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ハーバードで学んだ真実「日本人の読み聞かせでは子どもの思考力は育たない」

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効果的な読み聞かせをするには、どうすればいいのか。大阪女学院大学・短期大学の加藤映子学長は、「問いかけをして感想を引き出したほうがいい。お行儀よく黙って聞くだけだと、自己主張できない子に育つ」という——。

※本稿は、加藤映子『思考力・読解力・伝える力が伸びる ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

孫と一緒に絵本を読む祖母
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■日米で違う「読み聞かせ」のやり方

アメリカの親がしている読み聞かせの「やり方」から学ぶべきことはたくさんあります。具体的に読み聞かせのやり方のどこがどう違うのでしょうか。

結論を先に言うと、読み聞かせをするとき、日本の親子はあまりやりとりをしません。

親が子に問いかけ、子どもがそれに答える(あるいはその逆)というやりとりがアメリカの親子に比べて少ない。基本的に、親の話を子どもが黙って聞いている、という読み聞かせなのです。

私がこのことに気づいたのは、ハーバードでの研究を通じてでした。

私がはじめて読み聞かせの研究にかかわったのは、修士課程のときのことです。

「Language and Culture(言語と文化)」というクラスをとっていたとき、そのクラスのTF(ティーチング・フェロー。教員をサポートして、学生の指導にあたる博士課程の大学院生)に研究の手伝いを頼まれました。

彼女は、博士論文の前に提出する論文のテーマとして、日本人親子の読み聞かせの研究を行おうとしていました。その調査を手伝ってほしいというのです。

このときは、夏休みを利用してボストンに住む日本人の母子2組を訪問して、読み聞かせの様子をレコーディングさせてもらいました。

その後、4年間の留学を終えて帰国した私は、日本でも読み聞かせについての調査を続けました。実際に家庭で行われている読み聞かせの様子を取材させてもらい、データを収集していったのです。

こうして調査を続けていくなかで気づいたことが、

「日本人の親子は、読み聞かせをするときにやりとりをしない」

ということでした。

■日本の親子は読み聞かせのときにやりとりをしない

親は絵本の文章をひたすら読んでいく。子どもはそれを黙って聞いている。どちらも何かを問いかけたり、口を挟んだりといったことがほとんどないのです。

その後、再度アメリカに留学し、ハーバードの博士課程に入ったときには、この調査をもとにして論文を書きました。

「日本の親子は読み聞かせのときにやりとりをしない」ということを、データをもとにして検証したのです。

この論文を見た指導教授からは、こんなアドバイスをもらいました。

「日本の親子は読み聞かせのときに話さない、やりとりをしないことはわかった。では、字のない絵本を使ったらどうなるだろう?」

字のない絵本といえば、ディック・ブルーナの『じのないえほん』(石井桃子訳・福音館書店)が有名ですが、文章のない絵本はほかにもたくさんあります。

カナダのウォータールー大学の研究者が行った調査によると、「文字のない絵本」と「文字のある絵本」では、前者のほうが親子間でより活発なやりとりがなされていたと報告しています。

たしかに、そういう絵本であれば、親は何かを自分で考えて話さないわけにはいきません。すると、それに反応して子どもも何かを話す、というのです。

■文字のない絵本でもやりとりはなかった

さっそく私は、アレクサンドラ・デイの、『グッド・ドッグ・カール(Good Dog, Carl)』(Little Simon)という絵本を素材にして調査をはじめました。

この絵本は、お母さんが買い物に出かけている間、犬のカールが赤ちゃんを見ているように頼まれる話です。お母さんの化粧品をいたずらしたり、水槽を泳いだりする元気のいい赤ちゃんを、カールが一生懸命お世話する様子が絵だけで愉快に描かれています。

では、文字が書かれていない『グッド・ドッグ・カール』で読み聞かせをしたら、日本の親子の読み聞かせは変化したのでしょうか。

結果は同じでした。

ほとんどの親は、絵に描かれた状況をことばで説明し、話を進めていくだけでした。子どもも同様で、親が進めていく話を静かに聞いているだけです。つまり、字のない絵本を使っても、やはり日本の親子の読み聞かせでは、やりとりは行われなかったのです。

あくまでも、親はお話を読む、子どもは静かにそれを聞く、というのが日本での読み聞かせであることがわかりました。

教授からは、研究についてもうひとつ助言をもらっていました。「日米の読み聞かせを比較してみなさい」ということです。

そこで、今度は日米の親子を対象にして、同じ絵本の読み聞かせのやり方がどう違うのかを調べてみることにしました。

幸いにも、アメリカの親子については、すでに別の研究者が読み聞かせの様子を記録したデータがありました。その調査で使われたのと同じ絵本を題材にして、日本の親子についても調べれば比較研究ができます。

このときに素材にしたのが、フランク・アッシュの『クマくんのやくそく』(山本文生訳・評論社)です。

■アメリカの子どもは、とにかくよくしゃべる

『クマくんのやくそく』は、空を飛びたいクマくんと、大きくなりたい小鳥が、おたがいの願い事をかなえるために工夫したり努力したりする、という筋なのですが、子どもにとってはなかなかややこしい話が出てきます。

たとえば、小鳥の「大きくなりたい」という願い事をかなえるために、クマくんは小さなカボチャを買ってきます。カボチャの表面に小鳥の絵を彫ると、カボチャが成長するにしたがって小鳥の絵も大きくなっていきます。クマくんは、こうやって小鳥を大きくしてあげようとするわけです。

一方、小鳥はというと、「空を飛びたい」というクマくんの願い事をかなえるために、凧を使うことを思いつきます。凧にクマくんの絵を描いて飛ばせば、クマくんが空を飛んだことになるだろうというわけです。

こういった理屈は、子どもにはなかなか理解が難しいと思います。

どうして、カボチャが大きくなると小鳥が大きくなるのか? どうして、凧が空を飛んだら、クマくんが空を飛んだことになるのか? 疑問に感じるのが普通です。

これは、日本の子どもであろうとアメリカの子どもであろうと変わらないはずです。

けれども、読み聞かせをされているときの日米の子どもの反応は、あまりにも違うことに驚かされました。

アメリカの子どもは、とにかくよくしゃべります。

■日本の子どもはお行儀よく耳を傾けているだけ

たとえば、前述のように、子どもにとってわかりにくいことがあれば「どうしてそうなるの?」と読み手である親に質問します。

「どうしてカボチャが大きくなると小鳥が大きくなるの?」
「どうして凧が空を飛んだら、クマくんが空を飛んだことになるの?」

子どもが質問すれば、それに応答する親の発話数も当然、多くなります。アメリカの親子の読み聞かせは、とにかく親子間のやりとりを盛んにするのです。

娘に読み聞かせする母親
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fotostorm

一方、日本の親子の読み聞かせは、これまで私が調べてきたとおりでした。

理解が難しいであろう『クマくんのやくそく』でも、とくに子どもからの質問が増えるということはありませんでしたし、朗読以外の親の発話も、やはり少ない。

ママ、パパはお話を読んでいく。子どもは静かに聞く、という読み聞かせだったのです。

日米の読み聞かせには、このような明らかな違いがありました。

うるさいくらいにしゃべりながら読み聞かせを受けるアメリカの子どもと、読み聞かせの最中は静かにお行儀よく耳を傾けている日本の子ども。

その違いが、私のなかで、日本の学校の静かな授業と、アメリカで出合った、常に自分なりの思考、発言を求められる教育とのギャップに重なりました。

絵本の読み聞かせ方の違いは、両国の教育のあり方の違いにつながっている、という視点が生まれたのです。

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