怖いなと思ったら、この数字自体は別段、怖さを感じるものではありませんでした。
「ストーカー規制法の禁止命令、3年で8倍に 法改正で厳罰の流れ」(産経新聞2020年11月22日)そもそもの相談件数が増えているということであれば、それは怖ろしい社会になったんだと思うのですが(但し、この種の事件では必ずかなりの暗数があります)、徐々に減っていることは良いことです。警察という公的機関が介入しないと、自分がやっていることが理解できな人は未だに一定数いるようですが、社会の中にストーカーとは何ぞやという理解が浸透していったということだと思います。
「改正法が29年に施行され、違反すると懲役刑を含む罰則がある禁止命令を警告なしに出せるようになり、厳罰化の流れが加速したことが要因とみられる。一方、相談や摘発の件数は減少に転じていることも判明した。」
時代によって追い掛ける側の意識も変化していて、昔の映画を見ていると、今だったらこの男のやっていることアウトだよね、という場面に行き当たることもあります。しかし、その当時は、立派な「恋愛感情」として成立していました。
このようにストーカー側の「理解」が未だに追いついていないのが現代社会です。自分のこととなると適正な判断ができなくなってしまっているのかもしれません。
相手がノーと言えばそれでお仕舞いということですが、それを理解するためにかなり時間が掛かるようなのです。あるいは警察などの第三者から言われないとわからないということです。
「交際中のトラブルで殺人? この「トラブル」って何? ストーカーは精神疾患として治療の対象とすべき」
怖いのは、この禁止命令に違反する人たちの存在です。警察の介入によって8割方ストーカー行為を止めます。我に返るのか、ようやくストーカーの意味を認識したのか、とにかく止めることができた人はまだましです。

2020年10月25日撮影
しかしそのストーカー行為を止めた人の中でも病的症状がありながら治療を拒否する人たちの存在は怖いものがあります。
「ストーカー加害者、6割超が治療拒否 受診率は25%」(朝日新聞2017年2月14日)
「加害者が治療を拒否したのは179件で全体の60%超。「自分は病気でなく、必要ない」といった理由が多く、経済的な事情を挙げた人もいる。」
「加害者更生 ストーカー治療2割 大半が受診拒否」(毎日新聞2018年5月21日)
「警告を受けた加害者の9割程度はストーカー行為をやめるが、1割程度は繰り返し、中には警告より重い禁止命令を受けたり、逮捕されたりするケースもある。こうした「やめられない」加害者は精神疾患を抱えていることも多く、全国の警察は16年4月から医療機関での治療を促す取り組みを始めた。」
「ストーカー治療の要請最多 警察庁、19年は824人」(日経新聞2020年11月4日)怖ろしい結果です。病的な自覚がないほど怖ろしいものはありません。
「警察庁によると、働き掛けた加害者は16年度、405人。カウントする期間を変更した18年は750人、19年は824人まで増えた。18年は全47都道府県警が治療を働き掛けている。
ただ、受診を拒否した人は19年に635人と、824人の7割強を占めた。理由は費用面のほか「自分には必要ない」「既に治療している」とする回答があった。」
また禁止命令など全く眼中にない人たち、ストーカー禁止命令違反で有罪判決を受けながらなお繰り返す人たち。
「女性殴り車ではねたストーカー男、執行猶予中にストーカー…検察、懲役2年を求刑 弁護側は無罪を主張」(埼玉新聞2020年11月21日)こういう人たちによって被害者の日常生活の平穏は壊されています。
誰もが思います。殺されるんじゃないかと。
その相手の(身勝手な)気持ちを受け入れないと殺される…
元交際相手から逃げている人はなおさらです。
そんなニュースばかりを目にしていれば誰もが不安に思って当然です。ストーカーの怖さはここにあります。しつこくて迷惑というだけでは済まない問題があります。
自分の事案は、殺人までは行き着かない
などと自信をもって判断できる場合であれば良いですが(その判断も間違うことも少なくなく、警察から避難を要請されてもなかなか避難に応じない方もいますが、警察が避難を求める事案なんですから、是非、従ってください。警察の避難要請がありながら事件となってしまったものは本当に痛ましいです。心痛いです。)、もしかしたらと誰もが不安に思うはずです。
ストーカー規制では強制的に治療を受けさせることができないことに最大の欠陥があります。
罰則を強化しても効果のない人は必ず出てきます。5年、10年刑務所に入れたとしても、粘着質で報復のためにやってくる人は必ず出てきます。もともと禁止命令にも従えない人ですから、刑務所に入ったくらいでは効果は期待できません。
そのため、自傷他害の危険がある場合の処置入院をさせることができる場合を制度化する必要があります。
そうでなければ被害者は安心して生活ができません。
「ストーカー被害の深刻さ 一生涯つきまとわれるということ」
性犯罪者にGPSをつけろ、などという議論がありますが、私はそもそもこれで何が防げるのかなと疑問に思うところがありますが、ストーカー犯罪者にこそ、GPS装着の意味があると思います。
さて、それが果たして可能なのかどうか。