記事

ステーキ、フォアグラ…どんなに食べても「食べ放題」で絶対に元を取れないワケ

1/2

食べ放題で元を取るにはどうすればいいのか。データサイエンティストの松本健太郎氏は「残念ながら食べ放題で元を取ることはできない。そう考えてしまうのは、人間には『損をしたくない』という本能があるからだ」という――。

※本稿は、松本健太郎『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

ビュッフェ
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GoodLifeStudio

「食べ放題」はなぜ人気なのか

好きな食べ物を、好きな量だけ、何度でも食べられる「食べ放題」システムは、まさに「強欲」を地で行くような食事のスタイルです。

日本における食べ放題の歴史は実は新しく、1958年8月に新しく開館した帝国ホテル第2新館のレストラン「インペリアルバイキング」が始めたのが最初だと言われています。新館の目玉となるレストランを探していた当時の帝国ホテルの犬丸社長が、旅先のデンマークで北欧式のビュッフェ「スモーガスボード」に出会ったのがキッカケだそうです。

日本にはそれまでなかった「食べ放題」システムに感動した犬丸社長は、その仕組みを日本に輸入しようと考えました。ただ「スモーガスボード」という日本人にはあまり馴染みのない名前だと人気が出ないと考え、その新名称を社内公募します。

「北欧と言えばバイキング」という、やや安直(?)な発想と、ちょうどその当時に『バイキング』という映画が上映されていて、その映画に登場する豪快な食事シーンが社員の印象に残っていたという理由で、「バイキング」という名前になったそうです。

当時の大卒初任給は12800円、一方で「バイキング」はランチ1200円、ディナー1600円とかなりの高級路線のレストランでした。しかし開店直後から人気に火が付き、全国各地に「食べ放題」システムが伝播していきました。

これが「バイキング形式」として知られる「食べ放題」システムの由来です。

人間の基礎的な欲求を満たす

この「食べ放題」システムが今に至るまで人気であり続けているのは、「好きなものをお腹いっぱい」食べられる満足感が最大の理由であるのは言うまでもありません。

ちなみに、アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化しました。

マズローの欲求5段階説

その最下層に「生理的欲求(Physiological needs)」が位置しています。食欲は「生理的欲求」の1つで、マズローの理論からすれば「食欲は人間の最低ランクの欲求」となります。ただそれは決して悪い意味ではなく、そうした基礎的な欲求である「食欲」が充たされてこそ、自己実現などのさらに高レベルの欲求を人は追求できるのです。

食べ放題がもたらす「気分一致効果」

筆者は「ご褒美」と称して、たまにホテルバイキングへ出掛けます。和やかな雰囲気に包まれ、自分の食べたい物だけを何度も食べられるので、幸せな気持ちになります。それに周囲を見渡しても、他のお客さんも同じように幸せそうに見えます。そもそもホテルバイキングで、険しい顔の人を見かけた記憶がありません。

なぜ食べ放題に来ると、みんな楽しそうなのでしょうか。それはおそらく心理効果の1つ「気分一致効果」の影響だと思われます。美味しい料理をたらふく食べて、食欲が充たされているからこそ、自然と笑顔になるのでしょう。

【気分一致効果】Mood congruency effect
その時々の気分や感情に見合った情報に目が向きやすくなる、あるいは関係した記憶を思い出してしまう効果。良い気分の時には良い情報を、悪い気分の時には悪い情報をよく思い出します。

●具体例
イライラした気分で街中を歩くと、緊急事態宣言が出ている最中に県外から来たナンバーの車にイライラして「自粛しろ」と怒り出してしまう。一方で、機嫌がいい時には自粛の最中でも営業している店を見つけると意気に感じて、ついつい買ってしまう。スピリチュアルな世界では「引き寄せの法則」と呼ばれているようです。ところが、筆者の故郷・大阪では雰囲気が一味違います。大阪新阪急ホテルにある関西最大級のグルメバイキング「オリンピア」では、お店の開店前に入り口で順番を待つお客さんの雰囲気は、さながら「戦場に向かう武士(もののふ)」といった趣きです。

ほとんどの人が「元を取りたい」と考えているので、母親が指揮をとって、父親に「あなたはローストビーフ」、息子に「あなたはお寿司」、娘に「あなたはフォアグラ」と作戦指導をしている光景を本当に冗談抜きで目にします。

開店時間を迎えてスタッフの案内で着席したとたん、まるで悪魔が獲物を漁るかのような勢いでお目当ての品に向かってみんな飛び掛かかります。それが最後の最後まで続くのですから、正直ちょっと怖い。ただし、大阪では日常茶飯事です。

あわせて読みたい

「外食」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    GoTo見直し 協力体制みえず幻滅

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    GoTo停止の是非を論じる無意味さ

    木曽崇

  3. 3

    医療崩壊を煽る報道に医師が怒り

    名月論

  4. 4

    松本人志のGoTo巡る案に賛同続々

    女性自身

  5. 5

    みんなで隠蔽した近藤真彦の不倫

    渡邉裕二

  6. 6

    宮迫&中田&手越共演で「TV崩壊」

    かさこ

  7. 7

    コロナ禍で缶コーヒー離れが加速

    文春オンライン

  8. 8

    政府の問題先送り まるで戦時中

    猪野 亨

  9. 9

    新井浩文が語った「性的武勇伝」

    文春オンライン

  10. 10

    欧州の学者 日本と差は「民度」

    WEDGE Infinity

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。