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最初から勝ち目のない勝負に出るのはチャレンジとはいえない

ちきりんさんの家電業界の経営をばっさり切るブログに、やまもといちろうさんが補足というか、また違った視点を展開されていたのですが、シャープの件以外はほぼ賛同いたします。家電業界が誇る経営軽視の歴史ちきりん女史が家電業界に関していい感じで煽っていたので: いずれも参考になりますが、ちきりんさんの情報家電の経営者が「デジタル化の経営的な意味合いを理解しなかった」という指摘は良い点をついていると思うし、またやblまもといちろうさんの次の点の視点は、今後の日本の経済の流れを端的に抑えていると感じます。
恐らく次に来るべき日本の姿は商人国家、商館立国、債権大国といった、よりマーチャンティズムに寄った海外への投資と回収、そこで得た金で日本国内の経済や社会保障を回す仕組みだといえるでしょう。

産業をざっと分けると、部品や素材といった、あるいはOSなんかも含めていいと思うのですが、まずは川上の産業があります。それを加工し製品化する製造業を中心とした中間の産業があって、それを販売したり、サービスを提供する、昨今ではスマホなどのアプリの提供も含まれると思いますが、川下の産業があります。

そして、川上と川下は利益はでるけれど、真ん中の産業は利益のでない産業になってしまたというのがスマイルカーブと言われるものです。 利益率をグラフ化すると、右端の川上と左端の川下が高く、真ん中が下がって、まるでニコニコマークみたいになっているので、スマイルカーブと言われています。

部品や素材といった川上は技術競争、品質競争がまだ効き、利益も取れます。そして幸いなことに、この分野は、もちろん韓国や中国からの脅威を受け続けているものの、まだ日本が市場を独占していたり、リードしている分野が多いのです。 だからiPhoneやiPadなどを分解しても、結構日本の部品が多数使われています。

しかし、中間に挟まれた産業は、人権費の安い海外と競争優位に立つことは非常に難しくなっています。品質も、デジタル革命の影響もあって、ほとんどが設備投資で決まる時代になってきており、ますます差が縮まってきたのです。 人件費や諸々の経費が高く付く日本は極めて不利で、投資が中国やASEANといった労働力の安いところに投資も集まり、ますます日本での製造が不利な状況になってきています。 だから、今ではいくらモノづくりニッポンだと言っても、長期的に見て、日本に残る可能性があるのは研究開発機能で、製造は海外に移ってきます。少々の円安になってもその程度ではスピードを緩めるぐらいの効果しか期待できないのではないでしょうか。

その製造拠点の多くは、これまでは中国でしたが、今後はASEANに移り、ASEANからインドへ、中国へ、さらに欧米へと日本ブランドが輸出され、日本が得るのは現地法人への投資からの利益の還元、つまり輸出ではなく、所得収支のカタチになってきます。 問題なのは、部品や素材だけでは市場の規模が小さいことです。やはりもっと稼げる分野を見出していかなければそれこそ日本の経済の将来は暗いのですが、ビジネスチャンスがあるとすれば川下の産業の方です。

そちらのほうが利益がでるのですが、新しいチャネルを開発していくパワーがいまのところ不足しています。流通業の海外進出ラッシュが起こってきていますが、まだまだ弱いというのが正直なところでしょう。

あるいは医療機器のように、モノだけでなく臨床データや、教育訓練、情報提供サービスが差別化につながってくる分野、つまり川上から川下までを統合した分野などは日本の狙い目になってきます。しかし、こちらは欧米の企業と、もろに勝負になってきます。
ちょっと見方が違うなと思うのはシャープの件です。液晶に集中投資し、賭けに出た、それを批判していてはダメだろうというのが、やまもといちろうさんですが、どうでしょうね。
シャープの経営難をバーカwwwと詰るのは簡単です。ただ、いろいろな経緯はともあれ、液晶こそが次世代の表示系パーツの切り札として経営資源を液晶に集中し、リスクを取りにいった経営を否定するのは良くないことかとも思います。

積極的にリスクをとり、新しい分野にチャレンジするというのは産業の活力そのものです。新しい分野、新しいビジネスは、まだ誰もやったことがなく、市場も未知数なので、不確実なことばかりです。だからリスクも高いのですが、成功すれば利益が高く、ハイリスク、ハイリターンの構図となってきます。

しかし技術的に成熟してくると、市場での経験から得られた情報も豊富、ライバルの技術開発の今後のスケジュールまである程度予測できるようになります。不確実なことがあまりないために、リスクが低いように見え、経営の意思決定もしやすくなってきます。ただ落とし穴が待っています。技術が成熟してくると、どんどん海外ブランドからキャッチアップされてくるので、恐怖の価格の滑り台の世界にいやがおうでも、追い込まれてしまいます。

技術や市場が成熟期を迎え、市場が赤字の血の海になっていくことが予見されている世界に突っ込んでいくのは、それはリスクを取った、賭けに出たというよりは、無謀な暴走だったのじゃないか、それは賭けにでたといよりも、自社の技術を過信し、成熟から逃れるイノベーションへの投資を行なうことを怠ったとしかいいようがないと感じます。

自社の製造を捨て、より低コストな海外生産に軸足を移し、ブランドが効く程度のプレミアム価格で売って利益を出していれば、また次の一手も見えてきたのではなかったのかと感じてなりません。

長い歴史を俯瞰すれば、産業は栄枯盛衰の繰り返しというのが現実で、情報家電もそのひとつでしょう。その敗北を謙虚に学び、教訓として、次の稼ぎ頭となる産業に勇猛果敢にチャレンジしていく活力が日本にも残っていると信じたいものです。

そのためには、無難な選択のように見えてずるずると落ちていく経営ではなく、リスクにチャレンジする情熱や意欲をもった、もっと若い経営者にバトンタッチしていく新陳代謝の風が吹いてくることを期待したいところです。

いっそ経団連も定年制度を採用し、高齢な方々は特別顧問として若いリーダーを脇から支えるようにすればと感じる今日この頃です。

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