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アメリカ「投票妨害」の恐るべき歴史 『投票権をわれらに』から学ぶ米選挙制度の問題点

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'Stop the Count'と叫ぶトランプ支持者

もうひとつだけ、思わず仰天してしまった投票妨害をあげれば、ノースカロライナ州で2013年に提出された法案「大学生が在学先の土地で投票した場合、その親に対して2000ドルの扶養控除を停止」がある。これは何かの冗談ではないのだろうか。ここまであからさまに投票させたくない態度を見せて、許されるものだろうか。できるだけ多くの人が投票できる環境を作り、有権者の民意を反映させることが、これほどに困難であるとは思わなかった。こうした事実もまた、『投票権をわれらに』を読まなければ知ることができなかった発見である。

一方、現大統領は「開票をやめろ!」とSNSに投稿し、開票中止を求めて訴訟を起こした。新聞ではこのように報じられている。「デトロイトの開票所には『集計をやめろ』と叫ぶトランプ支持者らが大挙して押しかける混乱も見られた」「民主主義の根幹である投票そのものが政争の具にされ続ける異常事態となっている」(毎日新聞11月6日3面)。

AP

SNSでは、投票所前で 'Stop the Count'(集計をやめろ)と声を上げる人びとの映像がシェアされていたが、「票を数えないよう抗議する集団」という姿は予想以上に衝撃的で、しばし呆然としてしまった。それはいったいどのような抗議なのか。

民主党のカマラ・ハリス上院議員は「民主主義とは状態ではなく行為です。アメリカの民主主義は保証されているものではありません。民主主義の力は、そのために闘う私たちの意思にかかっています」と述べたが、まさにその通りだとうなずくほかない。民主主義を守るための努力は、国を問わず欠かせないものだろう。『投票権をわれらに』は、19世紀から現代に至る米国史を「投票」という視点から読み解く、発見の多い1冊である。

*1
https://twitter.com/GavinNewsom/status/1323479450646802433
https://twitter.com/TheDemocrats/status/1323759369385816064
https://twitter.com/sethrogen/status/1323813284609290240

投票所数の減少については以下のニュースも報じられている
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201018/k10012669391000.html

【合わせて読みたい推薦図書3冊】
◆越智道雄『大統領選からアメリカを知るための57章』(明石書店)
大統領選の基本的な仕組み、過去の大統領選にまつわるエピソードなどをふんだんに盛り込んだ、読みやすく理解の進む1冊。それぞれの大統領のキャラクターが伝わる逸話も多く、おすすめの本。

◆渡辺将人『現代アメリカ選挙の変貌 アウトリーチ・政党・デモクラシー』(名古屋大学出版会)
2000年大統領選挙でアル・ゴア陣営の選挙対策チームでの仕事を経験した著者が、政党が米国内の選挙においてどのように有権者へアピールし、票の獲得へつなげるかを論じた1冊。やや専門的なテキストではあるが、アメリカの選挙活動がいかに洗練され、戦略化されているかがわかる。

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◆リチャード・V・ピラード/ロバート・D・リンダー『アメリカの市民宗教と大統領』(麗澤大学出版会)
これまでのアメリカ大統領がそれぞれにどのような宗教を信仰しており、その信仰と国民の支持にはどのような関係性があったかを論じた1冊。日本人にはわかりくい宗教と政治のつながりが見える興味ぶかい内容。

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■混同を避けるために記しておくと、現大統領がいま訴えている、米大統領選の「不正投票」(voter fraud)は、『投票権をわれらに』の主題である「投票妨害」(voter suppression)とは全く別の事象である。不正投票については、記事の主旨から外れるため言及していない。なお参考までに、大統領選における不正投票について、日本国内では以下のように報道されている。
「(トランプ氏は)根拠のない『不正』を羅列し、各州の選挙プロセスを批判した」(毎日新聞11月7日3面) 「(トランプ氏は)『郵便投票はとてつもない数の腐敗と詐欺に満ちている』などと、大統領選で不正があったと主張した。しかし、根拠は示しておらず、主要テレビ局は会見中に中継をやめた」(朝日新聞11月7日1面)

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