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金を回せば経済がよくなるというサギ② 金持ちは消費しろだって!?

前回 はすごくシンプルにGDP至上主義による財政政策や金融政策がなぜ間違いかを書いてみた。もちろん、むやみやたらな財政政策や金融政策に反対する人は実は多い。ネット上ほど現実世界ではいわゆる「リフレ派」の主張は受け入れられていない。ところで一方に金持ちが消費しない(あるいは金持ち以外も含めて。たとえば若者でもよい)のが問題だという批判がある。これはどうだろうか?

ある街にお金持ちのAさんがいたとしよう。彼は今までは駅前のそこそこのお寿司屋やフランス料理でよく食事をしていた。街の仕立て屋さんで服をしばしば作っていた。が、景気の悪化とか言う問題以上に最近は安くておいしいもの安くていい服も増えてきている。お金持ちのAさんといえども安くていいものがあればそれを使ってみようと思うことは多い。

たとえばユニクロで服を買ったりチェーン店のお寿司屋さんに行くことも増えたようだ。当然ながら地元の駅前のお店は経営が苦しくなる。

「ああ、金持ちが消費しないから日本経済は疲弊するのだ」という主張が出てくる所以だろう。が、実際には上述のチェーン店やユニクロなどは利益をあげている。その会社の従業員や株主は恩恵を受けているはずだ。また、安くていいものを購入することができるようになったことで今まではAさんといえども月に一回程度しかいけなかった超高級なお寿司屋さんやフランス料理屋に月に二回いけるようになったかもしれない。これが二極化が進んでいる理由かもしれない。中間層の没落の所以か。当然ながらこのときにAさんはより多くの満足を得ているし高級店も儲かっている。実は産業構造・消費パターンの変化についていけなかった中間層のお店が文句を言っているだけなのかもしれない。

こう考えると金持ちが消費しないから・・・。というのは間違いであるように思われる。もちろん、安いものの多くは中国などからの輸入である。彼らは中国製品を購入する国賊だなどという人もいるだろう。(まあ、そういう人も安いからと言う理由で中国製品を買っていると思うが・・・)だが、中国人が豊かになれば彼らは日本製品を購入するか日本への投資を増やすだろう。だから、日本にとって一方的な不利ではない。それに中国製の製品にも日本製の高度な技術が必要な部品が使われているのも常識だ。

いや、そもそも金持ちは貯蓄を増やし消費量を減らしているのでは?との不満もあるだろう。が、以前述べたように日本の貯蓄率はドンドン低下していて今や先進国中でも最低だ。日本人が貯蓄に精を出しているから消費が盛り上がらないというのは事実にそぐわない主張である。(参考→貯蓄が不況の原因なのか?

仮に金持ちが消費量を減らしているのが事実としてもその原因を我々は考えないといけない。たとえば、日本の財政や社会保障への不安が彼らが消費を減らしている原因かもしれない。財政危機ともなれば一気に増税される可能性がある。資産課税はさすがにないとしても所得税その他が大幅に引き上げられると考えれば普通はより多く貯蓄するだろう。(もちろん日本外へ資金を送る可能性は高いだろう)

もし、金持ちに無理矢理消費をさせればどうなるだろうか?たとえば、金持ちが無駄に駅前のすし屋に毎日出前を頼んで食べずに捨てるというような想定をしてみよう。結果としてGDPは当然増えるかもしれないが金持ちにとっては当然不幸だ。また金持ちは無駄に消費することによって現時点あるいは将来に行ったであろう他の支出を減らす可能性が考えられる。長い目で見ればGDPを増やす効果も少ないかもしれない。寿司屋にとってはどうだろうか?まあ、それでも売り上げが増えれば彼も幸せかもしれない。が、こちらも長い目で見れば本当は必要とないサービスを提供し続けることになる。もし売り上げが金持ちが寿司屋に行く回数を減らしたことで落ちれば彼は新しいサービスを考えたり自分の腕を伸ばすことで売り上げを増やそうと努力したかもしれないが、そういうことが起こらない可能性が高い。これは経済全体にとっても彼自身にとってもマイナスだ。

このように考えると金持ちが消費しないのが不況の原因というのは間違いというのが容易にわかる。それに無理矢理金持ちに消費させることは実は全く経済回復には役に立たないどころか長い目で見ればマイナスの効果しかない。金持ちが消費しなければならない。そうすれば経済が上手く回るというのは全くの妄言である。

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