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「馬鹿なのかな?」下っ端から順番にウェブ会議にログインしてエライ人を“お迎え” どうしようもないお作法をデジタルに導入した結果…… - 山本 一郎

 みなさん、「DX」の時代ですよ!

 最初に見たときはマツコ・デラックスのことかと思いましたが、正確には「デジタルトランス・フォーメーション」の略でありまして、要するに「お前らちゃんとネット使って仕事しろよ」という話であります。

「Zoom飲み会」は残業代を請求しましょう

 そういえば、コロナ禍が酷くなるに応じて偉い会社さんほどリアル対面をしないで会議を進める「ウェブ会議」に移行し、やれZoomだGoogle MeetsだマイクロソフトTeamsだFacebookメッセンジャーだとワイワイやっておりました。高齢者キラーでもあるコロナから逃れてデジタル化を進めたいと思っているのは、会社のお偉いさんがみんな高齢者だからなんでしょうか。使われているソフト、みんな外資系のもんばっかりやがな。

 さらには、家にずっといて寂しい上司や取引先の偉い人が「Zoom飲み会」なるものを企画して、オンラインなのに飲みニケーション促進とかいう意味不明の企業文化まで勃発。頭おかしいと思うんですよね。何で自宅でネットに繋がってるのに、お前の顔を肴に酒を飲まなければならんのだ。

 あのね、Zoom飲み会、悪いけど全然面白くねえんだよ。好きで喋ってる友人とのZoom飲み会も微妙な雰囲気になるのに、なんで気を遣う宴会まで自宅でしなければいけないのでしょうか。独身者ならともかく、妻帯者が妻や子どもを放ってパソコンの前で酒を飲んで上司や取引先と馬鹿話をするの、変な空気になることぐらい分からんのかと。強制参加させられる系のZoom飲み会は残業代を請求しましょう。

印鑑は全廃してくれ

 オンラインで終わらせられる仕事はオンラインでパパッとし上げて終わらせる、というのは実に良い働き方ですし、残業という概念もなく、自宅で設備さえ整っていれば快適に業務がこなせるという点では、デスクワークや創造性を発揮する仕事にはもってこいのビジネス環境になりつつあります。これらをひっくるめて「DX」と言うわけなんですが、でも契約文書を作るために出社したり訪問したりする必要があるのが難点です。いまだに、企業の印鑑証明取ってきて契約書製本して捺印しなきゃいけないんですよ。そのためだけに、ちんたら電車に乗って会社まで行くことが何度あったか。これのどこがDXなのかと悩みます。

 そしたら、行政改革担当大臣という大臣ポストに座った河野太郎さんが突然役所での手続きに必要な印鑑は全廃しますと言い出した。いいぞ、俺たちの河野太郎。以前は「河野太郎は河野談話を撤回しろ」とかいうネタを投げて悪かった。これがなかなか仕事が速く、ちょうど昨年私も文春オンラインで「印鑑全廃してくれ」と書いても安倍ちゃん時代にはちっとも進まなかったものが一気に進んだようでご満悦です。

デジタル全盛のこの時代に印鑑の廃止もできないなら技術革新とか二度と言うなという話
https://bunshun.jp/articles/-/11074

 これからマイナンバーもどしどし使われるようになるみたいですし、運転免許証がマイナンバーの中に入るぞとか、社会保障から納税まで一元管理されるようになれば、こちらも確定申告や年末調整をやるために背中を丸めてちくちくレシートや領収書をまとめる作業などしなくて済む。いやもうDX万歳ですわ。最初ダウンタウンデラックスかと思ったけど。そのまま年金も一緒になって日本年金機構を解散させてほしいと思います。

「ログイン順」とかいう新しい謎マナー

 ところが、DXの世界はバラ色一色というわけでもなく、この前とある偉そうな大企業様のウェブ会議に呼ばれたところ、なぜか「ログイン順」とかいうメールが渡されるわけです。ログイン順? 何それ?

 と思ったら、ウェブ会議で出る顔はログインする順番が早い人ほど先に表示される。当たり前ですね。で、下っ端から順番にウェブ会議にログインすると、順々に席次の高い人を下っ端の人たちが「お迎えする」ことができるというわけです。そして、最後にやってきたのは代表取締役のおじいさん! 「やあやあ、みんなお出ましですか」とのご挨拶が始まるわけでございます。

 いや、外部の人間ですけど「馬鹿なのかな?」と思いましたね。下っ端からログインして偉い人を迎えろとか新しいマナーを作るのは馬鹿のやることです。「話を聞かせろ」というので参席した私のほうが「お前らはどういう理屈でそんな社内マナーになったんですか?」と聞き取り調査をしたいぐらいです。そんなことをやってるから100億単位で記録的な最終赤字を出すんですよ。

「普段ご出社される服装でご参加ください」!?

 さらには、Zoom上では「偉い人は画面上に、大きく表示できる」仕様が入ったのだそうです。その名も「カスタム・ギャラリービュー」機能。この日本の企業文化を馬鹿の方向に振り切らせるかのような陰謀を感じさせる劣悪な設計が実装されてしまったことで、せっかくの最先端な感じのDXが一気に昭和の日本企業に毒された澱む空気を感じさせます。

 さらに、会議が終わると「そのまま繋いでおいてください」というアナウンスと共に、偉い人から順番に画面から消えていき、そして自分も「会議室からBANされる」ことで自動的に会議から退出させられます。なんだ、この酷い社畜モードは。

 他の会社でも「指定された会議の5分前に集まってください。マイクなど音の状態をチェックします」とか「発言の順番はスマホにSNSメッセージで送るので、メッセージが来たらミュートを外して発言してください」などの、何のためのウェブ会議なのか哲学的に悩まざるを得ない謎マナーさえ存在します。

 極めつけは、会議事務局から送られてくる「ウェブ会議ではございますが、普段ご出社される服装でご参加ください」の但し書き。もうね、この時点で上半身はスーツで下半身はトランクスですよね。お前らのために靴下一足はいてやるもんか。なんとなれば、ミュートしている間は資料を読んでるふりしてTwitterやってやるぐらいの勢いです。バレるとダルいからやらないけど。そのぐらい、ウェブ会議のお作法の世界はイラつくわけです。

新たな礼儀が違和感のある失礼を生み出す

 たぶん、Zoomもその他のサービスも日本企業の20人以上参加する会議はザラという文化を知らないで設計していると思うんですよね。ヒントでピントの16分割とかアタック25の25分割のような誰が誰に喋っているのかまったく分からない会議が立ち上がるたび、DXだウェブ会議導入だという以前に「必要な人だけ会議に参加する」という大事な改革事項を日本企業は弁えたほうがいいと思うんですよ。

 ジャーナリストの新田龍さんがこの手の新たなクソマナーを「失礼クリエイター」と呼び、新たな礼儀が違和感を生み出すたびに「そうじゃねえだろ」という気持ちでいっぱいになります。

 ウェブ会議も組織目線で「目上の人たちに失礼のないように」手配した結果が、どうしようもないお作法をデジタルに導入してしまい非効率が生まれていることを知らないのでしょうか。

 菅義偉政権におかれましては、ハンコをなくしたあと日本型の変な上司への気の遣い方を改める方向で改革していっていただきたいと思います。

(山本 一郎)

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