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とてつもないサイ・ヤング賞の重み 2位のダルビッシュ有と前田健太にあっぱれ!

イラスト&題字 まんしゅうきつこ

やりましたねぇ、ダルビッシュ有選手! 前田健太選手! ナショナルリーグとアメリカンリーグのサイ・ヤング賞の投票で2位ってすごい! ご本人は1位にならなかったことを悔しいと思っているでしょうが、来年以降、是非取っていただきたいものです。今年の成績と記者による投票結果(ポイント)は以下の通り。

【ナショナルリーグ】
1位:トレバー・バウアー(レッズ):5勝4敗、防御率1.73、100奪三振→201ポイント
2位:ダルビッシュ有(カブス):8勝3敗、2.01、93奪三振→123ポイント

【アメリカンリーグ】
1位:シェーン・ビーバー(インディアンス):8勝1敗、1.63 122奪三振→210ポイント
2位:前田健太(ツインズ):6勝1敗、2.70 80奪三振→92ポイント

ビーバーについては「そりゃあなたがアメリカンリーグ最高の投手でしょうよ」とは思うものの、バウアーとダルビッシュってここまで差がつくものですかね。だってダルビッシュって最多勝投手ですよ。バウアーの防御率はまぁ~1点台というインパクトはあるものの、チームの貯金に「+1」しか貢献しなかった投手とここまで差がつくのは違和感があります。

Getty Images

トランプ大統領だったら「フェイクニュースばかり出している記者の陰謀だ! 私は勝利した!」なんて言いたくなるところでしょうが、ダルビッシュがそんなこと言うわけがない。前田とともにお見事、あっぱれです。

今年のMLBは60試合制でした。こういう計算がアホなのは分かりますが、仮に162試合あった場合、ダルビッシュは22勝8敗、251奪三振。前田は16勝3敗、216奪三振となります。なんという成績! 余談ですが、2018年のプロ野球オープン戦、阪神のウィリン・ロサリオが3試合で2本ホームラン打ったところサンスポは「シーズン95本塁打ペース」と書きましたが、これはあまりにも荒唐無稽過ぎました。結局ロサリオは8本しか打たなかったです。

アメリカで感じた「サイ・ヤング賞」のすさまじさ

Getty Images

さて、サイ・ヤング賞の価値は日本では沢村賞と並べられることが多いですが、ここでは私がサイ・ヤング賞のすさまじさを初めて知った時の話をします。いいですか、ダルビッシュと前田(特にダルビッシュ)はこれに近いことをやらかしたのです。

もちろん、サイ・ヤング賞の獲得者が凡庸な成績を挙げることもありますが、そういう年はとんでもなく打高投低だったりするわけです。相対的にその投手が両リーグのNo.1であることは間違いありません。

中川淳一郎

写真は、1988年シーズンが終わり、89年シーズンを迎える直前のMLBの「イヤーブック」の表紙です。前シーズンを振り返ったうえで今シーズンの展望を述べ、全チームのメンバーを数字とともに紹介するのです。はい、表紙はナショナルリーグのサイ・ヤング賞を受賞したロサンゼルス・ドジャースのオレル・ハーシュハイザーです。

私はハーシュハイザーのすさまじさをまざまざと15歳の時に見せつけられたため、「サイ・ヤング賞ってすげー!」とすっかり刷り込まれてしまったのでした。この年、ハーシュハイザーは59イニング連続無失点というとんでもない記録を打ち立てました。そして、成績は以下の通りです。

【レギュラーシーズン】
35試合登板、267イニング、23勝8敗、防御率2.26、178奪三振、

【プレーオフ(vsメッツ)】
4勝3敗でドジャースの勝ち。4試合登板(うち1回はリリーフ)、24.2イニング、1勝0敗1セーブ、1完投、1完封、防御率1.09、15奪三振

