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東京と地方の「可能性の認識差」をなくしたい。中高生にプログラミング教育を届けるライフイズテック讃井さん

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新型コロナウイルスは、私たちに新しい働き方・生活様式への転換を迫るだけでなく、人々の意識や世界観も変えつつあります。先の見通せない激変する環境で、経営者たちはどんな思いでこの状況を見つめているのでしょうか。

そこで、意外と語られていない「経営者のあたまのなか」を解剖してみようと立ち上がった本企画。第18回の今回は、ライフイズテック株式会社取締役の讃井康智(さぬい・やすとも)さんにお話を聞きました。中高生向けのITキャンプを中心に、次世代の人材育成に取り組まれてきた讃井さんの「あたまのなか」の一端をお届けします。

讃井康智(さぬい・やすとも)

ライフイズテック 取締役 最高教育戦略責任者

東京大学教育学部卒業後、組織・人事系コンサルティングのリンクアンドモチベーションで勤務後、東京大学大学院教育学研究科へ。博士課程まで在籍し、学習科学の世界的権威、故三宅なほみ東大名誉教授に師事。東京大学CoREF 元リサーチアシスタントとして全国の学校・教委で協調的・創造的な学びを支援。

2010年7月に中高生向けITキャンプ「ライフイズテック」を設立。現在、取締役として学校・自治体などへの公共部門事業を統括。経産省「未来の教室」とEdTech研究会 専門委員、長野県 WWLコンソーシアム 運営指導委員、金沢市プログラミング活用人材育成検討委員会 委員などを歴任。NewsPicks プロピッカー(教育領域)も務める。

コロナ禍でも人材を育成するエコシステム(生態系)を地域に根付かせたい

――まずは、御社の事業内容を教えてください。

讃井さん(以下、讃井):私自身はずっと教育畑のキャリアで、今年で10周年を迎えるライフイズテック株式会社の創業メンバーのひとりです。

弊社の事業の一つでは、中高生向けのITキャンプ(短期集中型のプログラミング講座)を実施しており、これまでに約5万人に参加してもらっていて、これは世界でも2番目の参加規模です。

二つ目は個人や学校向けにプログラミングの学習教材を提供しています。ディズニーと連携したコンテンツ「テクノロジー魔法学校」はプログラミングを心折れずに学び続けることを大切にした教材で、中高生だけでなく、大学生や社会人で初めてプログラミングを学ぶ方にも数多く使っていただきました。

100を超える自治体で導入され、学校では1000校以上で使っていただいています。中学や高校の先生が、今までより高度なプログラミングをそのまま授業で教えられる教材で、費用は一人当たり年間2000円の買い切りです。そのほか、企業や自治体と連携したIT人材育成事業も展開しています。

私は福岡県の出身で、高校時代にゲームのプログラミングやメディアアートをやりたいと考えていたのですが、当時は福岡で中高生がそういうことを学べる環境はまったくなかった。大学に行って、就職してからでないと無理だよね、高校生では何もできない、とひとりで悶々とした高校時代を過ごしました。

そして、それから10年ほど経った2010年当時は、iPhoneが発売されて3年くらいたっておりITの重要性は社会で広く認識されていましたが、それでも中高生がITを学ぶ場はほとんどありませんでした。そうした社会環境をなんとかしたいと考えたのが、2010年のライフイズテック創業の動機です。特に地方にいる中高生へのサービス提供にはこだわりを持っていて、最初はサービス提供をスタートして間もない2011年12月に地元の福岡で体験会を開催できました。

――自治体での導入事例について、少し詳しく教えてください。

讃井:高知県や福岡県飯塚市などとは長く取り組みをご一緒していますが、我々が出張して中高生にITキャンプや体験会を届けるだけではなく、地域で「教育のエコシステム(生態系)」を育てることをゴールにしています。具体的には、まず地域の社会人や先生、大学生に研修を行い、彼らがメンターとして地域の子どもたちに教える役割を担えるよう養成します。2期目からはその地域のメンターが中心になって研修を行うことで、地域での教育プログラムの持続性を確保しています。

また、その地域でのITキャンプや体験会に参加した中高生は、学んで楽しかった思いをもとに、「今度は自分も教えてみたい」と考えるようになります。3年くらい経つと、過去のITキャンプに参加した中高生が大学生になり、メンターとして教える側になることが増えていきます。そうした元参加者のメンターたちも下の世代に教えることで更にITスキルを高め、それを駆使して地域の課題解決にまでつながるような事例も各地で生まれてきました。

――単発のイベントではなく地域に根付いていく仕組みを構築するわけですね。地域の課題解決にまでつなげているというのは素晴らしい。

讃井:私たちが特に重視しているのは、単にインプットするだけではなく、課題を設定してアウトプットしていくところまで持っていくことです。例えば、あまり知られていないけど実は高品質なじゃがいものECサイトを立ち上げたり、地域の観光名所の課題を解決するアプリや映像を作成したり。そういったアウトプットまで持っていくことで、IT・プログラミング教育を受けた中高生が、ITで地域のリアルな課題を解決する当事者にまで育つことを狙っています。

――IT教育を推進していくことが、地域に新しい未来を開いていくことにつながるという信念をもってやっていらっしゃるのですね。今回のコロナの影響はありましたか?

讃井:良くも悪くも大きな変化がありました。一つ目の変化は、これまで春休みや夏休みの対面型でやっていたITキャンプがほとんど開催できなくなったこと。対面での開催自体は禁止されていないのですが、中高生の夏休みの日程が休校の影響で短縮されたり、施設のルールで三密を避けるために参加者数を少なくせざるを得ないといった問題もありました。

しかし悪い事ばかりではなく、これまでほとんどやっていなかったオンラインによるITキャンプを実施したところ、毎回多くの中高生が参加ししっかりと作品を作っていってくれて、オンラインでもしっかりとした学びを提供できる手ごたえを感じることが出来ました。

二つ目はもともとオンラインで配信していた教材への反響がものすごく増えたこと。外に遊びに行けなくて、学校にも行けなくなった子どもたちに新しい学びや楽しさを提供したいという思いから、最初にコロナで学校が休校になった3〜4月に「テクノロジア魔法学校」を無料でご提供したんです。この短期間に一万人以上に使っていただけました。

また、学校向けオンライン教材である「ライフイズテックレッスン」も、パソコン1人1台政策である※GIGAスクール構想など国による後押しもあり、1年で一気に導入検討が進みました。現在、中学・高校1000校、13万人以上が私達の教材で学んでくれており、自分たちにとっても驚くべき広がり方につながりました。

※GIGAスクール構想:https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm

三つ目は働き方についてです。もともとテレワークは積極的に進めていた会社でしたが、今回のコロナを機に、各地の教育委員会や学校とオンラインで打ち合わせをするのが当たり前になりました。今までなら九州で打ち合わせするとなった時には、丸一日かけて1つのアポイントだけというのも普通でした。でもオンラインでやれば多い日だと1日に6〜7アポを入れられるようになり、様々な自治体との打ち合わせが7倍速で進んでいます。これまでは遠くて時間やコストの観点から、接点を作れなかった地域にも我々のコンテンツを届けられるようになったのは大きなメリットですね。

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