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《山口組分裂抗争 尼崎発砲事件》「潰すまでやる」白昼堂々通行人に血しぶきが飛ぶ惨劇! 司忍組長の出身団体が実行役を出した真の意味とは - 稲本 千晴

 全国最大勢力を誇る暴力団・6代目山口組と5年前に分裂した神戸山口組の抗争が止まらない。

【画像】山口組の強硬姿勢は高山清司若頭(73)の主導という見方が強かったが……

 11月3日、兵庫県尼崎市で神戸山口組3代目古川組の仲村石松組長(64)と親泊吉広舎弟頭(61)が銃撃され、重傷を負う事件が起きた。白昼の住宅街で飛び交った凶弾は少なくとも3発。仲村組長は両足の太ももを撃たれて大腿骨が粉々になり、舎弟頭も左手を打ち抜かれた。2日後に逮捕されたのは、山口組の傘下組織幹部だった。

「山口組と神戸山口組は昨年来、互いに意趣返しのような事件を起こし続けている。今年1月に双方を『特定抗争指定暴力団』に指定したが、警戒を強める中で今回の銃撃は起きた。危機感はこれまで以上に強い」と警察幹部は言う。


白昼の住宅街で飛び交った凶弾は3発 ©時事通信社

通行人に血しぶきが飛び、路上に血だまりが広がる惨劇

 乾いた銃声が響いたのは午前11時35分ごろ。現場は仲村組長の自宅そばにあるコンビニ前の歩道だった。

「パン、パンという音がして外を見たら電柱の脇に血だらけの男性が倒れていた。普段から子供らも盛んに通る場所。怖くて仕方ない」(近くの主婦)

 通行人に血しぶきが飛び、路上に血だまりが広がる惨劇に加え、現場からは2人組の男が拳銃を持ったまま逃走。近隣住民らは震え上がった。

 事件の背景に何があるのか、地元暴力団周辺者が語る。

「抗争が収まる気配がないどころか、襲撃した山口組にとっては『警察の警戒など関係ない』と宣言するような事件やな。仲村親分は神戸山口組の若頭補佐で直参を務める幹部で、山口組側にも明確な思惑があったんは間違いない。厳しい捜査の手が伸びることも分かってたやろ。一方の兵庫県警は実行犯の逮捕がスムーズにいかずピリついとるわ」

 捜査当局や暴力団関係者の間では、山口組が「神戸山口組に対する攻勢の手を一切緩めるつもりがない」という姿勢を改めて示した事件との見方が大半だ。

警察は「もう一人はどうしたんや!」と怒鳴り散らした

「仲村組長らは事件の直前に岡山県警を名乗る男から『話が聞きたい』と電話で呼び出され、コンビニまで来たところを至近距離から撃たれている。実行役の2人は事件の1時間ほど前に近くのドラッグストア駐車場に黒いワンボックスカーを止めてじっと待機していた。狙撃後はすぐに車で逃げ、その車も近くで乗り捨てている。直後に警察が敷いた緊急配備の網もくぐり抜けて逃走しており、明らかに組織の意向を受けた周到な犯行だ」(捜査関係者)

 そして事件は2日後の5日、6代目山口組の2次団体「3代目司興業」幹部の藤村卓也容疑者(52)が尼崎南警察署に出頭し、殺人未遂容疑で逮捕されるという展開を見せる。

「前日までに山口組側から兵庫県警に実行犯を出頭させるという連絡が内々にあったようだ。出頭させることで、組としての姿勢を示す犯行声明的な意味も持たせることができるからな。しかし実際に出頭したのは1人だった上に、道具(拳銃)も持っていなかった。警察としてはあてが外れ『もう1人はどうしたんや』と怒鳴り散らしたらしい。結局2人目は出てこず、県警はそっちの方をより重要人物ではないかとみて必死に行方を追っている」(暴力団関係者)

 結局、藤村容疑者は逮捕3日後に拳銃を捨てた場所を供述。兵庫県警は大慌てで神戸市長田区の新湊川を捜索し、8日深夜になって川の中から回転式の拳銃1丁を見つけた。11日には同じ司興業幹部の加藤伸治容疑者(54)も尼崎南警察署に出頭。事件発生から1週間余りで実行役2人の逮捕にこぎ着けた兵庫県警だが、この時も前日から「出頭打診」の情報が飛び交い、捜査側は振り回されることになった。

「司忍組長の出身団体が実行役を出した」ことの意味

 そんな中、実行役の所属団体に注目するのは山口組系の元組員だ。

「司興業は山口組の司忍組長(78)の出身団体で、今も中枢の傘下組織。そこが実行役を出したのであれば、いよいよ山口組を挙げて神戸山口組を叩き潰すという意思表明にも見える。山口組の強硬姿勢は2019年10月に刑務所を出所した高山清司若頭(73)の主導という見方が強かったが、今回の事件はそれ以上であることを意味するのかもしれない」

中枢組織が離脱……弱体化が進む一方の神戸山口組

 撃たれた仲村組長が3年前から率いる3代目古川組も山口組との浅からぬ因縁がある。19年11月には古川恵一前組長が尼崎市内で山口組系の元組員に射殺されたのだ。自動小銃で30発の銃弾を浴びせられるという壮絶な事件だった。

「古川組はかつて尼崎で一大勢力を誇り、山口組に名を連ねた団体や。15年夏の分裂時に神戸山口組に参加したが、今の仲村親分は元々、同じ尼崎市内にある司興業傘下の組出身でもある。現山口組執行部から真っ先に標的に掲げられてもおかしない」(前出・地元暴力団周辺者)

 加えて、神戸山口組は今年7月ごろから複数の中枢組織が離脱を表明するなど、更なる内部分裂の様相を呈している。警察幹部は「山口組による切り崩しの結果でもあるが、神戸山口組の弱体化は進む一方。もはや山口組と真っ向から抗争ができる状態でなく、反撃する力も残っていないのではないか。これを機に山口組が攻勢を強めている可能性がある」と警戒感を募らせる。

抗争状態が長引けば神戸山口組の不利は明らか

 対立が特定抗争に認定された今年1月以降、山口組と神戸山口組は西日本を中心に10府県で「特定抗争指定暴力団」に指定された。組事務所の大半が使用禁止になり、対象エリアでは5人以上集まって歩いただけでも逮捕の対象になるという厳しい措置が取られている。コロナ禍も重なり、しのぎに窮した組員の離脱も進む。

「抗争状態が長引けば、体力のない神戸山口組の不利は明らか」と前述の警察幹部は言う。「特定抗争の指定期間は3カ月だが、このままでは更新を延々と続けていくことになる。解かれるのは、片方が消えるときしかない」

 血で血を洗う抗争の行く先は、弱者の滅亡しかなさそうだ。

(稲本 千晴/Webオリジナル(特集班))

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