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「ハンバーガー1個1060円」シェイクシャックが強気の50円値上げに踏み切れるワケ

米国発の人気ハンバーガー店「シェイクシャック」が、11月4日からメイン商品などを50円値上げした。1個1010円だったシャックバーガー(ダブル)は1060円になる。米国では伸び悩みも指摘されているが、なぜコロナ禍でも強気を崩さないのか。経済アナリストの馬渕磨理子氏は「日本では店舗数を絞ったことが奏功している」と分析する——。

品質の高さがウリの高級ハンバーガー店

11月3日(祝)昼の12:05——。シェイクシャックの外苑いちょう並木店に一人ランチに訪問しました。明日11月4日(水)からメイン商品であるハンバーガーを50円値上げするとのことで、値上げ前にもう一度、大好きなシェイクシャックのバーガーを食べておきたいとの思いで訪れました。

SHAKE SHACK 外苑いちょう並木店
筆者撮影

シェイクシャックと言えば、15年にアメリカから上陸し日本に進出したニューヨーク発の高級ハンバーガー店です。15年に明治神宮外苑のイチョウ並木に1号店を構えたシェイクシャックは、抗生物質や成長ホルモンを使用しない100%アメリカ産のアンガスビーフや、トランス脂肪酸を排除したフライドポテトなど品質の高さをウリにしています。

外苑前に1号店ができた当初は連日長蛇の列ができ、平日でも昼時は1時間以上待つ状態が続いていました。現在は東京に7店のほか、神奈川に1店、静岡県に1店、京都に1店、大阪府に2店を展開、国内で12店舗にまで拡大しています。そんな、シェイクシャックが今回、50円の値上げに踏み切った背景には何があるのでしょうか。

伸び悩む米シェイクシャック、一方で日本では…

Forbesは、四半期でみれば既存店売上高が減少していることや、近隣に既存店のある新店が多くなっていることから、3月3日に「拡大戦略を続ける米シェイクシャックに警鐘? 既存店が伸び悩み」という記事を出しています。このため日本のシェイクシャックも一時期のブームが過ぎて客離れが進んでいるのではないか。そう感じて、外苑いちょう並木店と六本木店にランチタイムにそれぞれ訪れてみました。しかし結果は、どちらもほぼ満席状態でした。

SHAKE SHACK 外苑いちょう並木店
筆者撮影

特に、フラッグショップである外苑いちょう並木店は、家族連れ、カップル、友人同士、シニアなど幅広い層の客層でにぎわっていました。

私はテラス席に座ったのですが、隣席の女性2人組は「ここは本当に最高だね! 本当に気持ちいい」と言いながら、新商品のマンダリンシソレモネードを片手にインスタグラム用の写真を取っていました。

向い側には、おそらく60代であろうシニア層の女性2人組がベレー帽を被り、オシャレな秋の装いでシェイクシャックのバーガーを食していました。斜め横には、家族連れのファミリーが子供を囲んで期間限定の新商品旬のきのことビーフのうま味が詰まった「オータムマイタケバーガー」とフライポテトをほうばっていました。

外苑いちょう並木店は一つひとつのテーブルが大きく、テラス席が充実していることから、安心して過ごせるレイアウトとなっており、ファミリー層の多さが印象に残りました。そのにぎわいは、コロナ禍であることを一瞬忘れてしまうほどです。街角調査では客離れを感じることはありませんでした。

SHAKE SHACK 外苑いちょう並木店
筆者撮影

日本と米国では店舗展開戦略に違いがある

米シェイクシャックには1つの懸念点があります。先述のForbesの記事では、店舗を増やしすぎた可能性に言及しています。「シェイクシャックの店舗がすでに米国の主要都市すべてに少なくとも1店舗はある」としたうえで、「郊外の多くや、有名大学周辺の地区には複数開業」していることで、“どこにでもある店”になってしまっているというのです。

一方、日本はどうでしょう。2015年に上陸してから、いまだ、12店舗の展開にとどまっています。これは、シェイクシャックのような“高級”ファストフードのブランド展開をしていく上では、店舗の数を増やし過ぎないのも戦略だと言えます。

客離れの影響が少ないのはサザビーリーグの存在が大きい

シェイクシャックが日本への出店に当たってはサザビーリーグと提携しています。コロナ禍でも店舗に訪れる人が絶えない人気ぶりは、数々のブランドを発掘・育成しては日本に新たな「ライフスタイル」を定着させてきたサザビーリーグの存在が大きいと考えます。

日本経済新聞は2015年7月12日の記事「サザビー流、『半歩先』ライフスタイル次々創造」で、サザビーリーグと言えば、スターバックスやロンハーマンなどを日本に持って来たことで有名な企業だと伝えています。サザビーリーグは生活者を飽きさせない、半歩先をいく独特な経営戦略で一目置かれている企業といいます。

10月22日、サザビーリーグは「シェイクシャック」の値上げを発表しました。11月4日からシャックバーガー(シングル)は本体710円を760円、同(ダブル)は1010円を1060円、ハンバーガー(シングル)610円を660円、同(ダブル)910円を960円に、それぞれ50円値上げします。値上げの理由についてプレスリリースには「昨今の原材料費や人件費の高騰を受けて、商品とサービスの品質維持・向上するため」と書かれていました。

新型コロナの影響を受けて飲食店はどこも厳しい状況が続いています。しかし、サザビーリーグと組んでいる日本のシェイクシャックは、コロナ以前から顧客を楽しませる美味しい食事、居心地の良い空間・店づくりの工夫を凝らしてきたことや、コロナ禍でテイクアウト・デリバリーにも対応していることで、比較的、客離れの影響は少ないといえるでしょう。実際に、隣の席の女性に「50円値上げ」について聞いてみたところ、「値上げのことは知らなかったけど、シェイクシャックは空間が素敵で美味しいので、値上げしてもまた来たいお店」だと語っていました。

ShackBurger
筆者撮影

独自路線でコアファンを獲得した日本シェイクシャック

シェイクシャックは高品質・健康志向を打ち出しています。同じハンバーガーチェーンのマクドナルドやモスバーガーも高品質・健康志向の路線を打ち出していることから、競争は激化しているようにも思えます。

ですが、シェイクシャックの特別感は一線を画していると感じます。それを可能にしているのは、店舗数の少なさです。競合は拡大ありきで、次々と新店舗をオープンさせる一方、伸びない既存店はどんどん閉店させるという典型的なチェーン展開を図っています。日本のシェイクシャックは、それらとは全く違うルールで勝負しているように見受けられます。

拡大路線を取りつづければ、自社店舗同士が客を取り合うようになり、従業員不足からオペレーションは粗雑になり、結果的にブランド棄損を招く恐れがあります。その戦いのフィールドにあえて立たずに、独自で作り上げたフィールド、独自に生み出す新たな「ライフスタイル」で戦うのが日本のシェイクシャックであり、サザビーリーグの得意技です。

日本における店舗数は少ないものの、祝日のお昼時、シェイクシャックのライフスタイルを好むファンで店舗はにぎわっていました。この強さは値上げ後も続くのではないかと見ています。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
経済アナリスト
認定テクニカルアナリスト。京都大学公共政策大学院を修了後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。
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(経済アナリスト 馬渕 磨理子)

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