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当事者が語る、ほとんどの人が知らない「共働き不妊治療」のお金以外の大問題

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なぜ辞めていくのか

なぜ、辞めてしまう女性が多いのか。

第一の理由として、不妊治療の特性上、通院のスケジュールを立てづらいことが挙げられます。不妊治療は月経周期をベースに、卵子の成長をこまやかにチェックしながら進められます。卵子の育ち具合は毎月異なり、突発的に診察が必要となることも珍しくありません。

さらに、スケジュール調整の苦労に、取引先や同僚に迷惑をかける心苦しさ、そしていつまで治療が続くかわからない不安。そうしたものに耐えかねて、退職するケースがほとんどです。

診察室にて
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

不妊治療を受けたからといって、妊娠が約束されているわけではありませんし、そもそも不妊治療をしていること自体を周囲に話したくない、知られたくないという方が大半です。周囲に事情を知らせずに、何とか仕事のやりくりをして治療を受けていますが、通院期間が長引くほど両立が困難になってきてしまいます。その結果、仕事に真摯に取り組んできた人ほど「もう辞めるしかない」と追い詰められてしまうのです。

また、勇気を出して不妊治療をしていることを相談したところ、退職勧告を受けたり、不本意な異動を命じられたという人もいます。

不妊退職は、どの企業にとっても決してひとごとではない問題です。

不妊治療中の部下に聞かないでほしいこと

不妊退職を防ぐためには、まず不妊治療に対する理解が広まることが求められます。

サボっているわけでも、仕事に対する責任感がないわけでもなく、治療のためにやむなく休まなければならないことも多い、ということ。治療法によっては、服薬や注射の副作用で倦怠感や吐き気などの症状が出る人もいること。そして、治療は時に長期間にわたること。

こうしたことは、女性であっても不妊治療の経験がなければほとんどの場合、詳しく知る機会がありません。

よく「不妊治療をしている人に対して、どんな声がけをしたらいいのでしょうか」とご質問をいただくのですが、もし部下から「不妊治療をしています」と相談があったなら、まずは、ただ話を聴くだけでも、十分に応援につながります。さらに上記のような特性を理解したうえで「応援しているよ。なにかあったら相談してね」と声をかけるなど、話せる場所があることを伝えていただけたら、どれほど心理的負担が軽くなることか、と思います。反対に絶対に訊かないでほしいことは、「治療の結果はどうだった?」といった質問。本人から報告がない限り、治療内容や結果に関しては、そっと見守るというスタンスがありがたいです。

「不妊治療は特別ではない」という認識が広く浸透することに加え、治療を受けやすい就業環境の整備も重要なポイントです。

たとえば、できることなら1時間単位で休暇がとれるようになると、ぐんと通院しやすくなります。必ずしも新しい制度を設ける必要があるわけではなく、すでに育児中、介護中の社員に向けた制度があるなら、そこに「不妊治療中の人も使える」制度であると付け加えるだけでもすばらしい一歩です。不妊治療も、育児や介護と同じようにサポートしますよ、という会社からのメッセージがあれば、より当事者の声も集まりやすくなるはずです。

働きながらの不妊治療は大変な反面、経験者の多くは、仕事があるからこそ、治療のつらさを忘れる時間も持てて、バランスを保てたと話します。柔軟な働き方を推進させていくことは、不妊治療はもちろん、育児や介護、さまざまなライフステージの社員にとってもプラスになるでしょう。

両立に悩んだときは、カウンセリングの活用を

今、不妊治療と仕事との間で板挟みになっている方には、不安を吐き出す場所を持つことをおすすめしたいと思います。日本人は相談下手な国民性ですが、問題をひとりで抱え込んでしまうのは決して得策ではありません。ぜひ、メンタルケアを上手に利用してみてください。専門の不妊相談窓口を設けている自治体もありますし、また私たちFineでは不妊を経験したピア・カウンセラーが相談を受け付けています。

カウンセラーに話をしてみる。「これが課題で解決したいんです」などという、まとまった考えなんてなくても大丈夫。心や頭の中にあるものを、ぽつんぽつんと口にしてみて、それを第三者にきいてもらうこと。これだけでも、びっくりするほど気持ちがラクになることは多いものです。さらにプロの視点が入ることで、解決策も見つけやすくます。

「私が我慢するしかない」「これ以上迷惑をかけられない」と、心の痛みにふたをしないでほしい。メンタルケアのルートを持つことがより一般的になってくると、不妊治療における精神的な負担もかなり軽減されていくのではないかと思います。

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fine理事長
一般社団法人日本支援対話学会理事。ビジネスコーチ、企業研修講師、フリーアナウンサーとして幅広く活動。自身の不妊治療の体験から、不妊当事者をサポートするNPO法人Fineを立ち上げる。著書に『不妊治療のやめどき』など。
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(NPO法人Fine理事長 松本 亜樹子 構成=浦上藍子)

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