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「トランプが負けたら中国に征服される」とかいうデマに熱中するのは流石に情けなさすぎるんじゃないですかね。

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 投票後数日のすったもんだのあげく、ほぼほぼ次期アメリカ大統領はバイデン氏という情勢になってきたようです。

日本のネット世論では、「トランプが負けたらもう世界は中国に支配される暗黒時代が来るのだ」みたいなことを真顔で主張する人がたくさんいて、それゆえ米国直輸入の色んな陰謀論がそのまま流布されていたりする状況なわけですが。

しかし、その態度は非常に「アメリカ頼み」すぎるというか、

必死に「アメリカの犬」になることでしか自分たちは生きてはいけないのだという世界観

であるように私には感じられます。

「右」の人がそういう卑屈さを深いところで持ちすぎているから、「左」の人は国際情勢のリアリズムのへったくれもないようなやぶれかぶれの反米主義で吹き上がるしかない

・・・という戦後日本75年続いた不毛さの結晶が「トランプが負けたら日本は終わり」説なのではないでしょうか。

そもそも自分の国でもない選挙の結果で日本が「終わった」り「終わらなかったり」するという世界観自体がちょっと情けなさ過ぎませんかね?という事は、まず考えておくべき視点だと思います。

というわけで今回の記事では、今後少なくとも4年間続く「民主党アメリカ」時代に日本はどうやって自分たちの存在を世界情勢の中にねじ込んで主張していけばいいのか・・・という話をします。

その「あるべき方向性」は鬼滅の刃の大ヒットが本能的に教えてくれているかも?

1●イデオロギーを横において情勢を見られるプロの話を聞こう

今回の大統領選挙はアメリカでも過去最高の投票率となったらしく、内戦とか世界大戦とかがあった時代よりも高い関心を彼ら自身も持っていたし、世界中の、そして日本人の関心もかなり高かったですよね。

私は別にアメリカ情勢の専門家ではないので、今どういう状況なのかプロの話を聞きたい・・・と思って色んな人の発言を追っていたのですが、「アメリカ問題の専門家」っぽい人ですら何の根拠もなく

今回はトランプの(バイデンの)圧勝だ!

みたいなことを自分のイデオロギーに従って放言する人が多く(これは英語圏の書き手も結構そういう傾向があって日本だけの問題ではなさそう)、いったい誰を信じていいのやら?という感じでした。

ただ、マトモな学者さんとか、あとは「選挙の票読みのプロ」とかの人はイデオロギーに関わらず冷静に情勢を見極めていて、あまりにも「放言」しまくる人が多い時代に、少数の「本当のプロ」が目立つな・・・という状況ではありました。

普通の「学問」界で参考になったのはこの前田耕さん(ノーステキサス大学准教授)の連続ツイートで(上記リンクからツリーを追うと読めます)、逆に「選挙の票読み”業者”さん」で勉強になったのは、渡瀬裕哉さんという方のこの本でした。

渡瀬裕哉さんはご本人の「イデオロギー」的には結構ヤバい人というか過激な保守主義思想を隠しもしない人なんですが、「それはそれ、これはこれ」として票読みをキッチリやって、それだけでなく色んな政治団体同士の相互力学を読み解いて、「どういう人事、どういう政策が実現していきそうか」を分析する手腕が冴え渡っていました。

「プロ」と「そうじゃない人」をこういう状況で分けるのは、

「数字を並べる前にロジックがある」

ことだと私は考えています。今、パソコンをちょっとイジれば大量に「それっぽいグラフ」なり「それっぽい分析」なりをひねり出せる時代なので、非本質的な数字の羅列を次から次へと読者に投げつけて「数字で分析された間違いのない意見なのだ」という「印象」だけを振りまく人がたくさんいる時代になってしまっているんですが。

「プロ」はその「数字の羅列」を投げつける前に「この問題を理解する上で最も重要なロジックは何なのか」をちゃんと定義して、その上で整理された数字の比較をする。

最近では大阪都構想に関して事前に賛成派も反対派も「あまりにも非本質的な”数字”のなげつけあい」をしていましたが、大事なのはその一個一個の数字が「どういう意味を持つのか」を広い視野の中で理解することです。それについては最近書いたnoteが好評だったので良かったらどうぞ。

