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「欧米の大学院で給料をもらっていない理系の学生は一人もいない」。日本で博士学生が減るのが当然な理由

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萩生田光一文部科学大臣は2020年11月11日、『BSフジLIVE プライムニュース』に出演。

山本尚中部大学教授(名古屋大学特別教授、シカゴ大学名誉教授)と、日本の若手研究者の窮状について議論が行われた。

先日NHKでも「大学院の博士課程学生数 ピーク時の半分に」という記事が出ていたが、主要先進国でなぜ日本だけが博士号取得者が減っているのか、今後どこを改善していかなければならないのか、よくわかる内容だったため紹介したい。

減少を続ける日本の博士号取得者

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これまで度々報道されてきたように、科学技術立国を支える日本の大学院の博士課程の学生の数は、修士課程から進学する学生が減り続け、ピーク時の平成15年度のおよそ1万2千人から、昨年度はほぼ半分の5963人まで減少。

人口100万人当たりの博士号取得者の数も、もともと少ない水準だったにもかかわらず、欧米やアジア諸国が増加傾向にあるのに対し、日本は2008年度の131人から減少し、2017年度には119人と、アメリカ、ドイツ、韓国の半分以下の水準にまで落ち込んでいる。

その原因としては大きく2つ、在籍中の学費負担の大きさや研究費の少なさ、将来的なキャリアパスの不透明さ(アカデミックポスト不足や企業等での待遇の悪さ)が挙げられる。

萩生田大臣:修士課程、さらに博士課程に行く学生が減ってしまっている。学びたい意欲があるのに行けないとすれば、財政的なサポートをしたいと思っている。ただ、大学で給付型奨学金ができたのが今年。大学院にはない。大学院は対象外になっている

反町理キャスター:じゃあ修士に進んだら、そこから先は自分で(授業料を払わないといけない)?

萩生田大臣:(貸与型)奨学金制度はありますが、給付型がない。頑張れば返済免除となる制度もありますが(奨学金返還免除制度=大学院で日本学生支援機構第一種奨学金の貸与を受けた学生で、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者を対象に、その奨学金の全額または半額を返還免除する制度)、経済的なことを考えると行きづらいというのはある。

次は就職。修士や博士を終えて、民間企業に入ると、年次の遅れた人になってしまう。たくさん勉強していろんな知識を持った人としてではなく、年齢が高くなってからうちの会社に来ましたね、と見られる。

反町キャスター:修士や博士を取っても、留年、浪人したのと同じような扱い?

萩生田大臣:もちろん、ものづくり企業や研究を続けている企業はそういう人をちゃんと評価していますが、残念ながらキャリアパスにならない。そこに大きな問題がある。

霞が関にも、博士持っている人いっぱいいるんですが、博士だから何か特別な専門性高い部署に就けるかというと全然そんなことなくて、普通に並ぶ。いい勉強してきているのに、もったいないなと。だから文科省では人事で、専門性を発揮できる分野で、最初はしょうがないにしても、何年か後には配置をしようと、新しい仕組みを作っている。でも定年は一緒。そうすると、能力はあっても、ある程度のところまでしか行けない日本の仕組みになっている。こういうところをブレイクスルーしていかないと、博士や修士を終えた人が霞が関で頑張ろうというインセンティブがなくなるので、そういう改革をしていかないといけないと思っています。

(『プライムニュース』からの引用、以下同様。太字は筆者)

給料をもらう欧米大学院とアルバイトしながら授業料を支払う日本の大学院

山本尚中部大学教授:私が一番言いたいのは、ヨーロッパやアメリカ、中国の理系の大学院の学生で、給料をもらっていない人は一人もいない

反町キャスター:院生でもらえるんですか?修士、博士どちらも?

山本教授:修士、博士どちらでも、というのが多い。

反町キャスター:え、修士課程に入ったら国からお金をもらえるんですか?

山本教授:そうです。

反町キャスター:へー

山本教授:アメリカの場合は研究費を通して国から、ヨーロッパの場合は直接国からです。これがないんです、日本には。これが大変なことになりつつある。非常に良い仕事をしている先生方によく言うのですが、後ろ振り向いてご覧なさい、誰もついて来ていないですよ、と。そんなことで、日本の科学技術がうまく発展していけるでしょうか。

中国とか東南アジアの学生はいっぱいいますが、その人たちは終わったら帰っちゃう。その人たちが日本の科学技術を支えていくかというと、これは非常に難しい。だから、このお金(給料)を絶対に出して頂けないかと。最近、総合科学技術・イノベーション会議(内閣府)で少し検討を始めたと聞いて、すごい嬉しかった。私がお願いしているのは、修士、博士、両方で出してくださいと。博士だけじゃなくて。そんなケチなことしないでください。

山本教授が言うように、欧米では、給料(研究費)をもらって修士、博士課程に進学するのに加え、授業料は無償、もしくは給付型奨学金が充実しており実質無償になっているケースが多い。

他方、日本では多額の授業料を支払い進学、博士課程で研究費をもらえる日本学術振興会特別研究員(学振DC)の枠は、採用率が2割程度と非常に狭い門になっている。

そのため、博士課程の学生の6割以上が返済義務のある奨学金や借入金があり、40.3%が課程修了時に300万円以上の借入金を抱えている(文部科学省科学技術・学術政策研究所調査)。

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反町キャスター:ポスドクとか博士課程行ってる学生が年収100万円とかになっている話も聞く。そうなると、先ほど山本さんが言われたように、じゃあ何のためにやっているんだと思い始める。

この状況について萩生田大臣はどう感じられていますか?

萩生田大臣:その通りだと思います。博士課程の7万5000人の在籍者のうち、修士から博士に来るのが約3万人。現在、(半数の)1万5000人に生活費相当額の支援を目標に準備をしている。

反町キャスター:修士を含めて?

萩生田大臣:ごめんなさい、修士が薄いんです。そこは胸張れない。

反町キャスター:(修士課程から進学する)博士課程の3万人のうち1万5000人。

萩生田大臣:あと来年度からぜひスタートしたいと思っているのが、大学フェローシップ創設事業。生活費相当180万円(年間)を、研究費と事務費を加えて、大学等の機関補助を通じて博士課程の学生をサポートしたいと思っている。

リサーチアシスタント(RA)やティーチングアシスタント(TA)で働いている人たちは一定程度アルバイトでお金をもらっていますが、ずっと修士から博士に来ると、研究室の中で若手はタダ働きになっていた(人もいる)。

RAやTAであれば、学校の研究室にいながら頑張って勉強できますが、外でアルバイトしないと博士課程に残れない学生が非常に多かった。これじゃどんどん目減りしてしまう。何とかプライドを持って研究を続けられる環境を来年から気合を入れて変えていこうと思っています

「大学フェローシップ創設事業」の受給者数は、令和3年度1,000人規模(見込み)、予算は29億円(見込み)と、もう少し頑張れないかという思いは正直あるものの、番組を通して、萩生田大臣は適切な状況把握、問題意識を持っていると感じる場面が多く、今後の待遇改善に期待したい。

関連記事:「大学院生にも給付型奨学金を」「国は科学を衰退させたいとしか思えない」、若手研究者の切実な声(室橋祐貴)

※Yahoo!ニュースからの転載

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