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堀潤氏「そろそろメディアは“ご祝儀報道”を止めてもいいのではないか」 バイデン政権、期待の一方で課題も山積か

 トランプ大統領が未だ“敗北”を認めず、不正投票を訴えて法廷で争う姿勢を崩さない中、新政権発足に向け準備を着々と進めているバイデン氏。

 トランプ大統領が離脱を決めた地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰する考えを示しているほか、 オバマ政権で副大統領を務めていたことから、政策の大きな方向性はその“バージョンアップ”になるとみられている。

 9日の『ABEMA Prime』では、同志社大学政策学部の松本明日香助教に話を聞いた。

■議会の状況によっては、格差是正に困難も…?

ーーバイデン氏が最大の勝因はどこにあったと考えられるか(平石直之アナ)

松本:バイデン氏の個人的な要素、政策、そしてトランプ大統領がいたからこそ、といった点に分けられると思うが、やはりオバマ大統領を支えた副大統領だった、ということで、急進左派や“反トランプ”の人たちが一緒に戦うことができた点が大きかったと思う。

トランプ大統領が“アウトサイダー”という形でやって来たのに対し、バイデン氏はワシントンD.C.の“インナーサークル中のインナーサークル”。政治家的な調整がうまかったり、安定した穏健派であるというのがポイントだ。民主党としては前回の(2016年)の大統領選の反省もあり、そのバイデン氏を候補者とすることで、共和党の一部も含む中間層の票を広く拾うことができたという面もあると思う。

ーーバイデンさんは「圧倒的勝利をありがとう」というようなことを言っていたが、トランプさんだって7000万票以上を取っている。(ライター・ヨッピー氏)

松本:新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う経済悪化がなければ、もしかするとトランプが勝利していた可能性もあったのではないか。ここからいかに景気を盛り返していくのかというところで手腕が問われると思う。

また、都市部=バイデン、地方=トランプという構図は今回も見られた傾向だが、日本の自動車産業などが工場を作ったりしているデトロイトなど五大湖周辺をバイデン氏が取り返したというのが前回のヒラリー氏とは違う点だった思う。

また、都市部についても内側にはスラム街を抱えており、豊かな人たちだけが集まっているわけではない。逆に地方でも、リベラル層の多い大学周辺では支持されているし、IT系などの方々だけでなく、海外から来られたばかりで英語を上手に話せない方、マイノリティの方からの支持も多かった。

ーーオバマ政権がトランプ大統領を生んだという指摘もあった。(池澤あやか)

松本:トランプ大統領を堅く支持していたのは女性も含めた白人層だったが、価値観の上でオバマ氏に対する何らかの抵抗を感じてしまったということが大きかったと思う。一方でバイデン候補は、そうした中で共和党に移ってしまった一部の白人を引き戻すために出てきた格好なので、今後もそこを取り込み続けていこうというのが民主党の考えではないか。

ーー『ウォール・ストリート・ジャーナル』などを読むと、起業家たちの間ではバイデン政権への期待の声があるようだが、オバマ政権で広がってしまった格差問題が再び開いていく可能性もある。カマラ・ハリスさんが副大統領に就任するということも含めて大変喜ばしいとは思うが、そろそろメディアは“ご祝儀報道”を止めてもいいのではないか。どの政権であったとしても、課題を厳しく追及するのが役割ではないか。(堀潤)

松本:『ウォール・ストリート・ジャーナル』は基本的に大企業をターゲットにしたメディアなので、そこで論じられる“経済の回復”は株価や大企業の業績の問題だ。やはり中間層や、貧しい層が体感する“豊かさ”と別軸の議論になってしまう。バイデン氏としてもそこを何とかしようと、税制改革などで大企業や富裕層に税金をかける動きを見せているが、議会の状況次第では難しくなっていくことも考えられる。

やはり4年にわたって耐えてきた民主党支持者、バイデン支持者、それから共和党の穏健派の今の喜びようは大変なものだ。ただ、トランプ大統領の票数もかなり伸びたところもあり、分断が続くのではないかと心配されるところだ。

■中東・中国政策ではオバマ政権の路線をそのまま引き継ぐわけにはいかない事情も?

ーー外交政策ではどうだろうか。日本も含むアジア情勢との関係は。(平石アナ)

松本:オバマ政権にかなり近い形になることが考えられる。まずパリ協定や国際機関に入り直すだろうし、対北朝鮮政策もオバマ政権時の高官が再び担当することになるので、かつての路線に戻っていくのではないか。一方、対中政策はそこまで大きくは動かないと思うが、民主党と共和党で安全保障に関するスタンスはかなり異なっているので、日本としてはアメリカの動きにどう対応していくかが問題になってくるだろう。

ーー日本の政治家でバイデンさんとつながりがある人はいるのか。トランプ大統領が拉致問題に協力してくれたことには感謝した方がいいと思う。(視聴者)

松本:バイデン氏は上院議員を36年間、さらに外交委員会(のメンバー・委員長)も務めていたので、日本とも様々なパイプはあると思う。北朝鮮の拉致問題については、実はトランプ大統領は当初、全く興味がなかったといわれる。それがアメリカ人の白人の大学生が殺されかけてしまったような状況になったがために感傷的になって動いていった。そこは世論の流れを汲み、すごい行動力を見せたと思う。

ーーオバマ政権では外国に爆弾を落とすようなことも多かったと思う(池澤)。

松本:よく“トランプ大統領は新たな戦争を始めていない”という指摘がある。確かにお金の無駄使いになりそうな新たな展開は避ける方向性があったので、そうした面は少なかったと思う。一方で、トマホークを打ち込んだり、イランを攻撃をしたりといった動きは実際にはあった。あくまで動き方の違いとも言える。

ーー我々にとっては 北朝鮮問題が大切だが、アメリカ国民にとってはイスラエル、中東問題は大きい。(カンニング竹山)

松本:第2次世界大戦後、多くのユダヤ人、イスラエル系の方々がアメリカに移ってきた。そうした経緯もあり、アメリカは親イスラエルの方が多い。一方で、最近では中東系移民も増えてきている。彼らもバイデン政権支持に回っているし、イスラエル、もしくは中東への考え方というのはアメリカの中でも意見が分かれているところだ。

ーー香港の若者たちの間では、バイデンさんになって対中政策が緩むのではないかという懸念がある(堀潤)

松本:おそらく“折衷案”という形になると思う。トランプ大統領が指摘した“中国脅威論”は民主党、バイデン支持者の間でも高まってきているので、オバマ政権初期のような親中路線で始めることは難しいだろう。

さらに、バイデン支持に回ってきたサンダースたち民主党内の急進左派が通商協定に関して批判的であるため、それによって中国からの圧力をかわそうという動きを取るのも難しい。日本も“新TPPに入りませんか?”と言うはずだが、どこまで動けるかというとなかなか難しいのではないか。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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