- 2020年11月17日 12:50
「味噌」のイメージを刷新するデザイン性 原料から作るオーガニック味噌工房がコロナ禍で苦渋の決断
1/2日本の伝統的な食品「味噌」。基礎調味料の「さしすせそ」に入るほど身近だが、料理をしない若者にとっては少し地味なイメージも持たれがちだ。
数年前、東京都世田谷区の人気エリア松陰神社前には、量り売りの味噌屋が開店し、雑誌にもよく取り上げられていた。
このブランドは、宮城県の「カネサオーガニック味噌工房」で、自社有機農場で採れたオーガニックの米と大豆を主原料に、味噌5種類・甘酒3種類、有機生塩糀など約15種類を製造する。また、シンプルでデザイン性の高いパッケージに身を包んだ商品が注目を集めている。

しかし、4月には新型コロナの感染拡大を受け、店舗は一時的な休業を余儀なくされた。これまで「量り売りの味噌屋」をコンセプトにお客さんとの接点を重視し、商品の魅力を発信する役割を担っていただけに、ソーシャルディスタンスが求められる状況で、同社はトライ&エラーで新たな販路を模索していた。
直営店の一時閉店は苦渋の決断 新たな挑戦で活路を模索
感染が広がり始めた2、3月は様子を見つつ営業していたが、4月からはスタッフの安全面を第一に考え、一時休業を決めたという。
当時について同社の大内さんは、「日に日に感染拡大していき今後の終息の見通しが立たない状況に、販売店を営業し続けていく事が困難だという判断に至りました。働いていたスタッフや、ご愛顧頂いていたお客様には大変申し訳なく思っております」と心境を振り返る。
店舗での販売が難しくなったいま、売り上げの回復を目指し、同社ではオンラインでの販売や新たな販路を求めて試行錯誤が続いている。
「誰しもが予想していなかった状況ではありますが、こういった状況だからこそ、新しいアイディアが必要で日々トライしていく事が重要なのだと考えます」。
閉店後も大内さんのもとには、世田谷の店舗を利用していた客から励ましの言葉やメッセージが届いているという。新たな営業先の提案をしてくれる人も現れ、「私たちのお店はこんなにも愛されていたのかと、非常に嬉しく、励みになりました」と、支えになっている。
「味噌」のイメージを刷新するロゴマークへのこだわり
宮城県で製造される同社のオーガニック味噌は、主原料や製法へのこだわりももちろんだが、最初に目を引くのはそのパッケージだ。どんな思いから、考案されたのだろうか。
大内さん曰く、ロゴマークのモチーフは、主原料になっている自社農場で採れたオーガニックの米・大豆と、のどかな田んぼの蛙道をイメージして作られた。

誰もが手に取りやすく、シンプルで飽きのこない塩梅で考えられたロゴマークは、「味わい深くも、ほっとするひと時を過ごせる」というすべての商品に共通する部分を表現しているそうだ。
コロナ禍の中で注力するオンライン販売では、同社のシンプルなパッケージは目を引き、味噌や塩こうじなど、デザイン性は意識されない昔ながらの商品にスタイリッシュなイメージをもたらした。
また、商品一覧ページでは、「長期熟成生味噌」という8年以上熟成させたブラック味噌や、有機古代米を使用した鮮やかな色合いの甘酒など、なじみ深さのあるラインナップながら本格的な商品が並ぶ。
同社は20年以上、有機農法による米と大豆の栽培を行っており、農薬・化学肥料を使用しない有機JAS認証米を生産する技術を持っている。おしゃれなパッケージで発酵食品のイメージを刷新しつつも、原料生産と味噌製造へのこだわりが感じられる。

地域の交流から見出された味噌が看板商品に
同社の看板商品は、「有機生味噌」だ。これは、米や大豆などの生産だけではなく、味噌製造を目的とした工房をはじめるきっかけとなった商品なのだという。もともと地域で年に一度、自ら原料を持ち寄った味噌作り会が開催されていた。
そこで、自前の有機米・有機大豆で作った味噌を使った味噌汁が評判となり、「売って欲しいとの声を多々頂いていた。自社の有機原料を使用し、よりお客様との導線がつくりやすい加工食品を製造し、販売していこうと思い創業に至った」ことで工房が設立された。
地域の声から始まった「有機生味噌」はいまでは、多くのお客さんに広がり同社を代表する商品となっている。

また、もう一つの看板商品は「有機農家が作った甘酒」だ。冬に飲むイメージの強い甘酒だが、もともとは夏の季語であることを踏まえ甘さ控え目にすることで、夏でも飲みやすいように工夫しているという。同社では夏場に店頭で試飲を行うこともあり、夏の風物詩として甘酒を位置付けている。
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