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田中文科相による大学の不認可と大学教員の雇用について  

 田中眞紀子文科相がこれまでの慣例を無視して、大学設置・学校法人審議会の答申を覆して、秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大の3つ大学の新設を不認可としたことがいろいろ話題になっているので、今日はこれについて少し。

 私も記事を提供させていただいているBLOGOSでも、かなりの方がこの問題について言及しており(ここがBLOGOSの最も良いところだと思いますが)、正反対の意見も提示されており、いろいろ関心を引かれたが故の今日のエントリーです。


1 板垣氏の意見

 田中大臣の擁護者として、私が最も興味が引かれたのが板垣英憲氏の「田中眞紀子文科相は、宿敵・文教族のドン森喜朗元首相が持つ『新設大学利権』獲得にNOを突き付けた」です。

 正直、板垣氏の書かれる記事はどうも「陰謀論」的な感じが強く(中国体制維持のために日本アイドルを利用?)、今回も「文教族のドン」森喜朗元首相(元文相)の牙城である「私学利権」の支配に対抗した、外務大臣を辞めさせる様、小泉首相に進言したのが、森元首相でその時の逆襲の様な書かれ方をしております。

 これらについては、現時点で確証がないので、何とも言えませんが、板垣氏の指摘しておられる「『大学屋』と言われる『学校経営』を商売にしているプロのビジネス集団」の利権(国からの補助金、文科省幹部の天下り先の確保、教員の職を狙うマスコミ関係者など)はまさにその通りかと思います。

 その上で、板垣氏は、大学側が「正式認可も下りていないのに、先走って、学生募集や施設拡充建設などを進めていた」ことがおかしいとしております。


2 大屋氏の意見

 これについては、大屋雄裕名古屋大学大学院法学研究科准教授が「大学の人事とスケジュール(1)」「同(2)」で教員の採用などに関連してスケジュール的に無理だという指摘をされておりました。

 私が大変興味を引かれたのが、立場が違うと人は全く違う見方をするということです。大屋氏自身も、「『現状としてこうなっている』という話が中心でありじゃあその仕組みでいいのかどうかというのはまた別の話であるという点をお断りしておく」と書かれているとおり、大屋氏の意見はあくまで現状から見た場合不利益を被るものが多いから問題だという指摘になっております。

 これは大変よく分かる話で、大学で教員をなさっている大屋氏にしてみれば当然そういう話になるかと思います。また大屋氏は教員が「専門分野ごとに人材として分かれていて代替可能性がごく小さい」という指摘をされ、「民法の中でさえ家族法学者と財産法学者では互換性が乏しい」としておられます。

 これも研究者の立場としては大変理解できる話で、学生のために、本当の専門の教員を揃えるべきだという主張で、確かに一理ある主張かと考えます。


3 学生側の視点

 ただ、これはあくまでも研究者側の視点で、他から見るとかなり異なります。具体的に言えば、一般の学生がどこまで求めているかという話です。例えば司法試験の予備校に行けば、民法の教師は民法を教えているわけですが、家族法だけを教える教師がいるかという話です。

 それに大学の教官が何故そういう話をしたがるかというと、特定の条文のみを研究している方もよくおられ、1つ2つの条文の解説だけで1年の講義を費やす方もいるからです。学生が研究者になろうと思っているのなら別ですが、最高峰の1つである司法試験を目指すにあたり、はっきりいってこうした教え方はあまりプラスになるとは思いません。

 学生にしてみれば、司法試験なり、社会に出た後に必要な知識を身につけるために大学に来ている方が大半なので、そこまで専門の方が必要なのかという話です※。

※ こういうことを書くと大学では単なる実用的なことだけでなく、考え方というか思考を鍛えるとでもいうべき、より深いものを教えているのだということを言われる方がいます。全面的に否定する気はありませんが、そのためには学生にもそれだけの質が要求されるわけで、現在の大学生の内、どれだけの割合の学生がそれにあてはまるのか、個人的にはかなり疑問です。


4 教員の採用の問題

 つまり問題は教員を採用する際に、正規職員をして採用するのでなければ、良い人材が集まらないとなっているところにあるわけで、一度雇ってしまえばなかなか首にできないから、良い人材を必死に集めようとする、すると時間がかかるという話かと考えます。

 解雇できない結果、大学には10年1日の如く同じことを話すだけの教官や、能力に問題があるのではないか(あくまで私の個人的感想ですが、大学生時代に記者から教官になった方がおられましたが、かなりひどく、正直能力を疑いたくなるほどでした)という方もおられます。

 なお、念のため補足しておきますが、当然大多数の大学教官はこのような事はなく、あくまで一部の方の話です。

 こうしたことを避けるためには、昔から言われていることですが、教官の査定を厳しくしたり、流動性を高めるなどの方策が考えられますが、こうした改革は一向になされてきませんでした。

 スケジュールが間に合わないのは、斯様に正規雇用中心で考えるからであり、非正規もしくは長期間の試用期間という形での採用を考えれば何もこうしたスケジュールにこだわることはありません。

 特に散々ポスドクで問題となっているように、博士号をとっても就職口がなく、困っている方も大勢いるわけですから(大学院卒の現実周知)、こうした方を活用するという方法もあるかと思います。


 つまり、思うにこの話はつきつめていけば、城繁幸氏などがよく提唱しているように、既得権益を持った正社員と、それに対抗しようとしている若者(非正規社員)という話になるのかもしれません。


 そして、そうした既得権益の最たるものが、先に板垣氏の指摘した「大学利権」を持っている方々という話になるのかと思っております。

 なお、最後に補足しておきますが、ちなみ今回私がこういうことを書けるのは、現在大学から、離れたところに身を置いているからで、これが大学などから利益を得る「既得権益者」となったら、多分全く違うことを書いていると思います。

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