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これ、集団的自衛権?

 平成20年6月に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が報告書 を出しました。柳井俊二国際海洋法裁判所判事を長とする懇談会でして、問題意識は以下の4類型について検討することでした。

【問題意識】

① 共同訓練などで公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても我が国自衛隊の艦船は何もできないという状況が生じてよいのか。

② 同盟国である米国が弾道ミサイルによって甚大な被害を被るようなことがあれば、我が国自身の防衛に深刻な影響を及ぼすことも間違いない。それにもかかわらず、技術的な問題は別として、仮に米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合でも、我が国は迎撃できないという状況が生じてよいのか。

③ 国際的な平和活動における武器使用の問題である。例えば、同じPKO等の活動に従事している他国の部隊又は隊員が攻撃を受けている場合に、その部隊又は隊員を救援するため、その場所まで駆け付けて、要すれば武器を使用して仲間を助けることは当然可能とされている。我が国の要員だけそれはできないという状況が生じてよいのか。

④ 同じPKO等に参加している他国の活動を支援するためのいわゆる「後方支援」の問題がある。補給、輸送、医療等、それ自体は武力の行使に当たらない活動については、「武力の行使と一体化」しないという条件が課されてきた。このような「後方支援」のあり方についてもこれまでどおりでよいのか。

 これらはすべて、現在の類型の中では「集団的自衛権」に当たるとされています。私の集団的自衛権に対する考え方はかつてココ に書きました。本来、私は個別的、集団的という区分が好きではありません。日本という国を守るため、国際的な貢献をするために過不足なく自衛権を認めるべきであり、アプリオリに個別的はOK、集団的はダメという前提に立たない方がいいと思うのです。また、その「過不足なく自衛権を認める」という事についても、個々のケースの全体像を見て判断すべきだと思います。

 そうやって考えると、①と②については、そのような事態に対処できるようにしなければ、恐らく日本の安全保障環境全体が壊れてしまうでしょう。それが全部壊れてしまった後で、「日本に武力攻撃があった時は日米安保条約が発動される」とか、「個別的自衛権で対処すればいい」なんてことにはならないはずです。普通に考えて、これは「憲法で禁じられる集団的自衛権」と概念することで思考停止することは無責任以外の何物でもありません。私は(個別的、集団的という区分が嫌いだという前提の上で)①と②に対処することが集団的自衛権だとすら思っていません。あえて、そういう区分を使いたいのであれば、個別的自衛権に準ずるものとして「準個別的自衛権」と見るのがいいのではないかと思います。

 ③と④については、この程度のことすら出来ないのであれば、そもそもPKOとして出ていかない方がいいのではないかと思うくらいです。③については、日本はそれは出来ないけど、日本の自衛隊が襲われたら助けに来てね、では単なるワガママ以外の何物でもありません。そこに国際社会での信頼関係など築けないでしょう。④については、日本固有のルールとしての「武力行使との一体化」が非常に広範に網としてかかっていることが問題です。まあ、若干「PKO等」の「等」が気になりますが、例えば安保理決議を前提とするといった条件を付すことで「等」を限定的に解することでクリアーできるのではないかと思います。もう少し「武力行使との一体化」については、そのスコープを絞り込み、いわば「マイナー自衛権」みたいなものにまで適用していくことは適当ではないでしょう。③と④については、自衛権の議論から切り離しつつ、国際貢献の文脈で対処していくことが望ましいです。

 今、日本では非常に感情的に「集団的自衛権を認めると戦争に巻き込まれる」という言論が目立ちます。そうではなくて、今、俎上に上がっているのは上記4類型です。これを認めることは日本の安全保障環境を改善し、かつ、国際貢献の幅を広げることになりこそすれ、ゆめゆめ「戦争に加担する」とか「戦争に巻き込まれる」といった類のものではありません。

 だから、私は嫌いなのです、「個別的、集団的の区分」が。この入口論のところで、ずっと感情的に「集団的自衛権はダメ」みたいな議論をしていることが如何に不毛で意味のないものなのかを常々感じます。

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