- 2020年11月17日 22:29 (配信日時 11月17日 18:15)
第3波が鮮明になっても、いまの段階で「GoTo」をやめてはいけない
1/2厚労省の助言機関が「急速な感染拡大に至る可能性」と警告
新型コロナウイルスの感染が再び拡大している。
厚生労働省の助言機関(アドバイザリーボード)が11月11日、「11月以降に増加傾向が強まり、一部の地域では感染拡大のスピードが増している」との認識を示し、「このまま放置すれば、急速な感染拡大に至る可能性がある」と警告した。助言機関は感染症の専門家で構成され、厚労省にアドバイスする。

この日、感染者は新たに1547人確認された。その後、14日には1715人となり、3日連続で過去最多を更新。大阪、神奈川、千葉、茨城、静岡の5府県は1日当たりの感染者数が過去最多となるなど、都市部を中心に感染が拡大している。
日本医師会の中川俊男会長は、11日の定例記者会見で「第3波と考えてもいいのではないか。政府には先手先手で感染防止のための手を打ってほしい」と医師会としての判断を示した。
厚労省の助言機関の警告に先立ち、9日、政府の分科会も緊急提言を出し、踏み込んだクラスター(感染者集団)対策を政府に求めた。
過度に怖がらずに、正しい知識で正しく恐れるべきだ
感染拡大の兆候を的確に捉え、効果のある対策を迅速に施す。感染症の危機管理はそうでなくてはならない。感染が拡大し、オーバーシュート(感染爆発)を引き起こせば、真っ先に犠牲になるのは高齢者や持病のある患者ら健康弱者だ。そうした意味で助言機関や分科会の対応、それに日本医師会の判断は評価できる。
しかし、専門家集団の警告が正しく伝わるとは限らない。これまでも感染者に対する差別や偏見、他人を監視しようという同調圧力が強まってきた。他人にマスクを強制する「マスク警察」という言葉まで生まれた。
冷静になる必要がある。厚労省のまとめによると、8割以上の患者・感染者はほかの人に感染させていない。運悪く感染しても80%の患者・感染者は無症状や軽症で治る。新型コロナウイルス感染症は、むやみやたらに恐れる必要のない疾病なのである。しかし侮ってはいけない。正しい知識で正しく恐れる必要がある。
お互いにマスクをしてウイルス暴露を少なく抑え込む
正しい知識で正しく恐れるにはどうすればいいのか。そのためには、このウイルスの弱点を理解することだろう。
新型コロナウイルスの感染力が高まるのは、密接・密集・密閉の「3密」という環境だ。さらに手洗いで接触感染を予防し、お互いにマスクをしてウイルス暴露を少なく抑え込めれば、簡単には感染しない。身体のコンディションにも左右されるため、日ごろから十分な栄養と睡眠を取り、暴飲暴食を避けることが大切だ。

日本で生まれた「3密」という弱点は、いまでは「Avoid the Three Cs」という英語に翻訳されて欧米にも広がっている。“Three Cs”とは、closed spaces/crowded places/close-contact settingsの3つを指す。
新型コロナウイルス対策を担当する西村経済再生相は11月11日の記者会見で「現段階は、緊急事態宣言を出すような状況ではないが、今の流れが爆発的な感染拡大にならないように対策は強化していきたい」と語った。
菅義偉首相も13日、国民への呼びかけとして記者団にこう話していた。
「飲食を伴う懇親会やマスクを外しての会話など、感染リスクが高まる『5つの場面』を踏まえ、いま一度、基本的な感染防止対策に努めてほしい」
「Go To キャンペーン」の見直しはまだ早い
この5つの場面として、さらに「大人数や長時間に及ぶ飲食」「狭い空間での共同生活」などを挙げているが、人と人の触れ合いを全面的に否定するところもあり、すべてをそのまま受け入れるのは難しいだろう。
政府はこうした感染予防対策を求める一方で、いまのところ国内の移動には制限を設けない方針だ。需要喚起策の要となっている「Go To キャンペーン」の見直しも行わない。
感染防止にはどうしても移動の制限がともなう。病原体のウイルスや細菌が、人によって運ばれるからだが、移動制限を厳しくすると、社会・経済が行き詰まり、さまざまな弊害が生じる。「GoTo」によって観光地がにぎわいを取り戻し、経済活動が回復したという地域は多い。人と人とが物理的に結び付くことで、コロナ禍特有の閉塞感もかなり薄れてきている。
政府にくみするわけでないが、沙鴎一歩は「GoTo」を見直したり、中止したりするのはまだ早いと思う。感染によって亡くなるケースは限定的になっている一方で、社会・経済の閉塞が続けばそれによって亡くなる人が増える。感染防止と経済振興のバランスを取ることが重要だ。
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