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東京と地方の「可能性の認識差」をなくしたい。中高生にプログラミング教育を届けるライフイズテック讃井さん

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プログラミングスキルの向上は目的ではなく、起業家的な人材を育てる手段

――ライフイズテックのプログラムの一番の特徴は何でしょうか?

讃井:僕らが最も大事にしていることは「中高生一人ひとりの可能性を一人でも多く最大限伸ばす」ということです。例えば、プログラミング市場が大きくなりそうだとか、学校の指導要領がこう変わるから事業が大きくなりそうだといった動機で事業をしているわけではありません。

どこの地域でも、中高生が学びたいことを学べて、つくりたいものをつくれること。そして、その学んだスキルを実際に社会課題解決のために活かしていける人材を育てていくことが大切だと考えています。学校や教育委員会とはプログラミング教育のための教材でのお取引が多いですが、自治体で産業振興系の部局と組んでやる際には、地域に新たなIT事業を生み出すとか、地域課題をITで解決するような、起業型人材の育成を目的に取り組みをご一緒しています。

各自治体で起業支援の取り組みは様々にあります。しかし、飲食店など昔からある業態の新規創業が中心で、ITを使った創業は首都圏を除く地域ではまだまだ少ないのが実状です。

そのために事業化に至るまでの育成のステップを準備しています。最初のステップは「自分ごと化」です。プログラミングと自分って距離があるわけです。初心者の自分ではできないとか、特別IT起業家でないとできないとか。でもそんなことはありません。体験会に来ると午前中のたった3時間でも、簡単なアプリが作れて「自分でもできる!」「楽しい!」という気持ちになって、「もっとやりたい」と思うようになる。それが「自分ごと化」です。

次は「スキル獲得」なのですが、我々は毎年、全国の大学生300人程度に対して新規のメンター研修を実施していて、そのメンターが各地域の人材のスキルアップに向けたサポートを細やかに行います。その中には中高生向けITキャンプのOBOGも多数いて、もともとの参加者が今度は教える側になって戻ってくるという人材の還流が起こっています。

そして、次のポイントは「プロダクト化」ですが、プログラミング言語の習得がゴールではなく、小さくてもプロダクトをつくることを大切にしています。例えば、アプリやWEBサイトを実際に作成して、リリースして、ユーザーの反応をもらうところまでを目指します。中高生向けのスクール(週一回など定期的に学ぶことができる講座)では、半年以上通った子どもたちのうち85%の子たちがアプリやWEBサイトをリリースしています。これはライフイズテックならではの特長です。単なる知識の習得ではなく、実際にプロダクトを作り、使ってもらい、自分が思い入れのある課題を解決していくという学習体験を前提にやっているところが、他の教育コミュニティと最も違う点ではないでしょうか。

――具体的にはどのような人材が育っているのでしょう?

讃井:最近、メディアでも取り上げられたのは、北海道の加藤君という高校生ですが、中学時代に1日体験会に参加してプログラミングの面白さを体感してくれて、その後東京のITキャンプにも参加してくれました。その後、独自で更に研鑽を積み、国が提供しているコロナの接触確認アプリ「cocoa」がリリースされる数ヶ月前の2020年4月の時点で、コロナの感染経路をスマホでたどれるアプリを高校生ながら自作してリリースしたことで、大きなニュースになりました。

そこまで行かなくても、福岡県の高校生で、高1の時は初心者で親に言われて嫌々ながら参加したものの、その一回が楽しくてプログラミングを学ぶことが「自分ごと化」して、初めて「プロダクト化」したアプリが「アプリ甲子園」というコンテストで5位に入賞。それで自信をつけて次の世代に教える仕事もしたいと大学生になったらすぐに、中高生に教えるメンターとして帰ってきてくれた子がいます。彼は大学4年の時には地域のIT企業でインターンし、新卒で東京の有名なIT企業に就職したのですが、今でも福岡に関するプロジェクトに継続的に関わってくれています。こうしたいわゆる「関係人口」として継続的な関わりを持っている事例も沢山ありますよ。

ITの教材屋ではなく、一緒に「地域の人材育成ビジョン」を作るパートナー

――実際にこうした人材育成プログラムを、地域に根付かせるためのポイントは何でしょうか?