新型コロナウィルスなどの問題に「物理学者」がしゃしゃり出てくるといきなり「まず人体が完全な球体であると仮定する」みたいな前提を置いてしまう・・・みたいなジョークがあるんですが、渡瀬裕哉さんの本を読んでいて思ったのは、その「”球体に丸める単純化”をする前の部分」こそが現実世界では凄い重要なんだなという視点でした。

例えばアメリカ大統領選挙の「仕組み」を理解せずに漫然と丸まった支持率の数字を見ていても意味はなく、少なくともまずは勝敗に影響を与える激戦州それぞれをちゃんと分離して、一つずつに適切な数字を引っ張ってきて論じる必要がある。「ロジックが先」にない「数字」をいくら大量に投げつけても意味はないわけです。

「民主党アメリカ時代」において日本が取るべき道を探るには、その「イデオロギー的に”球体にまるめて”しまう」前のディテールを読み解いて、そこから生まれる力学をちゃんと利用していくことが重要です。

2●上院・下院・大統領の「トリプルブルー」にはならなかったことに注目するべき

たとえば、アメリカ大統領選挙の結果を見る上で、同時に行われる上院下院選挙の結果と「合わせて」理解することが、政治力学的には非常に重要だそうです。

大統領が民主党(今回はバイデン)になった上で上院下院の両方を民主党が押さえる・・・ことを「トリプルブルー」というそうですが、今回は上院がレッド(共和党優位)のままで終わる情勢です。

ここで「球体に丸めたイデオロギー的理解」しかできない人間だと

そりゃあネジレ国会で混乱して何も進まなくなっちゃうだろうな!やっぱりいけすかない都会のインテリどもが虐げられた白人労働者の気持ちをちゃんと汲んでやらないからダメなんだよ!

・・・みたいな結論に飛びつきがちなんですが、渡瀬裕哉さんに限らず色んな「米国政治のプロ」が言っていたのは、

今回あまりにも圧勝して安定的なトリプルブルーになってしまうと、 バイデン民主党政権において最大の問題は党内の極左勢力を押さえる力がなくなってしまうこと

だという話でした。

むしろ上院が共和党に握られていることで、「党内極左勢力の暴走」を抑えつつ、「トランプ時代の良くないところ」は全国民的合意として実行していく流れも可能になりうるという話で。

時代の流れで、企業や大富豪と言った大口献金者からでなく、「ネット経由で一口三千円ぐらいの献金を何千万人から」集める時代になったことで、昨今の米国政治は「両極化したネット世論」に左右されやすくなっています。

要するに「ネット右翼」「ネット左翼」さんの集団がそれぞれの党に直接影響力を持ちつつあるわけですね。

昨今サンダースやAOC(アレクサンドラ・オカシオ・コルテスさん)といった「急進的な左派グループ」が民主党内では台頭していて、そのグループとバイデン氏などの「民主党の主流派」との対立は年々厳しくなっています。

「サンダース派」と「民主党主流派」は今回の選挙に関しては「敵の敵は味方」的に協力しあう事になっていますが、もし「トランプ派」を完膚なきまでに叩き潰してしまった選挙結果になれば、むしろこの「極左vs穏健左派」の対立こそがアメリカ政治の最大の問題になってくるでしょう。

ちなみに私は「サンダース派」の言っていることの半分ぐらいには賛成という人間ではあります。世界一の先進国を名乗るなら国民皆保険ぐらいやりなよ・・・という気持ちはある。

しかし、現状は「挑戦者」だから許されていた非妥協的な態度を、これから「実際に権力を持った」時に柔軟に変えることができるのか?というのは非常に疑問に思っています。

トランプ派(と言われると否定するかもしれないが一応トランプに今回投票した層)には「左派の過激主義についていけない」という程度の穏健主義者も結構含まれていますが、「サンダース勢力」のエネルギーは、時にトランプ派をすら凌駕する「決して妥協しない純粋志向」になりえる危うさを秘めているからです。

実際、アメリカが現状一応は世界一の経済を実現しているパワーの大部分は資本主義のダイナミズムにあるわけなので、「その現実」を否定するほどの極左勢力の暴走を抑えられなくなると、結局「誰のためにもならない」結果になるでしょう。

逆にいえば「極左のエネルギー」を”適度にいなしつつ”中道派がうまく吸い上げられる状況になれば、人類社会全体として「ちゃんと理想が実現していく良い仕組み」が実現できると言えるでしょう。

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