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コロナワクチンあなたは打つ、打たない? 間もなく米英で予防接種開始

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米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬ベンチャー、ビオンテックは11月9日、メッセンジャーRNA(mRNA)を使ったワクチンの第3相試験で90%以上発症を防いだとの初期データを発表しました。

暫定的とは言え、第3相試験の結果が公表されるのは初めて。mRNAテクノロジーに基づいて日常的に使用されている承認済みワクチンはまだありません。

第3相試験は7月27日に開始され、4万3538人が登録。うち3万8955人が11月8日の時点で2回目の投与を受け、評価可能な症例数が94人に達しました。今のところ有害事象は報告されていません。

しかし現段階ではプレスリリースに過ぎず、詳細なデータは公表されていません。

予防するのは感染か、それとも発症か、重症度の違いは、高齢者や基礎疾患のある人には効くのか、すでに抗体を持っている人にはどのように作用するのか、ワクチンで誘発された免疫はどれぐらい続くのか、効かない人にはどんな理由があるのか――など、まだ多くの疑問が残されています。

「パンデミックの壊滅的な影響を終わらせる重要な一里塚」

しかし米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は米ブルームバーグのインタビューに対して「ファイザーのワクチンは非常に高い有効性を持っている。90%以上、95%近くだ」と驚きの声を上げました。

「一般的にワクチンにはある程度の懐疑論があるが、一般の人々がこのワクチンがどれほど効果的であるかを見た時、予防接種に対する態度が好転するかもしれない」

ファイザーとモデルナのワクチンは同じmRNAテクノロジーを使っています。ファイザーのワクチンは3週間後、モデルナのそれは4週間後に2回目を接種するため、第3相試験の暫定結果も1週間遅れで発表される見通しです。

ファウチ氏は「モデルナのワクチンもファイザーの暫定結果に匹敵する結果が出れば2つの非常に有効なワクチンが手に入るだろう」と楽観的な見方を示しています。

英オックスフォード大学のトゥルーディー・ラング教授(グローバルヘルス)も「ファイザーのワクチンの最終的な結果がどうであれ、これは世界的大流行の壊滅的な影響を終わらせるワクチンを探求する上で重要な一里塚だ」と評価。

同大学のピーター・ホービー教授(新興感染症)も「このニュースを大歓迎する。ワクチンが実際の違いを生むまで長い道のりがあるが、これは分水嶺の瞬間のように感じる」と話しました。

従来のワクチンは危険なウイルスを弱毒化したり(生ワクチン)、完全に殺したり(不活化ワクチン)して使用してきました。

最短でも研究に2~5年、非臨床試験2年、第1相試験1~2年、第2相試験2~3年、第3相試験2~4年、承認審査に1~2年で計10年はかかると言われてきました。

しかし、がん治療などに使われているmRNAテクノロジーを利用する遺伝子ワクチンは10カ月という「ワープスピード」を可能にしました。


英政府もこれに対応して10カ月でワクチンを承認できるよう法的な枠組みを整えてきました。

世界の7割強がコロナワクチンを接種すると回答

英科学雑誌ネイチャーに掲載された19カ国1万3426人を対象にした6月の調査では71.5%がコロナワクチンを接種するだろうと回答しました。

木村正人の記事一覧

国別では中国88.6%、ブラジル85.4%、南アフリカ81.6%、韓国79.8%、メキシコ76.3%、アメリカ75.4%、インド74.5%、スペイン74.3%、エクアドル71.9%、イギリス71.5%、イタリア70.8%、カナダ68.7%、ドイツ68.4%、シンガポール67.9%、スウェーデン65.2%、ナイジェリア65.2%、フランス58.9%、ポーランド56.3%、ロシア54.9%の順でした。

科学は日進月歩の発展を遂げても、人の心は同じスピードでは成長しません。イギリスの医者エドワード・ジェンナーが1798年に牛痘の膿を使って天然痘から保護する予防接種を発表して以来、ワクチンへの懐疑論は見られます。

1970年代には百日咳ワクチンの安全性について疑念(後に根拠がないと判明)が投げかけられ、80年~90年代に反ワクチングループがイギリスをはじめ多くの国で出現しました。

極めつけが1998年、イギリスの胃腸科医師アンドリュー・ウェイクフィールド氏が世界的に権威のある医学雑誌ランセットに発表した論文です。

自閉症の子供12人のうち8人の保護者が「はしか、おたふく風邪、風疹予防の新三種混合(MMR)ワクチンを接種してから数日間のうちに子供の様子がおかしくなった」と証言しているという内容でした。

報道陣を集めて記者会見を開いたため、世界中が大騒ぎになりました。他の医師が論文をもとに研究してもMMRワクチン接種と自閉症の関係は再現できませんでした。

2004年になって英日曜紙サンデー・タイムズが、ウェイクフィールド氏がワクチン会社の損害賠償責任を立証するため落ち度を探していた事務弁護士から資金提供されていたことをスクープします。

論文はデタラメだったとして撤回され、ウェイクフィールド氏は医師免許を取り消されました。

しかしイギリスのMMRワクチン接種率は達成目標の95%から2000年代半ばに約80%に低下し、少なくない命がイギリスだけではなく欧州全体で失われました。

Getty Images

SNS上のワクチン忌避コンテンツ対策が急務

コロナワクチンを巡っても、国際連携団体GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)を推進するゲイツ財団のビル・ゲイツ氏が「数十億人にマイクロチップを埋め込み、動きをモニターする口実としてワクチンの大量接種を利用しようとしている」という根も葉もない陰謀論がSNS上で渦巻いています。

英最大野党・労働党はオンライン上の危険なワクチン忌避コンテンツを削除する緊急法を導入すべきだと唱えています。ワクチンについて恐怖を煽るデマを削除しないソーシャルメディアに刑事罰を科すよう求めています。

ジョンソン英政権もこの問題を深刻に受け止め、フェイスブックやツイッター、グーグルの協力でワクチン忌避コンテンツ対策を進めるとみられています。

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