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原発処理水、日本海溝放出検討を

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▲写真 福島第一原発の処理水タンク(2020年2月26日)
出典:IAEA Imagebank(Photo by Dean Calma / IAEA)

石井正(時事総合研究所客員研究員)
「石井正の経済掘り下げ」

【まとめ】

・政府が処理水「海洋放出」決定を先送り。放出はIAEAも容認。

・日本海溝放出で「沿岸漁業の負担極小化」「EEZ内で完結」。

・頑丈なホース敷設は高コストだが、風評被害のコストを相殺。

東京電力福島第1原発から出る汚染水を浄化した放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出をめぐる意思決定が先送りされた。

政府は、原発敷地内のタンクに貯蔵している処理水が2022年秋ごろには満杯になる上に、実行までに2年程度の準備期間が必要なため、決定を「先送りすることはできない」(菅義偉首相)と強調。10月27日に関係閣僚会議を開き、処理水を海洋放出する方針を決定する予定だった。

しかし、全国の漁連関係者の理解を十分得るための時間がなお必要と考えて延期した。併せて、この決定は国内外で摩擦要因となる恐れがあるため、あえてこの時期に決めることは得策でないと判断した模様だ。

原発敷地内のタンクに貯蔵している処理水には、除去が難しい半減期12年の放射性物質トリチウム(三重水素)が含まれている。ただ、福島第1原発の処理水に含まれるトリチウムを1年で海に流しても、周辺住民の年間被曝線量は自然界から受ける線量の1000分の1未満にとどまるとされており、国際原子力機関(IAEA)もこの海洋放出案については「技術的に実行可能で、国際的慣例にも沿っている」と肯定的に受け止めている

▲写真 放射性物質を取り除く浄化処理されたALPS処理水(2020年3月16日)
出典:経済産業省資源エネルギー庁ホームーページ

しかし、風評被害を抑え込むことは容易ではなく、収まりかけている沿岸漁業などへの被害が再度拡大する公算は大きい。

政府はこれまで処理水について、水で薄めて海に流す「海洋放出」、蒸発させて大気中に放出する「水蒸気放出」、「海洋放出と水蒸気放出の2案の併用」とする3つの案に加えて、地下への注入や埋設水素に変えての放出なども検討した。ただ、過去に実施例もあり、技術的にも現実味のある「海洋放出」と「水蒸気放出」を軸に検討し、海洋放出する方針を固めている。

海洋放出については、福島市の木幡浩市長が、福島県沖で放出すれば、「風評被害を受ける」とした上で、「タンカーで、影響の少ないところで実施すべきだ」などと主張、「福島第1原発の発電で恩恵を受けたところで放棄するのが筋」として、首都圏などでの放出を暗に求めている。

風評被害を少しでも軽減させようとタンカーでの遠洋運搬・放出などの案が出てくるのは無理もない。現行プランでは、沿岸部分での放出となるため沿岸漁業に風評被害が広がる可能性は小さくないためだ。

そこで検討対象にもなると目されるのが、強く丈夫なホースで沿岸部分から外洋に延々と持ち出し、深い日本海溝に放出する手法だ。日本海溝は本州の太平洋側沿岸から約200km離れており、深さは最深部が8020メートル。太平洋の平均深度は4188メートルなので、広い太平洋からみれば本土から比較的近いところに極めて深い海が存在する。

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