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『どっちの料理ショー』今、復活する理由 テレビ局がウェブ動画で発揮する強みとは

●タレントよりも料理映像に振り切る

読売テレビ・日本テレビ系で97年4月~06年9月に放送されていた料理バラエティ番組『どっちの料理ショー』が、ウェブオリジナルの動画コンテンツとして復活した。

『帰ってきた! どっちの料理ショー.web』と題して、TVer、ytvMyDo、GYAOで19日から無料配信されているこの動画は、キリンビールとコラボレーションし、同社の「麒麟特製レモンサワー」にぴったりな“お取り寄せ品”が対決のテーマ。餃子とメンチカツによる胃袋を刺激する戦いが繰り広げられる。

なぜ、今このタイミングでの復活なのか。そして、テレビ各局が最近力を入れるデジタル戦略のモデルケースとなるのか。担当した読売テレビ営業局営業企画部専門部長の中村元信氏と、同局東京営業部兼ビジネス開発部の佐藤航氏に、話を聞いた――。

『帰ってきた!どっちの料理ショー.web』 (C)ytv

○■コロナ禍の飲食店支援を視野に

同局では、地上波放送の見逃しコンテンツなどをラインナップする公式の無料動画配信サービス「ytv MyDo!」を運営。この広告売上を伸ばしていくために、オリジナルコンテンツの開発が検討されていた。

そんな中でコロナのまん延が始まった頃、広告会社・博報堂グループの担当者から、「企業のPRになり、コロナの影響を受けている飲食店さんを支援でき、そして視聴者がおうちで楽しめるコンテンツとして、御社で昔やっていた『どっちの料理ショー』とコラボレーションできませんか?」という相談が舞い込んだ。

一方で、『どっちの料理ショー』について、「コンテンツとして非常に優れたものなので、形を変えてであれ、映像制作のノウハウは今後も生かせるなと思っていました」という考えを持っていたのは、同番組の立ち上げから最終回まで9年半、演出スタッフとして携わっていた中村氏。

それぞれの思惑が合致し、今回の企画が動き出すことになったのだ。

○■スポンサーが実験的試みに理解

『どっちの料理ショー』と言えば、おいしそうな2つの料理の映像を見せ、多数派を選んだスタジオのタレントのみが、その料理を食べることができるという構成。おなかを空かせながら「絶対食べたい!」「負けるのは嫌だ!」と追い込まれていく「ある種のドキュメント的な部分」(中村氏)も見どころの1つだった。

それに対し、今回の『帰ってきた! どっちの料理ショー.web』は、タレントが出演するスタジオパートがなく、木村匡也&関口伸という当時と変わらぬナレーションで、おいしそうな料理の映像・情報を見せることに特化した内容となっている。

佐藤氏は「ウェブで一気に見てもらえる“適尺感”を15分程度と考えた上で、レモンサワーをお題に飲食店さんが出てくるというコンセプトを生かすのであれば、タレントさんが出てくるよりも、おいしそうな情報性が2段、3段、4段と重ねられながら料理同士が対決する、というところを残すべきじゃないかという判断がありました」と、その狙いを説明。

中村氏も「タレントさんたちのやり取りの面白さも1つの軸ではあったんですが、『どっちの料理ショー』が放送されていた当時、電車で『昨日のどっちの料理ショー見た?』みたいな会話を知らない人がしていて、聞き耳立てていると、『自分が食べるなら親子丼よりカツ丼だな』とか、『おいしそうだった』という感想を言い合っていたのが印象に残っているんですよね。自分の生活に当てはめている。そういうこともあって、料理の映像に振り切ることにしました」と話す。

餃子(左)とメンチカツ (C)ytv

この構成が成立するにあたっては、今回のスポンサーであるキリンビールの理解が大きかった。

「『タレントさんを使ってくれませんか?』とか『スタジオ部分もやってくれませんか?』といった希望を出されず、ある種の実験的な試みというコンセプトに共感するスタンスを取ってくださったのは本当にありがたいです」と佐藤氏が感謝すると、中村氏も「キリンさんの懐の深さというのが、今回の企画では非常に大きかったです」と同調。

でき上がった映像を見たキリン側からは、「こんなにおいしそうなクオリティーに仕上げてもらうのは、さすがですね」と評価を得たそうだ。

●料理撮影技術の向上に寄与した番組

(C)ytv

この『どっちの料理ショー』が持つ“おいしそうに撮る”映像制作の秘けつを聞いてみると、中村氏は「完成品のおいしそうなシズル感を存分に出すため、とにかく時間をかけて撮るんです。湯気が収まってしまったら、変に油をかけたり、電子レンジに頼ったりして加工することなく、また料理を作ってもらう。そのままのリアルでいかにうまそうに撮るか。そのために時間は惜しみなく使うというところがあります」と回答。

さらに、「制作会社のハウフルスさんは、『チューボーですよ!』など元々料理系にも強い会社なんですけど、どういう角度で撮ってどこに明かりを当てればおいしそうに見えるのかというカメラマンさんや照明さんのノウハウが、9年半の間にどんどん進化していったんです」とも明かした。

『どっちの料理ショー』は、レギュラー放送が終了して14年が経過したが、「当時のスタッフは、それからも料理番組などをやっているので、ブランクはないです」(中村氏)と自信。このノウハウが様々な番組に継承されたことは、日本のテレビ番組における料理撮影技術の向上につながっているとも言え、中村氏は「そのように自負しております(笑)」と胸を張る。

テレビ局がウェブの映像コンテンツを制作する強みは、まさにここにある。

佐藤氏は「YouTubeも含めて、ウェブ上のコンテンツの中には、1人で切り盛りして低予算だけどすごく 跳ねている動画もありますよね。それに対して今回は、技術を磨いてきたそれぞれのプロたちが再集結して、自分たちの領域を背負って一緒に作り上げていくというテレビならではの作り方が、料理の画に凝縮されているので、そこをぜひ五感で楽しんでほしいなと思います」と力を込めた。

(C)ytv

○■名物番組復活で社員一丸に

テレビ各局では、従来の地上波広告に加え、ウェブ動画を活用した広告展開に積極的に進出している。最近ではテレビ朝日で『アメトーーク!』『激レアさんを連れてきた。』といった現在放送中の番組と企業がコラボ展開する事例があるものの、かつての人気番組を復刻して新たに制作するというのは、おそらく初めての試みだ。

中村氏は「タレントさんを使わずに企画をシフトしつつも、ウェブだからこそ『どっちの料理ショー』らしさを残した、新しい番組になったと思います。当時見ていた人だけじゃなくて、20~30代の若い人たちにどうやって見られるのかと、ドキドキしている部分もあります」と、手応えと本音を吐露。

佐藤氏は「『どっちの料理ショー』という弊社の歴史が絡んでいる番組を復活させるからには、後悔を残して終わることはできません。だから、社内でも“あの『どっちの料理ショー』をやるんだね”と、特にベテランの社員が理解を示してくれて、告知面でもいろいろ協力頂き一丸となって取り組んでくれているのを感じています」と、復刻コンテンツだからこその強みが表れている。

中村元信氏(左)と佐藤航氏

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