フリート」をツイッター社が導入した本当の理由は、ユーザビリティーの改善でもなければインスタグラムのパクリでもない。「言葉の時計の針を戻すため」だ。

Getty Images

ジャック・ドーシーは、時限式で消滅する投稿を、いま現在は一応「フリート」に限定しているが、本心を言えば「ツイート」もすべて時限式で消滅するようにしたいとさえ考えているだろう。「フリート」は、現在のソーシャルネットワーク上に飛び交う「言葉」を、人間がかつて使っていた「言葉」と同じものに戻すための試みなのである。

いつでも参照できる「不滅の言葉」

インターネットやSNSのような情報ネットワーク技術の目覚ましい発展により、人間の言葉はそれに分かちがたく結びついていた「淘汰」の宿命から解放された。すなわち、人間の言葉が物理的な劣化や風化の影響を受けなくなることを可能にした。

ネット空間では、そこに公開された文字は少なくともデータが(サーバーだけでなくあらゆる個人の端末のハードディスクやメモリからも)完全に抹消されないかぎり、半永久的に存在が失われることはない。古代の人びとが書物や石板に刻み込んだ文字は、永続することを願われながらも、しかし風雨によって劣化損耗してしまっていた。だが、サイバーネットワーク上の言葉は、そのような物理的風化作用の及ばない場所に存在している。

私たちがインターネットやSNS上に綴る言葉は、これまで私たちが使っていた言葉と同一のものではない。いうなれば「永続性を持つ言葉」なのである。

「永続性を持つ言葉」は、同時にその言葉が持つ影響にも永続性を有している。たとえば、ある人がネットワーク上で語った言葉は、保存されているかぎりにおいて、10年経っても20年経っても消滅せず、だれかにアクセスされたその瞬間に、彼がそれを書いた直後と変わらない鮮明度の情報を伝達し、読んだ者に影響することができる(あるいは、書いた彼が10年後にその発言によって社会的に糾弾されたり、仕事を失ったりするような悲劇のトリガーにもなりうる)。

インターネットやSNSでは、あらゆる言葉とその影響が永続性を持ちうる。もちろんそれは、見知らぬだれかを称賛したり共感したりする言葉だけではない。「敵」を罵った言葉、「愚者」を嘲笑した言葉、「悪」を糾弾する言葉、「絶望」を吐露した言葉、「憎悪」を凝縮した言葉――それらもまた、原則として無劣化・無淘汰のまま残り続ける。

その言葉にURLが付与されていれば、人間社会にデータとして蓄積され、アーカイブされる。たとえ私たちがこの世を去ってもなお、データがあればいつでも参照されうる。参照された言葉は、たとえ何年も前に綴られた言葉であったとしても関係ない。参照されたその瞬間から蘇る。

インターネットやSNSの飛躍的な発展は、たしかに見知らぬだれかが友情を結び合い、連帯することにも大きく貢献した。私たちは、彼らの「つながり」が築かれていく様子、心温まる足跡をいつでも追体験することができる。だがそれと同時に、見知らぬだれかの争いや憎しみの記録、訣別と分断の経緯についてもまったく同じことができる。

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