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日本人が世界標準のコミュニケーション術を身につけるには一歩前に出ることが必要 - 「賢人論。」125回(後編)三宅義和氏

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2020東京オリンピック・パラリンピックは1年間延期され、2021年7月23日から開催される運びとなった。予断を許さない状況ではあるが、開催されれば世界205の国と地域からアスリートが来日し、多くの外国人観光客もやってくるだろう。そのとき私たちは、海外からのゲストをどのように出迎えればいいのか。約600人の外国人教師を擁する英会話教室イーオンの三宅義和氏に、日本人が国際性を獲得するために何が必要なのかを語っていただいた。

取材・文/盛田栄一 撮影/荻山拓也

真面目さや他者を思いやる文化は日本人の誇り

みんなの介護 新型コロナの流行により延期された東京オリンピック・パラリンピックは2021年夏の開催予定です。多くの外国人観光客の来日が期待されますが、「外国人が苦手」「英語が苦手」という日本人は少なくありません。私たちが世界に通用する国際性を獲得するためには、何が必要なのでしょうか。

三宅 2020年に発生したパンデミックで、日本人の国民性が改めて明らかになったと考えています。日本人は、たとえ法律で規制されていなくてもマスクを着け、ソーシャルディスタンスを保ち、自粛生活を堪え忍んでいる。ほかの先進国に比べて、新型コロナによる死者数を極端に少なく抑えられているのも、真面目で他者を思いやる国民性の表れだと思います。その点について、私たちは日本人であることをもっと誇りに思ってもいいのではないでしょうか。

日本の昔の名前は「大きな和」と書いて「大和」。和を尊び、「察する」のが日本文化の特徴です。日本人同士であれば、多くを語らずともお互い察しあうことで円滑なコミュニケーションを形成してきました。「自分が自分が」としゃしゃり出るのではなく、一歩引いて全体に目を配る。それが謙譲の美徳であり、日本人の美意識でもあります。

相手に自分の主張を伝えて議論するスキルが求められる

三宅 しかし残念ながらそれは外国人には通用しづらいときもあります。諸外国では日本のような「察する」文化がない場合もあります。彼らにははっきりと言葉に出して言わないと、こちら側の意図が伝わらない。もし、これから世界の人々と対等で円滑なコミュニケーションを構築していこうとするなら、日本人は今までのように一歩引くのではなく、逆に一歩前に出ることも必要だと思います。

海外の方と話すときは、主張すべきことは主張し、議論すべきことは納得のいくまで議論する。そんな世界標準のコミュニケーションの方法を身につけていく必要があります。

みんなの介護 外国の方のように積極的に自己主張するのは、多くの日本人にとって苦手な行為かもしれませんね。

三宅 どうして苦手なのかといえば、子どもの頃からきちんとしたディベート(賛成派・反対派に分かれた討論)のトレーニングを積んでいないから。

欧米では、小学校の頃からディベートの授業がありますね。あるテーマに対して、AくんはCという立場で意見を述べ、BくんはDという立場で反論する。それが終わったら立場を入れ替えて、今度はAくんがDという意見を展開し、それにBくんがCという意見で対抗する。この場合、当人の信念や感情はほとんど関係ありません。あくまでも対話の技術を習得するのが目的であって、どのように自分の意見を主張し、どうすれば相手を納得させられるか考えることが重要なのです。

英語圏における質問や反論は対話の一環

みんなの介護 世界の人々とコミュニケーションを図るには、英語など特定のツールを学ぶ必要がありますね。

三宅 そうですね。英語の場合、英単語や英文法を覚えるだけでなく、「英語の論理」についても知っておかなければなりません。

英語の論理とは、簡単にいえば「Why」と「Because」です。英語圏で行われる議論は基本的に、「なぜそうなるのか」という問いに対して、「なぜなら○○だから」と理由を説明することで成り立っていると言えます。

私がイーオンの外国人教師とはじめて接したときに会社の方針を伝えると、彼はいきなり「Why?」と聞いてきた。こちらとしては戸惑いましたね。「なぜ?」と聞かれても、会社の方針でそう決まっているのだから、としか言いようがない。日本人の社員なら聞いてこない質問です。しかし、彼らは会社の方針を否定しているわけでもなければ、私にケンカを売っているわけでもない。正当な理由を聞いて納得したいだけ。そのことにすぐに気づいてきちんと説明すると、彼も納得してくれました。

日本人の場合、自分の主張や意見に対して「なぜ?」と聞かれたり、「違うと思う」と反論されたりすると、まるで「自分」という人格を否定されたように感じて大きなショックを受けます。しかし英語圏の彼らは、そこまで大げさなことを考えているわけではありません。あくまでディベートのように対話の一環として質問したり、反論したりしているだけ。その点をまず理解しないと、思わぬ感情の行き違いを招くことになります。

みんなの介護 確かに、日本人同士の会話では「なぜ?」と聞き返す人は少ないかもしれません。

三宅 そうなんです。でも日本人は真面目だから、何でもすぐ真に受けてしまう。例えば英語のテストで、「学校給食が好きか、お弁当が好きか。○○語以内でその答えと理由を書きなさい」なんて出題されたりすると、自分は果たしてどちらが好きなのか真剣に考え込んでしまう。しかし考え込む必要なんてどこにもありません。そのとき出せる自分の答えとその理由を文章化すればいいのです。出題者は回答者の好みが知りたいのではなく、英語の表現力を知りたいのですから。

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