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『電通と原発報道』(亜紀書房)の著者本間龍さんとトークしました

広告圧力の問題に切り込んだ『電通と原発報道』(亜紀書房)の著者で元博報堂営業部に勤務していた著述家の本間龍さんとトークしました。例によって宮台発言の一部を抜粋します。この本は当然ながらマスメディアではまったく紹介されていませんが、1万5000部以上売れています。

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宮台◇ こうした本の内容を伝えないことで、かえってマスメディアの権威が失墜します。原発推進勢力が情報を隠蔽することで、原発行政への信頼を失墜させ、かえって原発推進を困難にすることに似ています。

宮台◇ マスメディアを通じて日本国民は、日本にしかないデタラメな神話を信じ込まされました。「絶対安全」神話であり、「全量再処理」神話ないし「いつかは回る核燃料サイクル」神話、「原発は安い」神話などです。これらはパーフェクトなデタラメであることがバレました。

宮台◇ 僕たちが新聞報道やそれをベースにしたテレビ報道以外に時事ネタに接するチャンスがなかった時代には、重大な問題が「全く扱われなかった」「一面で扱われなかった」ということを知るすべがありませんでした。ところが、現在はインターネットメディアを通じて、それを知り得るようになりました。

 3.11以降は特にそうです。例えば、マル激などのインターネットメディアは炉心溶融の可能性を3.11直後から指摘していたのに、マスメディアがそのことを報じるようになったのは3週間近く経ってから。それも一部のマスメディアだけでした。

 新聞社は、東電のような大スポンサーの不祥事を一面に載せたら、事業として立ち行かなくなり得ますが、だからと言って、恣意的に扱いを小さくした事実が露見すれば、新聞としての信用が失墜し、購読者が逃げて墓穴を掘ります。現に墓穴を掘っていて、僕などは時間の無駄なので新聞を読みません。日本の原発行政がかえって原発推進を難しくしているのと同じ逆説です。その意味で経営判断は以前より難しい。そのことに経営陣がどれだけ気付いているかです。

宮台◇ 電通恐怖は、グローバル化や南北問題で本質である「附従契約」に似ます。僕たちが僻地に住んで交通手段がJRに限られるとします。そこでJRが運賃を10倍にすると通告してきます。抗議をすると、JRは「自由契約なんだから乗らなくてもいいんですよ」と言う。これは自由意思に基づく契約に見えて、実はJRが優越的地位を笠に着た(=優越的地位に附従した)契約です。だから法実務上は自由契約とは認められません。

 抽象的には、一方には選択肢がなく、他方には豊かな選択肢がある、という非対称性が問題です。南北問題で言うと、モノカルチャー(単一換金作物)化した貧困国には選択肢がなく、作物を買い上げる独占的ブローカーにはどこからでも買えるという豊かな選択肢があります。同じく日本のテレビ局には選択肢がなく、電通には豊かな選択肢があります。イギリスと日本の違いは、イギリスのテレビは「メルセデスがダメならワーゲンやBMWの広告」という具合に選択肢を持つのに、日本のテレビ局は「電通がすべてを引き上げるかもしれない」という具合に、電通に従属する以外の選択肢がないと感じる点です。

宮台◇ 単なる「お願い」でも、ヤクザが恐喝罪に問われないように「そう言えばあなたには小さなお子さんがいらっしゃいましたね」と言うのと同じ機能を果たします(笑)。

宮台◇ 電通はPA(パブリックアクセプタンス)の言葉を“洗脳方策”という意味で使っています。

宮台◇ 普段が思考停止なので「自明性が崩れる」という恐怖に襲われるように条件づけられています。特に「日本の電力の3分の1は原発で賄われている、それが失われれば日本は立ち行かない」という洗脳の呪縛はすごい。実際は54機が全機稼働しないと3分の1にならないから、真っ赤なウソなのですがね。

宮台◇ 以前、京都大学原子炉実験所の山名元さんをお呼びしたときに申し上げたように、原子力を持続可能にしたいのなら、どのみちバレるに決まっているデタラメな神話を喧伝することで結局は原子力行政に必要不可欠な信頼性を貶めてしまう愚策を回避すべきです。リスクマネジメントの基本である「マクシミン戦略」つまり「最悪事態の最小化」を心がけるなら、日本にしか通用しない馬鹿げた神話の流布をやめるのが賢明です。そのことは先進国の共通了解ですが、なぜ日本の広告会社はその判断ができないのですか。

宮台◇ マスメディアに多大な影響力を持ちながら、クライアントに言われたことはウソでも何でもホイホイやる。そうした軽薄さにペナルティを与える主体がどこにも存在しないことが問題ですね。

 でも手の施しようがないとは思いません。3.11以降、1ヵ月ほどは「空気の支配」に基づく厳しい「報道管制」がありました。ところが、炉心溶融の隠蔽や御用学者らによる安全合唱を続けた結果、結局は真実だったインターネット情報との間にギャップが拡がります。1ヶ月経ってそのことにマスメディアが敏感になり、大きなトピックは拾うようになりました。僕は誰がどんなに嫌がろうともラジオ番組で東電のデタラメを言い続けてきましたが、結局はそのことで僕もラジオ番組を信頼を獲得しました。

 この1年半、マスメディアとインターネットのギャップが拡大した結果、マスメディアの側がキャッチアップしようとして中身を変えてきました。ラジオ局の番組審議会で繰り返し述べてきたように、マスメディアが凋落傾向でインターネットが上昇傾向にあるため、マスメディアは、インターネットと戦うのでなく、マスメディアを利用することでインターネットの享受可能性が高まる方策を模索しないと、生き残れません。数年前から申し上げてきたそうした考えが、経営判断として採用されはじめたところに、希望が持てます。

宮台◇ マスメディアはもっと凋落するので、ビジネスモデルが立ちゆかず、どのみち吠え面をかくでしょう。まあ、待っていれば大丈夫ですよ(笑)。

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