讃井:単発でITキャンプをやるだけでしたら、我々がクオリティの担保もできますし、必ず成功させる自信はあります。ただ、継続したエコシステムをつくる上では、地域側の継続的なコミットメントや、地元の大学生や行政などがつながって、コミュニティ化していくことが欠かせません。メンターとなる地元の大学生に研修をするだけでなく、担当する役場職員や教育関係者にも顔を出してもらって仲良くなる。懇親会などを通じて、大学生メンターと地域の自治体関係者・教育関係者がつながる「地域でのコミュニティづくり」が非常に重視だと考えています。

また、その地域でどのような子どもたちを育てたいのか、そのためにどんな教育をするのかというビジョンが一番大事です。我々は学校教育と社会教育の垣根を超えて、地域の教育ビジョンの策定にも関わらせていただいています。つまり、単なるプログラミングの教材屋ではないのです。

例えば、とある自治体で廃校が出ます。そこを20世紀型教育の実験校にしていきたいというニーズがあった時に、そういう学校はどうやって作って行ったらいいのか、理念を共有してカリキュラムを作って、どういう先生をそろえて……ただ一校だけ作ってもしょうがないから、4〜5年かけてどう進めていくかといったことを一緒に考えます。新しい学校や新しい学びを積極的に作っていこうとされている意志ある自治体の皆さんと深くお付き合いしたいですね。

都会と地方にある「可能性の認識差」をなくす

――いま感じている課題、こんな機会があればいいなどあれば教えてください。

讃井:各地域で求められる「IT×課題解決」のスキルとして、求められるレベルはどんどんあがっています。どんな地域でも「農業×IT」や「医療☓IT」など、IT専門の企業に限らず、どの分野でもITで問題解決することが必要になってきている一方、高校までで学べる「IT×課題解決」のスキルは時間の制限もあってかなり限定的で、最低限のことしかできていません。どんどん広がるギャップをどうやって埋めるのかは新しい社会的な課題といえます。

教育の分野では、今回のコロナを機会に、各自治体もオンライン教育の必要性を強く感じていて、日本中でものすごい変化がおこっています。そのような中、私が様々な地方にIT教育の機会を届けることにこだわっているのは、「可能性の認識差」をなくしたいと思っているからです。

ある地方の街でITキャンプの体験会を行った際、終わった時に保護者の方から「プログラミングに関して、東京の子ども達とこの地域の子たちと何がいますか?」と聞かれました。東京の子の方がずっと進んでいるのだろうという前提での質問です。

しかし実際は、ITキャンプで届けている教育コンテンツの難易度に差はないし、出来上がった作品のクオリティにも大きな違いはない。むしろ地方の子たちの方が集中して取り組んでくれて、同じ時間なら高いクオリティの作品を生み出すこともしばしばです。また、当然のことですが、子どもが生まれながらに持っている才能という観点でも地域差はありません。ただ、1点違いがあるとすると「可能性の認識差」があると考えています。

東京の子どもたちはまわりにプログラミングスクールが当たり前のようにたくさんあって、通っている友達がいたり、少し上の先輩がアプリを自分で作ってリリースしていることを耳にしていたりします。一方で、多くの地方の子たちは、中高生の時にプログラミングを学べる場所は近くにないし、アプリを作ったり、リリースするなんて考えもしないままになってしまう。

これって20年近く前の私の高校生時代と同じで、地方の子はゲームアプリを消費者として遊ぶことはあっても、自らが生産者として作れるものだと認識できる機会がないのです。そうした生産者としての選択肢を認識していないと、アプリに関してネットで調べる際にも、検索キーワードは「ゲームアプリ、作り方」などではなく、「ゲームアプリ、攻略法」などに留まってしまいます。中高生時代に自分が何をどれだけできるか、という認識の違いに大きな差がついています。

まずは年1回でもいいので、地方でもITキャンプのような機会を開催できれば、中高生はみんな「今の時代は中高生でもアプリを作れる時代なんだ」と認識し、地域関係なく中高生たちの可能性を最大化できます。

一方で、我々の会社もサービスも地方ではまだまだ名前を知られていません。教育の課題、子どもたちの可能性の課題の重要性をこれからも発信していくと同時に、全国の意志ある自治体さんとどんどん協働していきたいです。

――讃井さん、本日はありがとうございました。

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