【ワールドシリーズ(vsアスレチックス)】
4勝2敗でドジャースの勝ち。2試合登板、18イニング、2勝0敗、2完投、1完封、防御率1.00、17奪三振

レギュラーシーズンでの凄まじさはあったものの、ポストシーズンでの圧巻の働きがあったからこそ、ハーシュハイザーはもう満票に近い形でサイ・ヤング賞を取ったのでしょう。今年については、もしも1回戦で負けたカブスがもう少し先に進み、ダルビッシュが圧巻のピッチングをしていたら、サイ・ヤング賞はもしかしたらダルビッシュに……との期待も持ていたわけです。

なお、1988年のアメリカンリーグのサイ・ヤング賞はツインズのフランク・バイオーラで、35試合登板、255.1イニング、24勝7敗、防御率2.64、193奪三振です。ナショナルリーグでハーシュハイザーに次ぎ活躍した投手はレッズのデニー・ジャクソンで、35試合登板、260.2イニング、23勝8敗、防御率2.73、161奪三振でした。

ちなみにこの年のナショナルリーグのMVPは、ハーシュハイザーの同僚・カーク・ギブソンが獲得しました。上記イヤーブックの表紙の右下には「Who was the REAL NL MVP?」と(プレーオフで対峙した)メッツのダリル・ストロベリーとギブソンの写真が出ています。つまり、ギブソンはMVPに値しないんじゃね? むしろストロベリーこそMVPだろうよ? ということをこの雑誌は言っているわけです。

ギブソンについては、ワールドシリーズ初戦の9回裏、代打(ふくらはぎと膝の故障で先発せず)でサヨナラホームランを放ったことも大きなインパクトを与えたのでは、という疑念もあります。サイ・ヤング賞とは関係ないですが、2人の成績を挙げますね。結局記者の主観なわけで、どう考えてもストロベリーの方が上でしょうよ? ドジャースもメッツも地区は制覇しているわけですし。この記者の主観というヤツが、今回のダルビッシュが受賞できなかったかもしれない原因かもなぁ……なんて、邪推したくなるわけです。ギブソンは白人でストロベリーは黒人だから、なんてことも私は当時思ったものです。

ギブソン  :542打数157安打 .290、25HR、76打点、31盗塁
ストロベリー:543打数146安打 .269、39HR、101打点、29盗塁

「オレのキャリアはここから下がるだけだ」サイ・ヤング賞の重み

さて、ハーシュハイザーのこの後は、翌年の15勝15敗、防御率2.31という立派な成績はありつつも、それ以降、防御率は3点台中盤から4点台中盤を10年間続けます。11年目の2000年はドジャースに復帰するも1勝5敗、13.14の成績でこの年限りで引退。インディアンス時代の1995年の16勝6敗、3.87、96年の15勝9敗、4.24、97年の14勝6敗、4.47は強力打線のお蔭で勝利数は多かったものの、サイ・ヤング賞を受賞した年とその翌年ほどの輝きは完全に失われました。

中川淳一郎

そこで、重い発言が、本稿で紹介したMLBのイヤーブックで紹介されたサイ・ヤング賞受賞後のハーシュハイザーの言葉です。

「オレのキャリアはここから下がるだけだ。59イニング連続無失点とポストシーズンでの3勝に比肩するようなことはオレにはもうできない。もうここからは下がるしかないんだ」

この言葉通り、ハーシュハイザーはこの年を超える成績を挙げることは生涯ありませんでしたし、いかにサイ・ヤング賞が重い賞かを示したのでした。もちろんグレッグ・マダックスとランディ・ジョンソンのように4年連続で受賞するとんでもない投手はいるものの、あのハーシュハイザーでさえ1回。それで燃え尽きてしまった感もあるし、上記のような諦観にも感じるようなコメントを出しています。この時彼は30歳。

ダルビッシュと前田には今回2位だったことを発奮材料にし、「これからオレらは上向くだけじゃ、ガハハハハ!」と来年以降のサイ・ヤング賞受賞を狙って欲しいものですね。

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