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「裕福な白人」が担う米国の主流メディア

2016年の米大統領選。米国の主流メディア(Main Stream Media=MSM)は、クリントン候補の圧勝を予想して大失敗しました。

今年の大統領選でも、同じように思い込み、上院選では民主党圧勝するBlue Waveを予測しました。結果は、Blue Waveは起きず、トランプ候補も善戦しました。

どうやら、黒人、ヒスパニック系はなべてアンチ・トランプのはずだーーというMSMの見立てが甘かったようです。

どうしてそうなるのか?パリ在住で、「Monday Note」というメルマガを長く発行、欧米のデジタルメディアを論じているFrederic Filloux氏が、教鞭を執るパリ政治学院のジャーナリズムスクールで学生たちと議論した内容を、最近のメルマガで紹介していました。

その中で、米国・メリーランド州から留学している学生の「編集局の人材の多様性を高めなければダメだ」とする意見を、最初に挙げていて、とても参考になったので、記録しておきます。

要するに、米国のMSMのジャーナリストは「金持ちの白人が大多数を占め、幹部もそうだから、見方が一面的になる」ということです。

どうして「金持ちの白人」なのか。MSMで職を得るには「無給で長期のサマーインターン」を経験し、高額な授業料のジャーナリズムスクール(Jスクール)経験者が有利なためのようです。

インターンに採用される学生も、IVYリーグなどの超エリート校に偏っています。AAJA(アジア系アメリカ人ジャーナリスト協会)の学生プログラムであるVoicesが調査した2018年のMSM7機関のサマーインターン採用者の内訳が明解です。

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左端の Ivy Plusは名門Ivyリーグの8校にスタンフォード、MITなど4校を加えたトップランク12校で、4年制大学の1%。次のEliteはノースウェスタン、ニューヨークなど65校で5%にあたります。合わせて6%です。

そこで、参加した149人の在籍する大学を見ると、Ivy Plus15%、Elite22%で3分の1以上に達してしまうのです。その次のランクHighly slectiveに分類されたカリフォルニア大バークレー校やフロリダなど99校の7%を加えると3分の2です。4年制大学の87%を占めるSelectiveやその他からの採用は35%に過ぎません。

この日本人留学生による記事では、Ivyリーグなどの名門校で学ぶ黒人は5% に満たないことのようですから、インターンも白人が圧倒的なのでしょう。

報道機関別に見ると、特にNYタイムズにこの傾向が強く、Ivy Plusと Eliteで50%、Highly Selectiveを加えると75%に達していました。

なお、調査したのはThe Wall Street Journal, The New York Times, The Washington Post, Los Angeles Times, NPR, Politico,Chicago Tribuneでしたが、ワシントン・ポストの担当者の言によると、毎年の応募者は1500人ほどで、採用は25~28人ということですから競争率は50倍以上という狭き門。しかし、ここでの指導者メンターとの出会いが就職、その後の昇進につながるようです。

一方、Jスクールの授業料は高騰しています。旅行業界の調査会社SkiftのオーナーRafat Ali氏がニューヨーク市立大学のジャーナリズム大学院幹部から得たデータによると、授業料の平均は5万4千ドルだと、Filloux氏が別の記事で紹介しています。その一覧表はこれ。

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日本人がよく留学すると思われるコロンビア大のJスクールは6万6千ドル。ボストン大、南カリフォルニア大では8万ドルを超えます。これに生活費がかかるわけですから、お金持ちの子弟が多いのは想定できます。勿論、ローンを背負えばなんとかなるかもしれませんが、米国の駆け出し新聞記者のサラリーは決して高くない。返済が大変です。

かくて、MSMには裕福な白人家庭の子弟が多数を占めるというわけです。2018年秋のコロンビア・ジャーナリズム・レビュー(CJR)によると、米国の人口の37%は非白人なのに、編集局の非白人スタッフは17%に止まり、管理職に至っては13%しかいないと嘆いています。 ニューヨーク市はマイノリティが多いにも拘らず、NYタイムズやWall Street Journalでは白人スタッフが共に81%だ、とも。

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管理職が少ないのは、「有色人種がMSMになんとか採用されても、サマーインターンなどで培かわれる指導者メンターとの関係がないので昇進できないのだ」と解説しています。そんなこんなで、非白人の動向に、MSMの目が行き届かないのは理の当然、というわけです。

ちなみに今年5月にCareercastが公表した職業ランキングで新聞記者は224職種のうち、ビリから3番目の222位でした。サラリーは43,490ドルと低く、ストレスのかかる仕事であり、業界の将来性も薄い、という悪条件が揃ってのことです。

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ただしWall Street Jurnalは平均給与は10万ドルを超えるなどMSMはそんなに薄給ではありません。が、それにしても高額なJスクールの授業料に見合った待遇とも思えません。(MBA取得者はいきなり20万ドルほどのサラリーを得るそうですから)

米国の主流ジャーナリズムがお金のことは心配しなくていい「裕福な白人」によって支えられているかに見えるのがいささか気がかりです。

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