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田中真紀子大臣より情けない文部官僚

田中真紀子大臣が連日、批判の集中砲火を浴びています。

しかし、そもそも大学設立認可の権限は大臣にあり、従って、その判断が裁量の範囲にある以上、それはそれとして受け入れざるを得ないのです。

同時に、認可申請した側にも、行政庁の判断(処分)に不服を述べる権利が保障されており、両者の意見が折り合わなければ、最終的には裁判で決着することになるのです。

私が敢て言うまでもなく、田中大臣の今回の行動はお粗末としかいいようがありません。こんな混乱を招くことは簡単に予想できたではないか、と。もちろん、その一方で、国民の誰もが感じているように、田中大臣が大学の粗製乱造を食い止める必要があるという理由は分かるのです。

子どもたちの人口が団塊の世代の半分にも満たない状況になる一方で、大学の数は増える一方。その結果、定員割れの大学が続出し、大学生の質が落ちる、と。

本当に大学に行きたい、大学で学びたいと考えている若者はどの程度いるのか?

本当はそれほど勉強をしたいのではなく、ただ親が行けというから、或いは自分も学生生活をエンジョイしたいからというだけで、大学に行こうとしている若者が少なくないのではないでしょうか。

分数の計算ができないなんていう学生が珍しくないとも言いますが、だったら大学に進学させる前に、義務教育の内容をしっかり復習させることが先決なのではないでしょうか。

いずれにしても、田中大臣の身から出た錆だと言うべきでしょう。そして、自分で言ったことにはちゃんと責任をとってもらうべきなのです。

繰り返しになりますが、確かに大学の粗製乱造はどうにかしなくてはいけないという考えはそのとおり。

しかし、だからと言って、現状では一切大学の新設は認めるべきではないのか?

理想論を言うのであれば、そもそも大学を国の一機関である文部科学省が認可するとかしないとかいうのがおかしいのです。何故ならば、自由に真理を追究する機関が大学である訳ですから、その大学が国のチェックを受けるというのは矛盾することになるのです。

まあ、こんなことを言えば、私立の大学にも国が補助金を出しているのだから、国がチェックをするのは当然だという声も予想できます。確かに補助金を出すならば、大学の経営内容をチェックすることは当然必要だと言えるでしょう。

しかし、皆さん、大切なことを忘れているのです。

それは憲法89条。

「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」

つまり、私立の大学に国が補助金を支給するのは憲法違反の疑いがあるのです。知っていました?

では、どうして私学に補助ができるかと言えば、学校教育法および私立学校法に定める教育施設は公の支配下に属するというこじつけ解釈をしているからなのです。

もっと言えば、私立の大学には憲法学者も大勢おり、私立にも補助金を支給してもらわないと私学の経営が成り立たないものだから、学者が解釈を捻じ曲げているのです。

それに、一般感覚から言っても、国立の大学には国の予算が投じられる一方で、私学には助成がなければ、益々私学の授業料が高くなるという父兄の切実な声があるからです。

結局、そうして立法の趣旨は捻じ曲げられてしまっているのです。

但し、ここで議論を打ち切ることは現実的ではないので、取り敢えず、私学助成は憲法違反ではなく、かつ、文部科学省が大学の設立認可を行うことを是とした上で、議論を進めたいと思います。

では、どのような場合に大学の設立を認め、どのような場合には設立を認めるべきではないのか?

重要なことは、個々の大学設立認可申請の審査に当たっては、国内の大学の数がどうであるかと
は関係なく、どのような大学を設立しようとしているのか、その計画の内容がどうであるかによって決すべきものだと思うのです。例えば、大学の教える体制は十分と言えるのか?カリキュラムの内容は適正なのか?或いは、計画通りに学生数を確保できる見込みがあるのか?そして、大学の経営が長期的にみて持続可能であると言えるのか?

こうした個別の事情を踏まえて田中大臣は、認可すべきかどうかを判断しなければいけなかったです。しかし、彼女は恐らくそうした細かな事情は一切斟酌することなく、今は大学が多すぎるからという一言で切り捨てた。

これが真実だと思うのです。

つまり、はっきり言って田中大臣は判断を間違えた、と。

もし、田中大臣が、個別の事情を勘案して、3つの申請を不認可にしたというのであれば、それなら話は簡単なのです。

幾ら大学に進学したいと思っていた若者の夢を壊したとしても、貴方が行こうとしている大学は、そう長続きはしないのだからと言って説得することができるからです。

つまり、田中大臣は、どうして不認可にしたのか、各申請者にその理由を説明すべきであるのです。しかし、大臣の言うのは、大学数が多すぎて大学の質が落ちているからというばかり。それでは理由にならないのです。そして、申請者たちを説得する自信がないから、申請者側が大臣と直接面会したいと申し入れても、自分は合わずに事務方に対応させる、と言っているのです。

これでは田中大臣が責められても当然でしょう。

では、全ての責任は田中大臣にあって、文部官僚には非はなかったと言えるのか?

私は、官僚たちが、田中大臣が認可しないと言ったのは最終的な判断ではなく、行政処分はまだなされていないという台詞を聞いて情けなく思いました。

何故官僚たちは、大臣の発言を役所としての最終処分ではないと言い張るのか?

それは、大臣の発言が役所の処分であるとみなされれば、それを対象とした訴訟が起こされる可能性があるために、訴訟という最悪の事態を回避するためにそんな詭弁を弄しているのです。

私思うのですが、これが仮に大臣が記者から質問をされ、「大学の認可は、今のままであれば難しい‥」とつぶやいた程度であるならば、確かに行政庁の処分とまで考える必要はないと思うのです。しかし、彼女は、明らかに認可はできないと言ったのです。そして丁寧に、認可ができない彼女なりの理由も示したのです。しかも、国民がみているテレビカメラの前で。

これほど明確な行政庁の意思表示があると言うのでしょうか?

確かに紙に書いたものはありません。しかし、紙に書いたもの以上の影響力をもっているからこそ、こうして全国のテレビ視聴者が関心を持って見守っているのです。

私思うのですが、官僚たちが田中大臣の判断を翻意させたいと本当に思ったのであれば、身を以て大臣を説得すべきであったと思うのです。

しかし、あの勢いにまさる官僚はいなかったのでしょう。大臣の考えに余りにも抵抗すると、自分たちもかつての外務官僚の二の舞になるかも、と。「審議会の答申は答申ですが、大臣が責任をもって判断されるなら、仕方ありません」と、理解のある振りをした官僚がいたかもしれないのです。

つまり、官僚たちは、本意ではなかったかもしれないが、結局、大臣の考えを改めさせることができず、後は大臣に責任を取ってもらおうと思ったのでしょう。

それなのにその官僚たちは、今になって、田中大臣の不認可発言は、行政庁の意思ではないなんて言い張っているのです。

おかしくありません?

もし、おかしくないと言いたいのであれば、当初の田中大臣の不認可発言の直後に、田中大臣の発言は個人的見解に過ぎないとでも言っておくべきだったのです。

でも、そんなこと怖くて誰も言えない、と。

文部科学省が3件の大学の設置認可申請に対して、組織として不認可の処分を下したのは、それが書類によるものではなくても事実であるのです。だから、当然のことながら訴訟の対象になり得るのです。

文部科学省がどうしても訴訟を回避したいと思うのであれば、誰かが大臣を説得して、不認可の意思表示を撤回し、さっさと認可すれば済むことなのです。

何故、筋を通さないのでしょうか?

ネコに鈴を付ける役がいないということでしょうか?

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