- 2020年11月13日 16:39
学生緊急支援の成果と課題。今後必要な学生支援とは何か?
1/2今後必要な学生支援とは何か?
前期に行われた「緊急支援」の成果を振り返りながら、今政府に求められる学生への支援策について考えていきたい。
学びの継続の実現

学生も含めた一律10万円の特別定額給付金や、困窮学生を対象に10万円or20万円を給付する学生支援緊急給付金をはじめ、さまざまな緊急支援策が打ち出された前期。
結果としては、文部科学省の調査によると、国公私立大学などの学生の今年4~8月の中退率は0.38%で、昨年の同時期と比べて0.1ポイント減とほぼ横ばい。中退の理由では「経済的困窮」が23.1%で最多だったが、昨年の同時期(22.1%)と比べても大きな変化は無しとなった。
基本的には、新型コロナウイルス感染拡大の大きな影響による「コロナ退学」を防ぐことに成功したことは大きな成果と言って良いだろう。
一方で、今年度の前期授業料の納付を猶予された人は20万4685人で全学生に占める割合は6.76%。昨年度の13万9015人(4.52%)を大きく上回っており、今後も継続的な支援が必要な状況になっている。
では具体的にどのような支援策が必要か、それぞれ見ていこう。
(困窮学生への支援)次は一律支援より困窮世帯への重点的支援が必要

前期では、スピード重視、感染拡大防止の観点から、一律での現金給付が求められたが(「迅速に一律で10万円以上現金給付を実施して欲しい」。緊急学生アンケート 2020.03.27 室橋祐貴)、これまでの調査によって業種や世帯所得別の経済的影響の差も明らかになってきており、今後は特に影響の大きい困窮世帯への重点的支援が必要とされる(ただし、中間所得層にも大きな影響が出ており、家計急変世帯への臨機応変な支援が求められる)。
具体的には、下記のような支援策が考えられる。
・困窮世帯への追加給付(ひとり親世帯臨時特別給付金の再支給、児童扶養手当の増額、緊急小口資金貸付などの返還免除の拡大等)
・一人暮らし学生も住居確保給付金の対象に
・給付型奨学金、授業料減免措置の拡充(新大学1年生も)
特に三番目の給付型奨学金、授業料減免措置の拡充は、これまで政府からの支援に加え、大学が独自に学生支援を行っており、例えば関西学院大学は総額10億円もの学生支援を行っている。
しかし、寄付金を集めて実施したケースが多いため、今後追加支援が厳しく、政府による支援策が求められる。
大学院生への支援

次に、研究活動への大きな影響が出ている大学院生。
これまで何度か記事で紹介している通り、コロナ禍で研究に支障が出ている博士後期課程の学生への支援は進めてもらっているが、そもそも平時の大学院生への支援が非常に乏しく、今回「学生支援緊急給付金」は大学院生も対象になったが、給付型奨学金(修学支援新制度)は対象外になっており、平時から大学院生を支援の対象にしていく必要がある。
学術振興会特別研究員(DC)の皆様からの要望、コロナの影響による採用期間延長に伴う生活費に充てる研究奨励金の追加支給、来年度予算に計上へ!
— 三浦のぶひろ (@miura_nobuhiro) November 10, 2020
その上で財源見積のため、10月下旬までにアンケート調査。約4割の方が追加支給申請予定との結果。
財務・文科省と連携し、確実に届くように詰めます! pic.twitter.com/dYJMeuExJl
関連記事:「コロナ禍で研究できない若手研究者に支援を」若手研究者らが予算を要望(室橋祐貴)
先日NHKでも「大学院の博士課程学生数 ピーク時の半分に」という記事が出ていたが、主要先進国で博士号取得者が減っているのは日本だけであり、早急な待遇改善(経済的負担軽減、アカデミックポスト等の拡充)が求められる。
