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怨念と報復の連鎖

  僅差の判定にもつれこんだ注目のボクシングのタイトルマッチ戦。激闘を終えたチャンピオンも挑戦者も、拳を突き上げ自らの勝利をジャッジにアピールしている。セコンド陣も双方ともに勝利を確信している様子。観客は固唾をのんで採点結果を待っている。

  そんなシーンを彷彿とさせるような米国大統領選となりました。

  「人民の、人民による、人民のための政治」。この第16代米国大統領エイブラハム・リンカーンの名言を誰もが知っているように、米国の民主政治はわが国を含め各国の手本とされてきました。しかし、今回の大統領選を通じて、米国の民主主義が大きく揺らいでいることが明らかになりました。

  リンカーンのゲティスバーグにおける演説は南北戦争による国家分裂の危機の時でしたが、今の米国の分断も極めて深刻です。投票結果の最終確定にはまだ時間を要しそうですので、現時点でこれ以上論ずることは控えます。

  韓国にいたっては、分断を超え怨念と報復の政治が続いています。私の総理在任中のカウンターパートだった李明博(イ・ミョンバク)元大統領が、収賄などの罪で懲役17年の実刑が確定しました。11月2日に収監され、拘置所の独房に入っているそうです。

  韓国では大統領経験者の全斗煥(チョン・ドファン)、盧泰愚(ノ・テウ)が内乱や収賄などの罪で実刑判決を受けたことがあります。当時の金泳三(キム・ヨンサム)政権による旧政権の断罪でした。そのような政治報復をやめようとしたのが李明博でした。

  私は、2008年2月の李大統領就任式に出席しています。歴代大統領経験者を全て招待し、過去を断罪するのではなく未来志向を強調する姿勢に共鳴した記憶があります。しかし、その李明博政権下で検察に不正を追い詰められた前任の廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は自殺しました。

  廬武鉉の流れをくむ現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領となり、今度は李明博が収監されることになりました。文政権下では朴槿恵(パク・クネ)前大統領も公選法違反で実刑が確定しています。

  政権が交代するたびに前政権が厳しく断罪され、往時のリーダーが罪に問われる国。報復が執拗に繰り返される国。その最悪の結果は、歴史の分断です。日韓基本条約なんて朴正煕(パク・チョンヒ)政権が結んだものであり、もはや無効だと勝手に解釈されたのではたまったものではありません。

  韓国歴代大統領の悲しい末路を巡っていると、日本の元総理で良かったとしみじみ思います。

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